第3話 闇堕ち
「なぁ国王様、俺はそんなに強いのか?」
「え?は、はい。上級魔法を簡単に使うことができる人はそうそういませんからね。コウヤさんなら最上級魔法も簡単に使うことができると思います。」
「フフフッそうか。俺は強いのか。」
(どうやら俺の力は本物らしいな。よし、決めた。俺はこの世界を支配し理想の世界を作る。…前世のクソみたいな人生はもう忘れよう。これからは最高の人生を歩むことができるのだから!)
「コ、コウヤさん?」
不気味な雰囲気を醸し出すコウヤにシャルロは少し恐怖を覚える。
浩也はシャルロのほうを向く。
「なぁ国王様、俺は…この世界を支配する。理想の世界を作るためにな。」
思いもしなかった言葉に周りの人達は動揺する。
「ど、どういうことでしょうか?」
シャルロは態度が豹変した浩也に恐る恐る聞いた。
「そのままの意味ですよ。こんな強い力があるってんなら、俺が望んだ世界を作れる。俺がこの世界の支配者になったらもうあんな思いをしなくて済むんだ…。もう俺を見下す奴はいなくなる!俺の理想の世界が実現するんだ!」
一人の兵士が我慢できずに浩也に反発する。
「一体何を言っているんだ!いくら救世主様だからといっても身勝手な発言は許容でき…」
その瞬間浩也は兵士に攻撃魔法を使い、兵士は即死した。その光景を目にした人達は動揺していたが、すぐに護衛部隊が浩也を取り囲み、シャルロは城へ避難した。
護衛部隊は一斉に攻撃を仕掛ける。浩也は躊躇なく向かってきた護衛部隊を殺していく。後方から攻撃魔法が飛んでくるのが見え、上級魔法の浮遊魔法を使い空中へ回避する。
「ハッハッハ!なんて力なんだ、あらゆる魔法を使えるんじゃないか?」
浩也は身体強化魔法を試してみる。魔力を手や足に集中させることによって通常よりもはるかに速さや力が上がった。
「これが身体強化魔法か。中々いいじゃないか。」
浩也は後方の部隊に突撃する。あまりの速さに兵士達はついていけない。
「は、速すぎる!」
浩也はそのまま後方の部隊を蹴散らした。生き残った僅かな兵士達は城へ逃げる。
「フッ、終わりか。ま、俺の力をちゃんと国王に伝えるんだぞ。」
浩也は逃げ帰る兵士を見て言った。
「さぁここからどうするかな。…とりあえずこの世界をくまなく見ることにしようか。このまま無闇に王国を攻めるのはさすがに無謀だからな。この世界を支配するために色々知識をつけなければ。」
浩也はそのまま浮遊魔法を使い遠くへ消えていった。
エアリカル城ではまた緊急会議が開かれた。魔物に加え、須藤浩也の裏切りという未曾有の危機に会議に出席している者は皆頭を悩ませていた。
「シャルロ様!このままでは本当に我が国いや、この世界が支配されてしまいます!」
「分かっておる!クッまさかこんなことになるとは…。何かいい手はないものか…」
「複数の上位クランに依頼をだすのはどうでしょうか?」
「今は上位クランは魔物の討伐に忙しい。こんな大きな問題にリソースを割けるクランは少ないだろう。」
「王国兵士で討伐隊を組むのはいかがでしょうか?」
「簡単に上級魔法を扱っていたあの者を討伐できるほどの部隊は編成できない。最上位クランの者達でも対抗できるか怪しいのだ。」
「………」
沈黙が訪れる。しばらくした後シャルロが沈黙を破った。
「こうなったらもうあやつを頼るしかないか。」
「まさかシャルロ様、あの元英雄を頼る気ですか?!私はとてもあの方が我々の頼みを聞いてくれるとは思いません!」
「だがもうそれ以外にいい案はないだろう!また『召喚の儀』をするのか?召喚された人物がまた裏切ったらどうする?!そうなったらもうこの世界は終わりだ!」
「ですが我々はあの方に一生消えない傷を…。そしてあの負の歴史をもし知られたら…。」
「もちろんそんなことはわかっている!しかしもうあやつしかいない。すぐに今どこにいるか調べてくれ。私が直接会って頼む。」
シャルロは何かを決意したような顔をしていた。
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