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第1話「魔族の世界の入口」

 “地下水道”の薄闇を私は口をつぐんで歩いていた。


 同伴する多数のゴブリン達。


 下卑た掠れ声がその口から聞こえてくる。


 彼らは私が使用しているものと同じ言語で話しているようなのだが、声が汚過ぎて何を言っているのか、いまいち上手く聞き取れなかった。


「……これがゴブリン、か」


 小さく呟く私。


 初めて出会うその存在をまじまじと観察する。


 ……お世辞にも美しいとは言えない容姿。


 そう感じるのは、私がヒト族的な美的感覚を有しているからなのだろうか。


 私の視線は、ゴブリンの群れの中の3点を主に行き来していた。


 その内の1点が、ダン____グン王国の国王、即ち魔王を名乗るゴブリン。


 ……どうにも胡散臭い存在だ。


 魔王を自称しているようだが、果たしてそれは冗談なのか、それとも真実なのか判別が付かない。


 別の1点、私の視線が向く先には、ヒイラギと言う名の獣人がいた。


 ゴブリンの中に混ざり、彼らと行動を共にしている男。


 先程、手合わせしたが、かなりの実力者だった。


 顔立ちがきりっとしている所為か、理知的な人物と言った印象を受ける。


 ヒイラギは何故、ヒト族でありながらこのような場所にいるのだろうか?


 彼の事情が気になる所だが……それよりも、もう1点____私の視線と意識を最も引き付けていたのが、カーラの存在だった。


 ほぼ裸の状態で拘束され、ゴブリン達に連行されている仇敵の姿。


 立って歩いてはいるが、顔からは生気が失われている。


 私が睨むようにカーラの姿を見つめていると、


「安心しろ。毒で一時的に意識が朦朧としているが、命にかかわる事は無い。しばらくすれば、自我も回復する」


 そう言葉を寄越して来るヒイラギ。


 私は何か返事をしようとしたが、結局無視して、前に進む事に専念した。


 私が、いや、私達が向かう先____そこには王国があるらしい。


 ダン達との一悶着があった後、私は彼らの王国への招待を受けた。


 そこで諸々の話し合いをしようとの事だ。


 私は彼らの提案に大人しく従う事にした。


 魔族の王国……どのような場所だろうか。


 ”地下水道”は広大だが、本当にこんな地底に王国が存在するのか?


 ……騙されていたりはしないだろうか。


 もしかしたら、これは何かの罠なのかも知れない。


 警戒する私は、知らずの内に腰元のダガーへと手を伸ばしていた。


 油断なく薄闇を歩いていると、不意に、多数の光が視界に飛び込んで来た。


「……!」


 思わず息を飲む。


「着いたぞ、お嬢さん」


 ダンが目の前を指差す。


 その先、遥か高い岩肌の天井の下に、街が広がっていた。


「グン王国____俺の王国にようこそだぜ」


 そこに、確かに王国が存在した。


 建物が立ち並び、その間を道路が走っている。


 点在する街灯が営みの光を与えていた。


 遠方には象徴的な高い塔が確認出来る。


 そして、街中を往来しているのは、多くのゴブリン達だった。


 街が息をしている。


「……本当にこんな場所に」


 と、驚嘆の呟きを漏らす私に、


「おい、ぼうっとしてないで早く行くぞ」


 ダンが急かすように手招きをする。


 ごくりと生唾を飲み込む私。


 魔族の世界。


 新しい世界の入口がそこにあった。


「……よし」


 少しの躊躇いの後、覚悟の一歩を踏み出す。


 この先、何が私を待ち受けているのだろうか?


 何が待ち受けていようが、真っ直ぐと進むまでだ。

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