サギ師と呼ばれた女
先輩は、ホントのところどういうタイプが好きなんだろう? 気になって仕方がない。
とはいえ、この手の話は苦手だ。どう話を持っていこうか、いつも迷っちゃう。
けれど、うだうだばかりしていても仕方がないのも事実よね。そのために用意したものまであるのだから。
そしてわたしは意を決して聞いてみる。
「先輩?」
「はいよ」
「ちょい先輩の好み、聞いてみてもいいですか」
「なに、突然?」
「いえ、なんとなくなんですけど……」
こんな話をすれば、自分の首を絞める結果になることは目に見えている。
わかってる。けど、気になるんだからしょうがないよね。
ここは図書室。カウンター内にいるわたしと、真正面に肘を突いている先輩。
いつものごとく、くだらない会話を繰り広げていたわけなんだけど、辺りに誰もいなかったこともあって、今しかない、と口にしてみる。
とりあえずはタイプだけでも知っておきたいじゃない?
「例えばですね、色白で……」
「ふんふん」とそれだけで身を乗り出してくる先輩。飢えているんですか?
「スラリとしていて、首も細長くて……」
「おお、よいねよいね」
顔がにやけ始めてますよ。
「足も細くてですね……」
「ぐぅっど、だね」
「顔はちっちゃくて、目はパチクリ。ちょっときついかなって印象なんですけど……」
ここまで話していて、いまさらのように気付くわたし。これってそのまんま小峰先輩にあてはまるじゃん。
うわっ、マジ最悪。でもここまで来たら聞くしかないよね。
「そういうタイプって好きですか?」
「もうバッチシ。ど真ん中のストライク」
「背があまり高くないですけど……、うーん、中くらいかな?」
「そんなこと気にしないって。任せてちょうだい」
なにを任せるんですか、もう。
わたしもわたしだ。
これじゃまるで「小峰先輩はタイプですか?」って聞いているようなものじゃない。先輩は全然気付いていないみたいだけど。
はぁ…。こんなつもりじゃなかったのに。でも、ここまで来たらコレも出さなくちゃ。
「一応写真あるんですけど、見ます?」
これに写っているのは小峰先輩ではない。それが救いと言えば言えるかもしれない。
「おお、見る見る!」
カウンターを飛び越えんばかりの勢いで身を乗り出す先輩。
わたしはため息まじりに胸ポケットから一枚の写真を取り出し、それを先輩の前に差し出した。
ひったくるかのようにその写真を手にした先輩に、わたしは勇気を出して訊ねてみる。
「どう、ですか?」
「うおぉぉぉ、たしかに色白スリム! スットライク~!……って、なんでやねん!」
「えっ、きれいなコでしょ?」
「こらぁ?」と写真を置いてわたしを睨む目がちょっとこわい?
おっとこりゃヤバイ。
「キャー、助けてぇ~ん」
素早く司書室に逃げ込むわたし。ドタドタドドド~と先輩が追ってくる。
「待てーい」
「待ちませ~ん」
「えーい、そこへなおれーい。成敗してくれる、この詐欺師が~!」
机をはさんでにらみ合うわたしたち。
おお、これもある意味、見詰め合う二人?(ってちっがーう!)
「だって先輩が言ったんじゃないですかあ。写真撮ったら見せてみろって~」
「聞く耳もたーん!」
関先生がいなくて良かったのか悪かったのか。
かくして司書室で繰り広げられるは鬼ごっこ。愛を語らう暇もなし?
そしてカウンターには取り残された写真が一枚。
ああ、今日も平和なり、図書室と先輩とわたし。




