第4話 パン屋で働く男
視点ががらりと変わります。
「お〜いギアト、悪いがこのパンをフーラさんのところに届けてくれ。」
「分かりましたー。」
ギアトはザック・エルフィンから焼き立てのパンを受け取ると、すぐにフーラの元に届けに行く。
10分ほどでフーラの家に着いた。ドアをノックし、フーラを呼ぶ。
「すみませ〜ん。エルフィンパン工房のギアト・マーシャルです、ご注文のパンを届けに参りました。」
少しして家から白髪のお婆さんが出てきた。穏やかな目付きでとても優しそうな雰囲気が出ている。
「はいはい、こんにちはギアト君。いつもありがとうね。お代はいくらかしら。」
「えっと、全部で800ルピになります。」
「はい。お仕事頑張ってね。」
「ありがとうございます。それじゃもう行きますね。」
パン工房に戻り、ザックに配達を無事終えたことを伝えた。
ギアトが働いているエルフィンパン工房は店頭販売とパンの配達を行っており、周りからの評判は中々良い。
「あ、ギアトお疲れ様〜。なんかいつも思うけど、ギアトって全然疲れた表情しないよね。その体力どこでつけたの?」
話しかけてきたのはザックの娘のマリル・エルフィンだ。ザックは茶髪でかなり筋肉があり、髭も生やしていてかなり野性味を感じる人だが、マリルは肩まで伸びた美しい茶髪で体はスリム体型、笑顔が似合う明るい性格でザックとは対照的な感じだ。
「お疲れ様マリル。別に働いてたら自然と体力ついただけだよ。」
「えー?私には働き始めたばかりの時からすっごい体力あるなぁと思ったよ。」
「そうか?まぁ、まだ仕事中だからお喋りはここら辺にしとこう。」
「真面目だね〜。その真面目さが助かってるんだけど。」
マリルは店頭販売に戻った。ギアトもザックの元へ行きパン作りを手伝う。日が落ち始めた頃、今日の仕事が終わった。
「よし、ギアト今日もお疲れ。明日も頼むぞ。」
「はい。お疲れ様でした。」
ギアトは帰り支度を済ませて家った。家に着くとすぐに晩ご飯を食べる。その後、湯を沸かし、お風呂に入る。ギアトにとってお風呂は至福の時間だった。お風呂から上がると家の外に大勢の人の気配がした。
(なんだ?この大勢の人の気配。敵意は…感じないな。だが、安心はできない。)
警戒していると、家のドアがノックされた。