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図書室と先輩~ぷらす♪~  作者: アデル
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宣戦布告

生ぬるい目で応援してやってください。

「消したい過去」に新たな1ページを追加してしまったわたし。

 頭を抱えたり身悶えしたり。

 そうこうしているうちに、どうにか落ち着いてきた。


(大きなシャツ……)


 先輩のTシャツだろうか。襟首が広い。片側に寄せれば、肩も無理なく出るだろう。


「起きたかい?」


ノックに続き先輩の声がかかる。


「あ、はい」


「入って大丈夫かな?」


「どうぞ」


 少しきしんだ音をたてドアが開き、先輩が顔だけをのぞかせる。


(あ、メガネ)


 脇においた眼鏡をとろうとしたのだけれど、この粗忽さが、おそらくこれからも「消したい過去」にページを増やし続けるのだろう。


「あ、ごめん!」


とあわててドアが閉められる。


「?」


 ふと、前かがみになった自分の胸元を確認するわたし。だらんと下がった襟。そして先ほどの先輩の顔の位置。

 オーマイガッ!


「ごめん。着替え終わってると思ってたから」


 あわてて服を着替え、それを告げるとおそるおそるといった様子で先輩がまた顔だけをのぞかせた。

 着替えたにもかかわらず、胸元部分を左手で隠しながら睨むわたし。


「見ました?」


「いや……」


「見ました?」


「ごめん。少しだけ見た、というか見えたというか……」


 漫画やアニメではお約束ともいえる展開を、まさか自分で演じてしまうとは……。

 はぁ、どうしようもない脱力感。

 しかたない。迷惑かけたお詫びと思うしか……。どうせあの日には見せる予定だったのだから。

 ちなみに、この「ラッキースケベ」は実に萌えた、と後日高評価をいただきました。はい。

 喜ぶべきことかどうかは微妙ではあったけれど。


 階下では先輩のお母さんが待っていた。眉間に皺が寄っている。


「一応、親御さんに連絡とろうと思ったんだけど、つながらなかったの」


 それはそうだ。誰もいないもの。


「あ、すみません、父は入院中なんで、家には誰もいないんです」


 先輩を父に紹介した想定外のあの日から二日後、父はまた病院に戻った。


「あら、お母さんは?」


「あ、おかん……」


 それに触れてくれるなと言わんばかりに先輩が横から口を出す。それが地雷だと先輩は思っているのだろう。今までが今までだからしかたのない反応だ。


「あの、ウチ、二人暮らしなもので」


 しかし、わたしは淡々と答えることで、杞憂であることを示す。

 そう、いくらなんでもこの状況でキレたり癇癪を起こすほどバカではない……つもり。


「そう……」


 どうやら、それで察してくれたらしい。


「このコから聞いていたけど、あなたがアデルさん?」


「はい。高橋アデルです。このたびは迷惑をおかけしてすみませんでした」


 わたしは何を言われても素直に謝るしかないことを自覚していた。

 だってね、自分で考えても、これはアカンて思うもの。


「これだけは言わせて貰うわね」


と前置きし、少し間をとってから、


「若い()があんな時間に何してたの!取り返しがつかないことになったらどうするの!」


 と予想していた以上に厳しい口調でしかられた。


「ごめんなさい」


 わたしは下げた頭を上げることすら出来なかった。


「あの、ちょっと……、いろいろあって……。だから、あの、ごめんなさい」


 言い訳にもなっていない。


「よそ様の子にこんなこと言うのもどうかと思うけど……」


 どんな躾をされてきたの、とか、親の顔が見たい、とか続くんだろうなあ。最終的には「ウチのコにこれ以上関わるな」とかになったらどうしよう。


「もっと自分を大事になさい!」


(えっ?)


 そこでようやく顔を上げると、先ほどとは打って変わった優しそうな表情で


「このコがね」


 と先輩を指差しながらこう続けた。


「本当に必死で頼むのよ。怒らないであげてくれって。いろいろ抱えて、情緒不安定になっているだけだから、あまり責めないでくれって」


「おかん!」


 横にいた先輩が顔を赤くしている。


「あーら、いいじゃない。本当のことでしょ」


 先輩が初めて見せる表情に、ジーン。


「このあいだ、いきなり「彼女ができたから紹介する」って言ってきてね」


口を挟んでも止めないだろうと悟っているのか、先輩はそっぽを向いてしまった。


「私もお父さんも驚いちゃってね。ウソでしょって言っちゃったのよ。上にもう一人いるんだけど、そっちは小さい頃から女の子にモテてね。結婚して家を出て行ったけど……」


 ピクッ!


「でもこのコはほら、こんなでしょ。モテるとは思えないし、ちょっと諦めていたのよね」 


 その言葉に、わたしは自分の立場を棚に上げ、否定で応じる。


「そんなことないです。先輩はいい人です。カッコイイです。優しいです。わたしにとっては最高の人です!」


 ここでやめておけば、つい言い返してしまった、で済んだんだけど……。

 先輩を慕う健気な女の子アピールにもなったんだろうけど……。


 ほら、わたしってば……うん、やっぱりバカだったみたい。


「先輩を馬鹿にするのは、たとえお母さんでも許せません!」


(あ……)


 目を丸くするお母さん。


「お、おい…」


 突然の剣幕に驚く先輩。


(やっちゃった……)

先輩のお母さんに宣戦布告?

いつでもどこでもやらかしますね、このコは。

さてさてどうなることやら。




さて、このエピソード自体にはまだ続きがあるのですが

起稿していなかったので、申し訳ありませんがこれでオシマイです。

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