第5話 確執
ギアトは恐る恐るドアを開ける。すると、目の前に二人の兵士が立っていた。後ろの方を見ると目の前の兵士だけでなく、大勢の兵士が待機していることが分かった。
「夜分遅くに失礼します。私はエアリカル王国護衛部隊総隊長のラエス・ハルルクと申します。隣は副総隊長のカル・テルエンです。突然で申し訳ありませんが、ギアト・マーシャルさんはいらっしゃいますか?」
突然の訪問にギアトは驚いた。なぜ今この国の護衛隊長がやって来たのか見当がつかなかった。
「えっと、俺がギアト・マーシャルです。」
そう答えるとラエスとカルは少し驚いた表情をした。
「あなたがギアトさんでしたか。失礼しました。今日はあなたに特別な頼みを聞いていただきたく参りました。」
「特別な頼み?なんですかそれ?」
ギアトは胸がざわつくのを感じていた。
「特別な頼みについては後ろにおられるシャルロ様からお話しさせていただきます。」
ラエスがそう言うと後ろからシャルロが向かって来た。ギアトは驚愕すると同時に何とも言えない複雑な気持ちになった。
「久しぶりだな、ギアト・マーシャル殿。いや、英雄ライア・エスフィ。今日はそなたに頼みを聞いていただきたく、恥を承知でここに来た次第だ。」
「………シャルロ様、私はライア・エスフィという名も英雄の称号も捨てました。今の私の名はギアト・マーシャルただ一つです。」
「…すまない。ギアト・マーシャル殿今日はこの国、いや世界を救ってほしいと頼むためにここに参った。」
唐突すぎる頼みにギアトは困惑した。
「どういうことですか?この世界に何が起こっているというのですか?いや、そもそもなぜ私に?7年前の約束を覚えていないのですか?」
ギアトは気になったことを全て聞いた。
「7年前の約束はもちろん覚えている。だから恥を承知で来たと言ったのだ。」
シャルロは拳を強く握った。
「今から詳しく説明する。少し聞いていてくれ。」
そしてシャルロは魔物が増加していること、その問題を解決するために『召喚の儀』で召喚した人物が突如裏切り、世界を支配しようとしていることを伝えた。
「…それで私に頼みに来たと、そういうことですか。少し言い方が悪いですが、少々身勝手ではないですか?私が頼みを聞く道理はないと思います。」
ギアトはシャルロへの不信感から攻撃的になっていた。
「確かに、今の状況は私が招いてしまった。本来なら関係のないそなたに頼むのは間違っているのは分かっている。だが、今回はそのようなことを考えている余裕がないのだ!」
おもむろにシャルロは地面にひざまづき、両手を地面につけ、ギアトを見る。
「頼む!もう一度、もう一度だけでいい!王国兵士としてもう一度だけ我々に力を貸してくれ、お願いだ!」
そして、シャルロは頭を地面につけた。国王が土下座をしている光景にギアトだけでなく、周りの兵士達もかなり動揺していた。
「ちょっ、よしてください!こんな光景を他の一般の人が見たら大変なことになります!」
ギアトは慌ててシャルロに頭を上げるように促す。
「これで過去にそなたにした仕打ちを許してもらおうなんては考えていない。ただ、力を貸してもらうために精一杯の誠意を見せたかったのだ…」
ギアトはシャルロの覚悟を受け止めると同時に確執が生まれた過去の記憶が蘇ってきていた。
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