第24話「メリエの登場」
聖星騎士団の制服を身に纏ったメリエが騎士達に襲い掛かっている。
……何故……メリエがここに?
呆然と立ち尽くす私に____
「ええい! とにかく、今がチャンスだ! シロメ、行くぞ!」
「え、う、うん……!」
叫び、躍り出るロッド。
私もそれに続く。
メリエのおかげで、騎士達は混乱状態に陥っている。
この好機を逃す手はない。
騎士達の集団に突っ込む私とロッド。手当たり次第に騎士達に襲い掛かり、次々と昏倒させていく。
私とロッドが割り込んだことで、騎士達はさらなるパニック状態に陥っていった。
怒声と悲鳴が大部屋を埋め尽くす。
そして、気が付く頃には、聖日騎士団の騎士を3人残し、騎士達は壊滅に追い込まれていた。
大部屋は静寂を取り戻し、私、ロッド、メリエの3人が3人の騎士と睨み合う構図になる。
「……つーか、よお……お前……なんで、ここに居んだよ」
肩で息をしながら、ロッドがメリエに尋ねる。
メリエはロッドの方には向き直らず、騎士達を睨んだまま、
「……私も覚悟を決めて来たって訳よ」
「覚悟って……おいおい……良いのかよ、お前……これでお前もお尋ね者だぜ?」
「それはアンタだって同じでしょうが」
メリエは一瞬だけロッドに睨みを利かせた。
ロッドは溜息を吐いて、
「お前は俺と違って失うもんがあるだろうが。ダンジョンに追放される俺と違って。リリウミアでの暮らしがよお」
「そんなもの____」
メリエは剣を構え直し、
「親友を失う方が辛いわよ!」
そう吐き捨て、メリエが騎士の1人に突っ込んでいく。
メリエの剣と騎士の剣がぶつかり合い、火花が散った。
「ちっ、このじゃじゃ馬が! 格好つけやがって!」
メリエに続き、ロッドも飛び出す。
私も地を蹴って、騎士に襲い掛かった。
一対一の対決が、同時に3か所で繰り広げられる事になる。
聖星騎士団の騎士達は全滅した。
聖日騎士団の騎士達も2人倒した。
しかし、その戦果は敵の混乱と乱戦を利用したものに過ぎない。
今、騎士達はその本来の実力を取り戻している。
先程まで多人数相手に奮闘していた私達は、それぞれが防戦を強いられる事になった。
「……うっ!」
腕を騎士の剣が掠め、私はうめき声を漏らす。
視界に自身の鮮血が舞った。
さすがは、聖日騎士団。こちらの動きに的確に対処してくる。
先の乱戦で2人の聖日騎士団の騎士を仕留められたのは、ひとえに彼女達の不意を突けたからに過ぎないのだろう。
そもそも、聖日騎士団は仲間同士で連携して戦うよりも、一人で大勢の敵を相手にする戦闘を得意としていると聞く。
つまりは、彼女達にとって、先程よりも今の方が有利な状況なのだ。
ちらりとロッドとメリエの様子を窺うと、2人とも私と同じような状況だった。
苦し気な様子で、騎士達に応戦している。
今更だが、これでも私達はよくやっている方だ。
相手は毎日訓練を欠かさない戦闘のプロフェッショナルなのだ。
本来であれば、ほぼ素人同然の私達が真正面からぶつかって敵う相手ではない。
だが____
「____雷光よ、迸れ!」
騎士と距離を取り、私は【紫電】を放つ。
騎士はこちらの突き出した手の平から攻撃を予測していたのか、ひらりと【紫電】をかわしたが、
「ぐあっ!?」
私の放った紫色の雷光は、ロッドと対峙していた騎士に直撃する。
【紫電】を食らった騎士は、それでも倒れなかったが、受けた不意打ちが大きな隙となり、ロッドに昏倒の一撃を貰ってしまう。
「やった!」
思惑通りの展開に私は歓喜の声を発する。
……そう、私は目の前の騎士に【紫電】を放つ振りをして、ロッドと戦っていた騎士を狙ったのだ。
相手は戦いの玄人だ。
で、あれば、真正面から戦うよりも、搦め手が効果的だろう。
「爆炎よ!」
目の前の騎士を倒したロッドが、すぐさまこちらに向き直り、手の平を向けてくる。
そして、爆発が起きた。
「くっ!?」
ロッドが【爆炎】のスキルを使ったのだ。
爆風は騎士のみならず私をも巻き込んだが____それで良い。
私と騎士の身体が絡まって揉みくちゃになり、一緒に地面を転がる。
今、私と騎士の身体は密着状態にあった。
私の手が騎士の首筋を掴み____
「うひゃあ!?」
私は”吸精”の能力を発動させる。
騎士の間抜けな声が上がり、その生命力が私の身体へと流れ込む。
程なくして、騎士は気を失った。
一息ついて、立ち上がる私。
……メリエはどうなった?
援護に入ろうとメリエの姿を探す私だが____
「……ふう……何とか、なったみたいね」
随分と苦戦していたようだが、メリエは既に騎士との一対一の対決に勝利していたようだ。
「……結構、苦戦しちゃったわね……もう少し私に体力があったら、楽勝だったんだけど」
不敵な独り言を漏らすメリエ。
私は【スキル鑑定】のスキルを発動させて、そんなメリエを見つめてみる。
すると____
◇
____対象者のスキル所有情報____
____【剣術(137)】____
◇
私は視界に映し出された文字列に驚く。
ロッドは、メリエには高レベルの【剣術】のスキルがあると言っていたが____まさに、桁違いの数字がそこに表示されていた。
……100オーバーのレベルとは。
比較対象をあまり知らない私でも、その凄さは一瞬で理解出来る。
聖日騎士団の騎士を相手に剣で勝てたのも頷けるというものだ。
「ナイスアシストだったぜ、シロメ」
静まり返った大部屋で、ロッドが私に親指を突き立てる。
「まあ、でも、【怪力】のスキルを温存しないで戦っていたら、俺は余裕で勝てたけどな」
メリエに続き、ロッドまでも不敵な言葉を吐く。
「……よく倒せたね、私達で」
と、気絶し、倒れた騎士達を一望する私。
かなりの壮観だ。
この景色を作り出した自分達が誇らしくすらあった。
私が感慨にふけっていると、メリエが騎士の一人に近付き、あろうことかその衣服を脱がし始めた。
ロッドがぎょっとして、
「おいおい、何やってるんだよ、メリエ」
「ちょっと、何マジマジと見てんのよ、変態ロッド」
「いや、変態はお前だろうが!」
裸同然にさせられた騎士とメリエを交互に見遣るロッド。
メリエはそんなロッドにじっとりとした視線を向け、騎士から奪い取った制服を____
「はい、シロメ」
「え、あ」
メリエから騎士の制服を投げ寄越される私。
「囚人服のままだと目を付けられるでしょ? それに着替えたら?」
「……う、うん……そっか……そうだよね」
私は頷き、囚人服から騎士の制服に着替えようとする。
すると、
「こら、ロッド! アンタ、シロメの着替え見てんじゃないわよ! この変態!」
「は、はあ!? 見てねえし! つーか、シロメは男なんだから、別に____」
「アンタ、そう言う所、本当にデリカシーが無いわね! 変態ロッド!」
「お前! 俺の事を変態呼ばわりするんじゃねえ!」
何やら、ロッドとメリエが言い争いを始めたようだ。
二人が騒いでいる内に着替え終える私。
「あ、着替え終わったわね、シロメ」
ロッドと軽い喧嘩をしていたメリエが、着替え終わった私に気が付く。
「色々と話さないといけない事はあるけど」
メリエが急かすように私の腕を引く。
「ひとまず、この場所を離れるわよ」
メリエの提案に私もロッドも黙って頷いた。
話したい事は山ほどある。
しかし、応援の騎士達が到着する前に、倒した騎士達が目を覚ます前に、なるべく遠くに逃げなければ。




