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図書室と先輩~ぷらす♪~  作者: アデル
20/26

銀杏の木の下で②(会心の一撃)

「銀杏の木の下で」の続き。

シリアス調に書いてみたかったようです。

「前にうちの両親が離婚していることは話しましたよね」


「ああ、聞いた。お母さんとそりが合わないってことも」


 ひとしきり泣いて、落ち着いたわたしは、先輩と一緒にベンチに座り、いままで口にすることのなかった家の事情を少しずつ話し始めた。


「その人がですね、今日家に来るんです」


「なるほど」


 わたしは自分が思っているほどポーカーフェイスではないらしい。

 眉間に皺がよっていた、と聞かされたときは両手で顔を覆ってしまった。


「ほら、わたしってあまり頭が良くないじゃないですか?」


「それは否定したほうがいいのかな?」


 少しでもリラックスできるようにだろう、先輩がほどほどに茶々をいれてくる。

 否定されて成績上がるならそうしてもらうのですが、と私は軽く首を振る。


「それでですね、あの人、進路のことにも口出ししてきたんです」


「うん」


「昨日も電話で話したんですけど、なんて言ったと思います?」


「いや」


「大学くらい行ってちょうだい。これ以上私に恥をかかせないで、ですって」


「うん」


「今日来るのは話を煮詰めるためだと思うんです。たぶん塾とか家庭教師やらの手配をするつもりなんです」


「お父さんはなって言っているんだい?」


 そうか。このことを言っていなかった。


「あ、すみません。わたし今、祖母の家なんですよ」


「えっ、お父さんは?、また入院とか?」


「ああ、違います、違います。祖母がですね、どうも体調が芳しくないようで、わたしが一緒に住むことになったんです。父は、そうですね、仕事がかなり忙しいみたいで、帰りが遅かったり帰ってこなかったりです」


「お父さん、大丈夫なのかい?それにおばあさんも?」


「ええ、今のところは」


 嘘ではない。体は治りきっていないけど、それでもできる仕事がたんまりあるらしく、父は喜んで仕事に行っている。また体を壊さなければいいけど。

 祖母については……、まだどうなるか分からない。「今のところ」大丈夫なのは事実なのだろう。ただしその先に不安があるだけだ。


「父はあのとおりの人なんで、放っておいてもと言うか放っておくのが一番と言いますか」


「あいかわらず手厳しいね」


「祖母のほうはですね、ヘルパーさんとか雇えばいいんですけど本人が嫌がりまして。まあ、自分のことは自分でできますしね。でも誰かがそばについていたほうが、ってなったんです」


「でも、それじゃ大変だろう?」


「ああ、そんなことないですよ。逆に楽になりました」


「?」


「学校が近いんですよ。距離が半分くらいになりましたから、遅刻しないで済みます」


 これは実にありがたい。


「それに、祖母にはずっとよくしてもらってましたし、孝行できるチャンスですから」


 そうだ、まだ他にも理由があった。


「先輩。最近ウチの近所で通り魔事件があったの知ってます?」


「ああ、TVでもやってたし、学校でも放送されてたからね」


 そう、深夜十一時くらい仕事帰りのOLがナイフで切りつけられたとか。犯人はまだ捕まっていない。塾の帰りとか十分注意するようにとHRでも先生が言っていた。


「まあ、そういう条件が重なってですね、祖母と一緒に住むことにしたんです。父とも話し合ったことなのでご心配なく」


 とりあえず嘘は言っていない。ただ言っていないことがあるというだけだ。


「まあ、父抜きであの人と対決しなくちゃならないんで、そのことについては気が重いです」


「俺、前に言ったよね。話を聞くくらいはできるから、溜め込む前に吐き出せってさ」


 心配してくれているのは本当にありがたい。


「ああ、溜め込んでいたわけじゃなかったんですけどね。いろいろと急に来ちゃったものですから」


「大丈夫、なんだよね」


 先輩が念を押してくる。問題は何をもって「大丈夫」とするかだ。

 あの人の件はどうにかなるだろう。まずは()()()()()()()()()()返事をする。


「ありがとうございます。大丈夫ですよ」


「そうか」


「ええ」


 これで話は終わり、のはずだった。けれど、やはり先輩は先輩で。


()()()()()()()()()があるみたいだけど、言いたくなければ聞かないよ」


 会心の一撃。

 風が銀杏の葉を一枚二枚どこかへと運ぶ。葉擦れの音がまるで効果音のようにひとしきり。


「やっぱり先輩ってずるいです」


 わたしは先輩の顔を両手ではさみ顔を近づけた。


「君ほどじゃない」


「わたしはただ性悪なだけですよ」


 そのままわたしは唇を重ねる。せっかく乾いた頬をまた涙で濡らしながら。

くどい文章表現ゆえか文字数がかさんでいたので、前後半に分けました。



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