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図書室と先輩~ぷらす♪~  作者: アデル
12/26

滑走路

スキンシップをとる程度には仲良くなっています。

「先輩?」


「ん~?」


「暑いです」


「夏だからね~」


「先輩?」


「ん~?」


「重いです」


「夏だからね~」


「って、ちがうでしょ!早くのいてくださいってば!」


 図書室のベランダ。

 わたしが手すりに頬杖ついて中庭を眺めながら、がらにもなく物思いなんぞにふけっていたら


「ああ、ここにいたんだ」


といきなり後ろから覆いかぶさってきた先輩。


「ふむ、これはちょうどいい」

とわたしの頭にあごを乗せて


「なに見てたん?」


とぐりぐり。あ、なんか気持ちいい。


「いえ、別に。ただ、なんとなく、です」


ぐりぐりが気に入ったわたしはそのままの姿勢で答える。


「ふーん」


 ひっつかれるのは嫌いじゃないし、まあいいや、と思っておよそ一分半。



 二分経過。



 だあ~!

 あ、暑すぎる~! やっぱ、どいて~!!

 ただでさえ暑いのに、さらに暑っ苦しい先輩に密着されては、さすがに耐え切ることができず、速やかな移動を要求するにいたった場面。

 けれども先輩は体格差にものを言わせて動きやしない。

 わたしのほうから動こうにも、先輩の両手がはさむように手すりに置かれて、どうにもこうにも動けない。捕獲されちゃった?

 ちょっとウレシハズカシフリーズ状態のわたし。

 それを知ってか知らずか、


「まあまあ、たまにはいいでしょ、こういうのも」


と、のたまいける先輩。

 あまりに飄々と言うものだから、

「それもそうね」と内心頷いてしまう自分がコワい。

 結局、図書室のベランダで、なにするわけでもなく二人してボー。

 顔を縦に重ねたわたしたち、傍から見たらどう思われるのかしら?

 ホント、なにしてんだか。

 と、そのうち先輩に少し落ち着きがなくなってソワソワしだす。

 左腕がだらりと下がり、わたしの腰にそえられ……。

 ちょ、ちょっと先輩?わたしにも心の準備といういうものが……。

 いえ、それはとっくにできているんですけどね。

 というか、本心は少しじれったく思っていたから「ガッチャ♪」と内心ガッツポーズ? ってバカ!そうじゃないでしょ!

 いけない、思わず期待と妄想が先走ってしまった。


(あれ? こない) 


 なんだかんだと言いながら、次の展開を期待していたわたしは拍子抜け。

 見たら微妙な空間を隔てて停止しているし。

 うーん、先輩もこういうところで思い切りにかけるよなあ。ストレートにエッチィくせに、肝心なところでちょいオクテ。

 もしかして、わたしが殴るかもとか思っていたりして。

「ガンガンいこうぜ」から「いのちだいじに」に作戦変更?

 らしいっちゃらしいんだけど、それはなんだか納得いかないぞぉ。

 ま、いっか。もうちょい待ってみましょうか。

 わたしはチラリ。上がるか下がるか、さてどう動くかな?

 迷子の迷子の左手さん?あなたはどこへ行きたいの?

 小刻みに揺れる左手、いとおかし。


「あー、管制室、管制室。着陸許可を願います」


 やっとのことで先輩が囁くけれど、残念!その時にはわたしはかなり冷静で。


「えー、速やかに引き返されたし。さもなくば領空侵犯で攻撃もやむなしと判断する。繰り返す、速やかに引き返されたし」


 左手の甲を少しつまんで爪をあててあげる。

 大きなため息とともにがっくりとうなだれて、ようやくわたしから離れる先輩。


「だっはあー」


「もう、なに考えてんですか、先輩ったら。場所をわきまえてください」


 どの口が言うのかしらね、ホントひん曲がってるな、わたしって。


「えー、だっていい感じになってきたかなあ、って……思ったんだもん」


だもん、って……。

見れば口を尖らせているし。まったくもう。

でも、そんな先輩に母性本能?くすぐられまくりのわたし。

込み上げてくる可笑しさに口元を緩ませて、そして今度はわたしが耳元で囁いてあげるのだ、性悪だなあと思いつつ。


「わたしの部屋だったら、滑走路もあきますけど?」


 一瞬、意味がわからないって感じでキョトン。

 そんな先輩が、どうしようもなく可愛いくて……。

 だからわたしは、後悔することのないだろう一言を。


「うち、来ます?」


 図書室、ベランダでの出来事。

ほとんど、そのことしか考えていないようです。

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