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島国の冒険者  作者: 御嶽の山と天竜の川
初めての依頼
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第4話 初めての依頼と街への帰還


好きな作家さんの作風と似てきている気がするという・・・



 北門の直ぐ近くまで来たが、まさかこのまま門をくぐる訳にもいかない。

 何せ僕の後ろには魔犬、の死体が引き摺られているのだ。

 いくら冒険者だと言えど街の中に生き物の遺体を引きずって入っていいわけでも無いだろう。


 そこで門の少し手前で、魔犬の解体、(と言っても心臓の辺りに魔石が無いか確認するだけだけど)をしてしまおう。

 そうしよう。

 どこか解体のできる所は無いか?


 在った。

 あの電柱の横なら門に直ぐ逃げ込める。

 ずるずると魔犬の死体を引きずって行く。

 それにしても重いな!

 ダイエットしろ!

 お陰で汗まみれではないか。


 ひいこら言いながら引きずって行く。

 これまでの分も合わせて毛皮はボロボロである。

 生きている時はあんなに丈夫な毛皮だったのに、どうして死んだらこんなに柔になってしまうのか。

 それは魔犬のもつ魔力が死ぬ事によって抜ける為、と聞いた。

 魔力の塊である魔石によって、エネルギー問題がほぼ解決してしまった位、凄い力が魔力にはある。

 上位の冒険者が物凄い力を発揮するのも、魔力による強化を無意識下で行っているから、という説まであるのだ。

 そもそも魔力によって頑丈に保たれていた毛皮から、魔力が抜けたのだからさもありなん、といったところか。



 ぶすり、と、解体ナイフを突き立て、ぐりぐりと肉を剥ぎ取ってゆく。

 ひどい臭いだ。

 こいつは風呂に入った事が無いだろうか?

 無いんだろうな。

 全く、死んだあとのことも考えておいて欲しいものだ。

 ただ、この魔犬が風呂に入って、『あー良い湯だなー』なんていう光景は余り見たいとは思わない。

 刃が鈍りそうだ。

 そんな事言っても臭いが消えて無くなるわけでもない。

 粛々と切り開いてゆく。


 そうして僕の手のひらにあるのは、大体小指の先程の大きさの青紫色の魔石。

 と、血塗れと成った解体ナイフ。

 このままだと切れ味が悪くなって使え無くなるだろう。

 周囲は血塗れで、まるでスプラッタ映画のようだ。

 ・・・採算が、合わない・・・!!



 せめて両手と血やら体液やらが酷い所は手拭いに水を染み込ませて拭いておく。

 ふと、魔犬と戦った直ぐあとにこれをしておけば良かったのでは?

 と、言う考えが頭を掠めたが、これ以上考え無いようにしておく。

 ・・・次からそうしよう。

 1つ賢くなったな。



 解体を終えて門をくぐる時に、こいつくっせーなーって言う目で見られた。

 い、いいんだい!

 こんな事もあるよ。

 冒険者なんだからな!・・・真面目に洗浄(クリーン)の魔術を習得したい。

 そんな事言っても魔術師は貴重だ。

 ギルドの講習で習う事が出来るだろうか?

 確認しておこう。

 覚えてたら、だけど。


 少々急ぎ足で宿まで来た。

 宿屋は大通りから少し外れた所に在って、元々はペンションだったのを改築したのか、二階の白い壁面には禿げた文字で大きく『そよ風荘』と、書かれている。 ペンキは禿げ掛けて一階部分は蔓植物に侵食されてしまい、入り口を探すのも一苦労だ。

 そんな『そよ風荘』であるが、2日間泊まってみた所、なかなか住み心地がよろしい。

 泊まれる部屋は二階に五部屋あって、その中の一番東っかわが、僕の寝泊まりする部屋だ。


 宿主は並み大抵の冒険者よりもさらに大柄な体つきで、まるで話に聞いた事のあるボディービルダーのようだ。

 しかし、その筋肉は戦うことを想定して鍛えられたものに見え、決して見せ掛けだけのもので無い事を主張してくる。

 何よりまず、顔がおっかない。

 いや、顔はもちろん体の方も傷だらけで、だけどやはり顔の恐さが先にくる。

 禿げていた。

 それはもう、ツルツルに。

 そして片眼には三条の爪痕がくっきりと走っており、あれ?この人ってかなりの高ランク冒険者じゃないの?

 と、言った感じがバリバリする。

 その宿主の名前は、郷田 勲男(ごうだいさお)と言った。



 そんな恐ろしい『そよ風荘』であるが、住み心地は良いのだ。

 本当だぞ。

 ・・・あの顔のプレッシャーを気にしなければ。



「ただいま帰りました!ー」


 植物が繁茂してしまっている入り口の、取手を引いてあいさつをする。

 泊まってから二.三度は、あいさつを忘れて痛い目を見た。

 と、言っても物理的に痛い目を見る訳では無くて、宿主の強烈な威圧が襲いかかって来るのだ。

 一瞬だけベンガル虎の幻を見た。

 それくらい恐ろしい体験だったが、同時にいい経験だったとも思っている。

 強烈な威圧を発する魔物に対面した時に、あの宿主の威圧を喰らった事があるのか無いのかで、たぶん、きっと生死が別れるだろう。

 と、まあそんな訳でそれから二回程わざと、あいさつを忘れてあの威圧を喰らったが、それからは威圧に殺気が混ざるようになったので、もう二度としない事に決めた。

 それでも止めなかったらどうなっていたかって?

 それは考え無い。

 考えたく無い。

 きっと酷いことになっただろう。

 それだけは分かる。


 宿主はカウンターで暇そうに雑誌を読んでいたが、僕のあいさつに方眉をピクリ、と、動かして、


「ああ、お帰り。荷物は全てお前の部屋に取ってある。てっきり死んだかと思っていたが、帰って来たならまずその体を洗え。裏に蛇口と金だらいがあるからそれは使っていい、臭うぞ。もし壊したら、・・・分かってるよな?」


 宿主は最後のセリフだけジロリと、視線を僕に合わせてそう言った。

 こう見えて面倒見は良いのだ。

 たぶん。


「ええ、ありがとうございます。洗濯機も回したいのですが今空いてますか?」


「あぁ、空いてるぜ。使用料はそこに書いてある」


 宿主、郷田様?、郷田さんか、は、今度は雑誌から目線をピクリとも動かさずに、指でカウンターの後ろに掛けてある料金表の木札を指でさしてそう言った。

 お値段は、相場より少しだけ安かった。

 僕のような貧乏性にはありがたい話だ。

 ちなみに電力はどこから引いているのかと言うと、都市の中にある発電施設である。

 ギルドが集めた魔石の一部は、ここで電力に変えられて僕らの生活の役に立っている訳だ。

 実に上手くできたシステムだと思う。



 さて、洗濯機を回して、ついでに僕も洗って、それから着替えたら、ギルドに行って依頼の完了を報告して来なければ。

 正直直ぐなにでも二階に上がって堅目のベッドにダイブしたいところだが、反れば少しの間だけ我慢だ。


 それにお腹も空いた。

 もうペコペコだ。

 一角ウサギの肉も食べたい。

 早くギルドで用事を済ませて来よう。

 そうして厨房を借りて料理するのだ。

 帰りに採取した野草もある。

 きっとおいしいものが食べられるだろう。

 楽しみだ。



すいません。


諸事情で、暫く更新止まります。


書き貯めをして、一月経たずに再開する予定ですので、待っていて頂けると幸いです。



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