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図書室と先輩~ぷらす♪~  作者: アデル
24/26

カルネアデスの舟板

ちょっとした息抜き的なお話。

「ねえ先輩?」


「うん、なんだ?」


「カルネアデスの舟板って知ってます?」


「なんだ、こんな時に」


「いえ、知っているかなあって思って」


「一応後学の為に聞いておこうか」


「えっとですね、昔のギリシャのですね、 カルネアデスって哲学者が提唱した緊急避難の問題なんですけど」


「うん、どういうの?」


「舟が難破して、なんとか板切れ一枚にしがみついて助かった男の人がですね、 その板に自分もすがろうと近づいてきた仲間の男の人を、俺だけでも危ないのにこんな板に二人もつかまってたら沈んでしまう、そう考えて突き飛ばしてしまうってお話なんですけど」


「その仲間の人はどうなったんだい?」


「当然、力尽きてブクブクって……。 でもこの男の人は罪に問われることはなかったんですって」


「まあ、それはそれで仕方ないのかな。ちょっと難しい問題だよな」


「ですよねえ。でも、これって今も法律で生きているんですよね」 


「で、聞くんだが、なんでこんな時にそれを持ち出すのかな?」


「だって十分緊急な状態だと思いません?」


「バカ!なに考えてんだ!俺は絶対そんなことしないからな」


「あの、先輩?このままだとロープが切れるかしちゃいますよ。だったら少しでも軽くなったほうがいいと思いますけど?」


「なにか? 俺にお前を突き落とせっていうのか?」


「でもこのままじゃ二人とも助からないですよ」


「ちょっと待て! もう少ししたら絶対助けが来る! だからそれまで頑張るんだ!」


「ありがと、先輩。でも、もう腕の力が入らなくて……。なんとか先輩だけでも助かってください」


「待て! 早まるな。もう少し、もう少しだから」


「ねえ、先輩? 最後にもう一つだけ聞いていいですか?」


「何でも聞いて構わないから、最後なんて言うな!」


「普段聞いても答えてくれないから、今聞いちゃいますね」


「だからなんなんだ?」


「わたしのこと、愛してる?」


「……ああ、愛してるよ。愛しているから……。だから自分から落ちようなんて考えないでくれ!」


「はぁ? なんでわたしが落ちるんです? わたしを愛しているんでしょ。それなら、喜んで落ちてくれますよね」


「へっ?」


「だからあ、わたしと先輩、どっちが重いと思ってるんです? 先輩がさっさと落ちてくれれば、わたしが助かるんですよ」


「な、なにい!」


「わたしも愛してましたよ、先輩。ありがとう。じゃあ、ね!」


 ゲシッ!


 うわあぁぁぁぁ・・・・・




「いやあ、吊り橋効果を体験しようってのはいいんだけど、下手すりゃこんなんなるような気が……」


 ギロッ!


「ハイ、わかりました。すみません。行きます、行きます」



 一緒に吊り橋渡って、ドキドキ効果でもっと仲良くなろう。


 んで、あわよくばその日にゴニョゴニョ、とか思って、今度のデートにプチ登山を提案したらこうだもの。まったく先輩ったら。



 そして当日。


『吊り橋の定期点検のため、このルートは現在閉鎖中です』


って、おい、こら!


運命の女神だか恋愛の女神だか知らないけれど

いつかその向こう脛にケリ見舞ってやるからね!


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