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第12話「乗っ取られた国」

 リリウミアの騎士による殺害事件が発生し、グン王国には警戒体制が敷かれた。


 私はと言うと、街の周辺地域のパトロールをする事になった。


 パトロールは2匹のゴブリンを引き連れて、午前の9時から午後の3時まで行う。


 パトロール中は歩きっぱなしになるのかと思いきや、サボり癖の酷いゴブリン達に合わせ、ほとんどの時間を休憩に当てていた。


 休憩中、私はガンから貰ったお酒をちびちびと口にしていた。


 初めて飲んだ時は、ただ不味いだけの液体と思ったお酒だが……飲酒後の不思議な高揚感が癖になり、今では愛飲するに至る。


 ガンを経由して、追加の酒瓶を5本ほど購入した程だ。


 飲み過ぎて、顔を赤くした状態でヒイラギの元までパトロールの報告をしに行ったら、ヒイラギに驚いた顔をされて、「仕事に支障をきたさない程度に酒は飲め」との叱責を受けた。


 パトロールを始めて、その後、何も起こらず4日間が過ぎる。


 毎度の如く、ヒイラギの元までパトロールの報告をしに行ったその日、大使館の執務室では、ヒイラギと王宮官吏のペイハイが話し合いをしていた。


 私の入室に気が付いたヒイラギとペイハイ。


「シロメか、丁度良かった」


 と、何やら深刻そうなヒイラギの表情。


 私が「何かあったんですか?」と尋ねると、


「近隣諸国の一つがリリウミアの騎士に乗っ取られたそうだ」


「……乗っ取られた?」


「ああ、ミン王国____グン王国よりずっと小さいゴブリンの国なのだが、ここが漂着したリリウミアの騎士達の手に落ちてしまった。つい、昨日の事らしい」


 私はヒイラギからペイハイに視線を移す。


「本当なんですか?」


「ああ、信じられない事だが」


 と、肯定するペイハイ。


 それでも、私は納得出来ずに、


「いや、でも……リリウミアの騎士達に乗っ取られたって……彼女達、そんなに人数もいない筈ですし……占領を維持するのは困難なんじゃないですか?」


 騎士達が一時的に王国を占領出来たのだとしても、無勢である以上、その状態を維持するのは不可能だ。


 例えば、騎士達が寝静まるのを待ち、大勢のゴブリン達で奇襲を掛ければ、一網打尽になる筈。


 ペイハイは頷き、


「確かに、騎士達の人数は多く見積もっても20人……いや、ともすれば15人にも満たないのかも知れない。その他に非戦闘員らしき者達が30人ほどいるが。どちらにしろ、奴らの数は50にも満たない」


 しかし、とペイハイは続ける。


「奴ら、街のど真ん中で魔族除けの結界を____移動結界アポロンを展開させた。その所為で、魔族達は、奇襲はおろか街の中に入る事すら出来ない」


 移動結界アポロン、か。


 恐らく、貿易船に積んであった装置を運良く回収して運んだのだろう。


「最悪な事に、ミン王国は物資の集積地。あそこには多くの魔核が蓄えられていて、結界を維持するための動力源が尽きるのは相当先の話になる。食糧に関しても、ずっと先まで困る事はないだろう」


 苦々しい口調でペイハイが語る。


 ヒイラギは「ああ」と頷き、


「無論、騎士達が占領を永遠に維持するのは不可能だろう。いつかは物資が尽き、その時が奴らにとっての年貢の納め時。しかし、ミン王国はクロガネ王国にとって地理的に最重要な属国。あそこを長期間押さえられるのは、我々にとって大きな痛手だ」


 ヒイラギも深刻そうに語る。


「特に今の時期は……”地下水道”の勢力図が乱れつつある今の時期に、この災難は歓迎出来ない。どうにか、早急にこの一件に対処しなければならない」


 と、ヒイラギとペイハイの視線が私に向き、


「今すぐにでも、ミン王国を騎士達から解放したい。しかし、魔族では結界の中に入る事すら出来ない。……つまり、何が言いたいか分かるか、シロメ?」


 尋ねるヒイラギ。


 私は「勿論です」と頷き、


「私にミン王国を解放して欲しいんですね」


 私ならば、魔族除けの結界の中でも活動をする事が可能だ。


 つまり、占領地に乗り込んで、ミン王国を解放する事が出来る。


「話が早くて助かるな、シロメ」


 ヒイラギは腰元の鞘に手を触れ、


「本当なら、俺も出向きたい所なのだが……生憎と俺は2日ほど前から”獣の日”で、ひとたび戦闘に入れば、獣化が発動して、手が付けられなくなってしまう」


 申し訳なさそうにヒイラギは言う。


 ”獣の日”とは獣人に定期的に訪れる期間で、この期間中に興奮状態に陥ると、獣化と言う現象が獣人の身に起こる。


 獣化により獣人は狂暴な獣となり、人によっては完全に理性を失ったりするらしい。


 ペイハイは懐かしそうに、


「ヒイラギの獣化はかなり(たち)が悪いからな。以前、狂暴な獣となったヒイラギに、俺を含め複数のオーガ達が重傷を負わされ、生死の淵をさまよったものだ。幸い死者は出なかったが」


「あの時は本当にすまなかった。あれ以来、”獣の日”が訪れたら、俺は室内で極力安静にするようにしている」


 ヒイラギは咳払いをして、


「話が逸れたな。さて、シロメ、お前にはミン王国解放のためにすぐに動いて貰いたい。今から睡眠を午後11時まで取り、その後、ミン王国に乗り込み、夜襲を仕掛けて貰う。現場までの案内、及び指示は____」


 ヒイラギがペイハイの肩を叩く、


「この男に任せる」


「よろしく頼むぞ、シロメ」


 不敵に笑うペイハイ。


 差し出されたペイハイの手を私はそっと握った。

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