第6話「仲間になる」
私はリリウミアで生まれ、平穏に暮らしていた____
半魔である事を隠して、ちょっとした罪悪感を抱きながらも、幸せな生活を12年間以上、送っていた。
だけど、ある日、私の秘密が暴かれて、母親と共に監獄に囚われてしまった。
監獄での日々は地獄のようだった。
私と母親は脱獄を企て____罠に掛かってしまった。
残虐非道なアンリエットに母親は無惨に命を奪われてしまった。
私は辛うじて逃げ出し、2人の親友ロッドとメリエの力を借りて、リリウミアからの脱出を計画した。
私達3人は強かった。
迫り来る困難を退け、戦いを勝ち抜いていった。
そして、”地下水道”を利用して、国外へと抜け出す事には成功したけど……。
私達の行動を見抜いていたカーラにロッドとメリエを殺されてしまった。
怒りと憎しみのままに、私はカーラと戦った。
戦いは私の勝利に終わった。
だけど、カーラにとどめを刺す直前____
私とカーラを乗せた船は沈没し、流れ着いた先がここだった。
〇
話を終え、私はふうと一息ついた。
静かに私の話を聞いていたヒイラギとダンが目配せをし合って、
「確か、カーラってのは、あの女の事だよな。成る程、親友の敵って訳か」
「執着するのも納得だな」
ダンがじっと私を見つめて、
「それにしても、ハーフサキュバス、か。大結界アマテラスの中でも問題なく活動する事が出来たり、それと……サキュバスとは思えない戦闘能力だったな」
「混血種と言うのは、純血種に比べ、優秀な個体が生まれやすいとされているが、シロメの強さは破格だった」
「子孫を一人も作っていない状態であの強さなんだから、今後の伸びしろも相当のもんだぜ」
ヒイラギは同意するように頷き、
「シロメの強さなら、この世界で十分に生きていける」
断言するヒイラギは、私に問いかけるような視線を送り、
「お前の事情は分かった。では次に、お前の願望を今一度聞きたい」
「……私の願望?」
「お前がこれからどうするかだ。無論、カーラに関しては片を付けるのだろうが、その後の事だ」
ダンがヒイラギを遮って、
「早い話が、俺達の仲間になるのか、ならないのかって話だな」
私は二人を見遣り、逆に問い返す。
「貴方達の仲間になったら、私はどうなりますか?」
魔族の仲間になる。
魔族の国の民となる。
それがどのような事なのか、具体的な想像が出来ない。
ヒイラギは腕を組んで、
「ずっと先の処遇については、詳しく話せない。と言うのも、もし、お前が俺達の仲間に加わるのであれば、この一件を上に報告し、改めてお前の立場を決めなければならないからだ」
「……”上”って?」
「クロガネ王国、もっと言えば、ヘイロン王にお前の事を話さなければならない」
「俺様は属国の魔王に過ぎねえからな。お嬢さんみたいなのを迎えるとなると、宗主国の王様に色々と話を通さねえといけねえんだ」
ヒイラギの補足をするダン。
「お嬢さんの最終的な処遇を決めるのはヘイロン王になるって訳だ。重要なポストを得るのか、小間使いにされるのか。クロガネ王国に所属する事になるのか、グン王国に所属する事になるのか。それは俺の与り知る所じゃねえ」
ダンは「ただ」と付け加えて、
「しばらくの間は、俺の下で働いて貰う事になるだろうな」
私は少しだけ考え込んで、
「仲間になれば……カーラを引き渡してくれますか」
目下、重要な案件を尋ねる。
ダンは「へへっ」とにやけ面を浮かべ、
「アレは既に俺達、グン王国の所有物だ。ただではくれてやらんよ」
「な……!」
思わず身を乗り出し、抗議しようとする私を、ヒイラギが視線で制する。
ダンは懐から金貨を取り出し、それを指ではじいて、私に寄越した。
「魔族の世界にもお金は存在する。アレはお前が金を稼いで、買い取るしかない」
金貨を辛うじて捉えた私は、金色に鈍く光るその円と、ダンの顔を交互に見遣った。
「そして、金を稼ぐためには俺達の仲間になって、働いて貰うしかない」
……結局、そこに話をまとめてくるのか。
ダンの瞳が「さあ、どうする?」と問いかけている。
私は悟るように、溜息を吐いた。
どの道、選択肢はこれしかないようだ。
先の事はまだ分からないが……今は、カーラの事でケリを付けなければいけない。
ならば____
「分かりました、貴方達の仲間になります」
そうはっきりと答える。
私の返答にダンが「そう来なくっちゃ」と満足げに笑みを浮かべる。
「その金貨は、祝い金だ」
ダンが私の抱える金貨を指差す。
「お前さんを歓迎するぜ、シロメ」




