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第24話「シシとの旅路」

 数時間の内に出立の準備は完了し、いざローズ連邦共和国に赴く事に。


 私は数名の家臣達と共に馬車で隊列を組んでトリフォリウム王国を出た。


 私の馬車には“始まりの子供達”の一人であるシシが同乗していた。


 今回の旅では彼女が家臣達をまとめ、秘書として私の身の周りの世話をする事になっている。


 いつも私の側で右腕のように仕えているヴァールは、国事に専念させる必要があるので、今回の同行者には含まれていない。


 シシは地上でのサキュバスの活動を監督している一人なので、今回のガイド役としては最適な人材だった。


 諸々の事は取り敢えず彼女に任せれば大丈夫だろう。


 道中、シシからはローズ連邦共和国やそれに関連した話を聞いた。


「いやー、随分と久しぶりですね。ローズに行くのは。前回訪れたのは半世紀ぐらい前だったかなー」


「へえ。そこまで親交がないんですか、ローズ連邦共和国とは」


「いや、私自身が訪れるのが久しぶりってだけで、向こうの人達とは頻繁に連絡を取り合ってますよ。手下のサキュバス経由で。特に最近だと、ダンジョン絡みの画策で絶えず手紙の遣り取りがあるんですよ」


「ダンジョン絡みの画策って何ですか?」


 気になったので尋ねてみる。


「今、リリウミアのダンジョンでは一部の冒険者達による反乱の計画が持ち上がっていまして。それをローズ連邦共和国は支援しようとしているんですよ。でも、冒険者達とローズ連邦共和国は直接連絡がし合えないから、私達がその橋渡しをしているんです」


「____反乱の計画」


 何気なく聞いた事だが、かなり重要な情報ではなかろうか。


 私は前のめりになり、


「その話、具体的に教えて下さい」


「具体的にですか? んー……ローズはダンジョンの利権が欲しくて、冒険者達は……何かリリウミアがうぜーって感じで……要はプライドの問題なんですけど、反乱を起こすぞーって輩が一定数いる感じなんですよ。それで、その両者が結託しようとしていて、今色々と話し合ってる状態です」


 ダンジョン内での反乱。


 もし、引き起こすことが出来れば、騎士団はその対処に負われる事になり、戦局に大きな影響が出る筈だ。


 これは____使える。


 そう確信する私。


 目的地に到着するまで、私なりにこの件に関して何か出来る事はないか考えておく事にした。


 さて、ローズ連邦共和国までの旅の途中、幾つかの街で宿を取ったりしたのだが、夜中にシシが訪ねて来て……これが大変だった。


 ベッドで寝ている最中、急に何者かが毛布の中に潜り込んで来たかと思うと、私の身体に抱きついて来て____その正体を確認するとシシだったのだ。


「!? って……何してるんですか、シシさん」


「夜這いですけど」


 驚いて飛び跳ねた私に悪びれもせずにそう答えるシシ。


 ……夜這いって。


「止めて貰えますか」


「え? 駄目なんですか?」


「いや、駄目でしょう」


 真顔で断言する。


 すると____


「何でですか?」


 本気で不思議そうに尋ねて来るシシに私は困り顔になる。


 ……何で、と言われても。


 まあ、実際、駄目な理由はぱっと思い付かなかったのだが。


「だって、今は戦時中、緊急事態なんですよ。そんな……皆が大変で忙しいのに、性欲に耽るような真似……」


「えー……良いじゃないですか。だって、私達淫魔ですよ。性欲に耽ってなんぼの存在じゃないですか」


 接近してくるシシを私は「止めて下さい」と押し退け、


「いや、何と言うか……多分、緊急事態とか関係なく、シシさんとはそう言う事出来ないと思います。私、シシさんとは無理なんですよ」


 思った事を正直にそのまま口にしてしまう私。


 若干強めの語気で言ったためか、シシはショックを受けて無言になってしまった。


 今のはちょっと不味かったか。


 私は慌ててその訳を口にする。


「あ、いや……だって、私達って一応、姉弟って事になる訳じゃないですか。そう考えると、交わるのは無理かなと思いまして」


 私もシシもメアリー・トリフォリウムの子供であり、血縁関係で言えば、紛れもなく姉弟の仲だった。


 だから、それを意識すると、いくらシシが女性的魅力に溢れる存在だとしても、性交の対象として見る事は出来なかった。


 私の弁明にシシは「えー」と不満げな声を発し、


「でも、姉弟である以前に、私達、男と女ですよね?」


「いや、男と女である前に、近親者同士なんです」


「近親者同士でも、男と女ですよ」


 淀みなく反論するシシ。


 もしかしたら、サキュバスは近親相姦とか気にしない種族なのだろうか。


 それともシシが特別なのだろうか。


 少なくとも、私は気にしてしまうが。


「本当に勘弁して下さい。第一、私は子供で……何と言うか……まだ来てないんですよ(、、、、、、、、、、)


「いや、でも、固くはなりますよね? だったら、問題ないですよ」


 凄い食い下がるじゃん。コイツ、性欲の化け物か。あ、いや、性欲の化け物だった。


 私は大きな溜息を吐き、


「と、に、か、く! 駄目なものは駄目です!!」


 睨みを利かせ、シシを強引に部屋の外へと追い出す。


 それでその場はシシが大人しく引き下がったが、この遣り取りを毎夜繰り返す事になり、ローズ連邦共和国までの旅路、私は無駄に疲弊する事になった。


 私は主で、シシは従者。


 彼女を罰するべきかとも思ったが、「シロメ様が性的対象として魅力的なのがいけないんですよ」と割と真剣なトーンで非難されたので、お咎め無しとした。

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