第8話 協力という決断
過去の苦い思い出から現実へと意識が戻る。あの時のことを考えると怒りが湧き上がるが、国王という立場でありながら土下座までして頼んできたことはシャルロの誠意と覚悟、そしてそれほど危機的な状況なのだとギアトは感じた。
「シャルロ様、私はあの時のことを忘れることはありません。消したくても消せない、思い出したくもない過去です。」
「………。」
「ですがシャルロ様の覚悟は伝わってきました。今回は過去のことは切り離します。」
「…!そ、それでは!」
「はい。協力します。」
ギアトの言葉を聞き、シャルロは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとう…!本当にありがとう!」
シャルロは泣きそうになりながら感謝した。
「ただし、少し条件をつけさせてください。」
「じ、条件?」
「王国兵士として協力してほしいと言っていましたが、王国兵士としてではなく、一般の冒険者として協力すること、そして王国で支援魔法を得意とする魔術師を仲間として招集することが協力する条件です。」
シャルロは少し困惑した表情を見せた。
「それだけでよいのか?ほかにも一流の冒険者なども仲間に加えたほうがよろしいのでは?」
「いや、人数が多くなるとかえって動きが制限されてしまうので一人で十分です。」
「そ、そうか。ライ、いやギアト・マーシャル殿今夜は長い時間失礼した。2日後に城へ来てくれ。その時までに条件にあった者を招集しておく。それでは。」
シャルロとその一行は城へ戻っていった。
ギアトは家に入るとベッドへ横になった。
「はぁ〜。なんかいきなり大事に巻き込まれたな。これからどうするか。まずはザックさんに事情を説明しないといけないか。冒険者登録もしなきゃな。忙しくなるなぁ。」
ギアトは今後のことを考え、そのまま眠りについた。
朝になりいつも通りご飯を食べてエルフィンパン工房へ向かう。ギアトは向かっている最中、これから隠していた自分の素性を話すことにかなり不安に思っていた。自分の素性を隠していたことをどんな風に思われるのか、そもそも自分が英雄の称号を与えられたライア・エスフィだと信じてもらえるのか、色々なことが頭をよぎっていた。
色々考えているうちにいつの間にかエルフィンパン工房に着いていた。
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