第6話 暗い過去
8年前、当時16歳だったギアトは冒険者として数々の討伐依頼をこなし、王国に名を轟かせていた。冒険者にはランキング制度があり、依頼を達成するとポイントが加算されポイントを多く獲得することでランキングが上がる仕組みだ。ギアトは16歳にして、ランキング1位になっていた。16歳でランキング1位は最年少記録で、今後打ち破られることはないとまで言われたほど歴史的な快挙だった。
7年前、当時17歳だったギアトにエアリカル王国から声がかかった。内容はかつて魔王の右腕として暴れていた黒竜を討伐するため、特別兵士として王国の討伐部隊に入ってほしいというもので、ギアトは王国を守るために快諾した。
黒竜討伐は少数精鋭部隊のみで行われ、ギアトを含めた少数精鋭部隊が黒竜と対峙し、激しい戦闘が繰り広げられたが、ギアトの活躍により誰一人死ぬことなく黒竜を討伐することに成功した。しかし、予期せぬことが起こった。部隊の兵士達がギアトを殺しにかかってきたのだ。
「な?!何をするんだ!冗談では済まされないぞ!」
ギアトの言葉に耳を貸さず次々に襲いかかってくる。黒竜との戦闘で体力があまり残っていなかったギアトは兵士の攻撃で傷を負ってしまう。尚も攻撃の手を緩めず兵士は襲ってくる。
(殺らなければ殺られる…。)
そう悟ったギアトは、残っていた力を絞り出し、兵士達に反撃を開始した。なんとか一人を除いて兵士全員を殺した。ギアトは残った兵士に馬乗りになり問い詰めた。
「なぜ…なぜこんなことをした?目的はなんだ?知っていること全て話せ。」
しかし兵士は答えようとしない。
「答えろ!じゃなきゃ今すぐお前の首を掻っ切るぞ!」
「クッ…!目的は黒竜の討伐及びお前ライア・エスフィの排除だ。」
「俺の排除だと?何のために!」
自然と口調が強くなる。
「お前の力は王国にとって脅威なんだ。お前は強すぎる。もし、お前が反乱を起こしたとしたら甚大な被害が出ることになるだろう。制御ができなくなる前に不安の種は取り除かなければならない。」
「貴様…!お前らのそんな身勝手な考えで俺を殺そうとしたのか!」
「何か勘違いしているな。これは部隊の兵士達の考えではない。国王を始めとする王国中枢の者達の考えだ。俺達は国王の命令に従がったまでだ。」
兵士の言葉を聞いて愕然とした。ギアトは王国の安全のために冒険者として働き、黒竜の討伐にも参加した。にもかかわらず自分が国王や側近からそのように思われていたことがショックだった。
「つまり俺は国王達にとって邪魔者だったということか。ハハ…なんだか馬鹿らしくなってきたよ。俺は一体何のために…。おい、もし俺を殺していたらその後はどうするつもりだったんだ?」
「お前は命と引き換えに黒竜を討伐したとして英雄の称号を与え、悲劇の英雄として国民に発表する、という筋書きさ。」
「そうか、よくわかったよ。丁寧に説明してくれて助かった。とりあえずお前はここでしばらく寝てな。」
ギアトは兵士から離れると、重い足取りで王国へ向かった。
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