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第29話「”剣聖”の再来」

 その後、反乱軍は騎士達を駆逐し、呆気なくダンジョンを手中に収める事に成功した。


 マルールはリリウミア騎士団ダンジョン支部の建物に反乱軍の本部を据え、ダンジョン内の統率を図ろうとする。


 反乱勃発から数日が経過し、マルールの手腕とカリスマ性により、冒険者達の混乱は鎮まりつつあった。


 しかし、ダンジョンが落ち着きを取り戻す前にリリウミアは動き出す。


 騎士団の逆襲が始まり、ダンジョンは再びの闘争の場と化した。


 ダンジョンに残留していた私も反乱軍の一員として騎士達と共に戦う。


 騎士達の軍勢は手強かったが、私達は善戦し、これを撃退する事に成功。


 勝因としては、こちらに地の利がある事が挙げられるが、それよりも確保した数人の捕虜達を盾にした事により、騎士達の遠距離魔法攻撃や大砲などの使用を封じられた事が大きいだろう。


 ただ、勝利の歓喜に浸る余裕は冒険者達にはない。


 何故なら、リリウミアは撃退されても次々と騎士達を送り込んで来たからだ。


 第一波を退けた反乱軍は、第二波も何とかやり過ごし、第三波ではボロボロになりつつも辛勝。


 そして、最早壊滅寸前となった反乱軍は、来る第四波に向け死に体の態勢を整えつつあり……組織内は非常にピリピリとしていた。


「おい、お嬢様。ローズ連邦共和国からの支援はどうなってんだよ」


 次の戦闘に備える中、マルールが厳しい口調で尋ねて来る。


「言っておくが、このままだと俺達は負ける。それは初めから分かっていた事だ。だから、俺達はローズ側が先に動くまで待っていたんだ。だが、それをお前が勝手におっぱじめやがった。おいコラ、そこんとこ分かってんのかよ? ……責任取って、早え所ローズから支援引っ張ってこい!」


 怒鳴るマルール。


 彼の怒りももっともだ。


 戦端を開いた身としては、責任を感じるし、どうにかしたいとも思う。


「援軍は……もうすぐ来るはずです。それまで耐えましょう」


 そんな中身のない慰めしか口に出来ないのが情けない。


 ……本当に、早くしてくれ。


 一体何をもたもたしているんだ。


 恐らく、第四波で反乱軍はもたない。


「……不味いな」


 と、独り呟く。


 このままだとダンジョンの利権を失う事になるぞ、ローズ連邦共和国。


 私も段々と苛々してきた。


 さて、やがて第四波目が訪れ、騎士団の猛攻により反乱軍は壊滅____とはならなかった。


 ギリギリのタイミングでローズ連邦共和国からの派兵があり、リリウミアとローズ連邦共和国間で戦闘が発生。


 反乱軍は分断された騎士団の勢力を撃退し、第四波を凌いだ。


「たくよお! ようやく来やがったか、ローズの馬鹿共は!!」


 怒りと歓喜の混じったマルールの声が響く。


 私も彼と同じ気持ちだった。


 正直、間に合わないかと思ったのだが……これで一安心だ。


 ただ、ヴォルコフ卿には文句を言わなければならない。


 もう少し早く支援を寄越して欲しかった。心臓に悪い。


「ともあれ、約束通り来ましたね、ローズ連邦共和国からの支援」


 後は彼らに主戦場を任せれば良い。


 戦いはまだ続くが、反乱軍の間には既に戦勝ムードが漂っていた。


 マルールも私も、肩の荷が下りた心地でいる。


 しかし、そう簡単に戦いの幕は引かないもので____


「おい! ヤバい奴が来てるぞ!!」


 リリウミアとローズ連邦共和国間の戦闘が激化しつつある中、それは晴天の霹靂の如く現れた。


 すっかり気の抜けていた私達の元に、一つの急報が届く。


「前線が崩壊した! 敵がここまで侵出してくる!」


「……何だと!? 敵の規模は?」


「そ、それが……」


 伝令係の冒険者は一瞬言い淀み、


「一人……たった一人の騎士に前線部隊が全滅させられた!」


 その報告に驚いた私とマルールは、すぐさま現場に急行する事に。


 それなりに腕の立つ冒険者達を単騎で退けるなど、尋常な事ではない。


 息を切らしながら、前線に到着した私達。


 そこで目にしたのは____


「ん? あ、やっと、見つけた!」


 大剣を手にした小さな騎士が、血にまみれた笑顔をこちらに向ける。


 周囲には斬撃を受け絶命した冒険者達の死体が転がっていた。


 凄惨たる光景だ。


 私は目を見開き、


「お前……アニェス!」


 惨殺の中心にいる騎士の名を口にする。


 忘れなどしない。


 アニェス____以前対峙した恐るべきピクシーの騎士。


 母親クロバと同じ”剣聖”の称号を持つ者。


「おい、知り合いか、お嬢様」


 マルールが尋ねて来たので、私は唾を飲み込み、


「聖日騎士団所属騎士、”剣聖”のアニェスです」


「な!? け、”剣聖”だと!?」


 マルールはぎょっとした表情を浮かべる。


「”剣聖”が何でこんな所にいるんだよ! 聖日騎士団は対魔族の戦闘組織だろうが!」


 怒鳴りながら指摘するマルール。


 全くその通りだ。


 ヒト族との争いは聖月騎士団が受け持つ事になっている筈。


 聖日騎士団の出る幕ではない。


「うん、そうだね! 確かに、聖日騎士団は対魔族の戦闘組織さ! だから、ここは私の本来の持ち場じゃない!」


 快活な口調で答えるアニェス。


「つまりは、これは個人的な因縁の問題さ! 私は逃した獲物はどこまでも追う主義だからね! 例え、職務や命令に背く事になったとしても!」


「……逃した獲物って」


 言わずもがな、それは____


「シロメ! 君の事さ! いやあ、まさかこの私を化かすとは……大したもんだ! 死んだと思わせて逃げ果せるなんて! だからこそ、余計に君をこの手で殺さなければいけない! 絶対に殺す! だから、ここまで来た! その為だけにここに来た!」


 興奮気味にアニェスは語る。


 私は腰元からダガーを引き抜き、


「どうしてこの場所が分かった?」


 低い声で尋ねる。


 ここでは、私は正体を隠していた。それこそ、味方である冒険者達にも。


 それなのに、何故居場所を暴かれたのか。


「【追跡】のスキルの力さ! 私は一度出会った人や物の居場所を特定する事が出来るんだ!」


「……何だと」


 【追跡】のスキル。どうやら、アニェスは厄介なスキルを持っているようだ。


「と言う訳で、君に逃げ場は無いよ! 逃げても追い掛ける! さあ、覚悟を決めて____」


「!?」


 刹那、アニェスの大剣が目前に迫る。


「____死んでくれ、シロメ!」

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