c-1_祈り-2
彼の心中を知ってか知らでか、その植物はどんどんと成長を続けた。
今や庭の地面の三分の一を覆うほどまで成長を遂げたそれの成長の速さに、初めは薄寒いものを感じたものだが、何度もむしってる捨てるを繰り返していくうちに無駄だと悟った。
根本から断たない限りは延々と成長を続けるに違いない。植物とはきっと、みんなそういうものなのだろう。
ほったらかしにしてからはもう為すがまま、今では地面だけでは飽き足らず、家の外壁にまでその体躯を拡げている。
その赤みを帯びた細い茎は遠くから見ると細く広がった血管のように見えた。まるで、地面や家の壁がその存在の肉であるかのように思わせるほど、それは真に迫っている。
とは言え、彼もそれにいつまでも注意を割いていられるだけの余裕があった訳ではない。
母の調子がよければ、幾分かはマシだが、今となっては調子が良いことの方が珍しい母の看病をしていない日を数えることの方がよっぽど楽だった。
その植物に意識を払うのは一区切りが付いて休憩のために家を出た時だ。
そして彼はその度に自分の今後について思いを巡らせるのだ。
明日こそは何かが変わりますように。
それは何度目の祈りかは分からない。それくらい毎日のように願っている。
そんな生活がどのくらい続いたのだろうか。
数えるのも億劫になるほどの月日が過ぎたのかもしれないし、案外にも日にちは過ぎていないのかもしれない。
とにかく、そんな生活に変化が起こったのは確かだった。




