7話 1の意義 後編
あの日。あいつは教室でノートにひたすら何かを書き続けていた。あいつは、不器用だったんだ。凄く…
ー俺は、バカだから、とりあえずノートに書きまくることにした。
まず、俺は野球部が好きだ。でも、言葉で表すのが下手なんだ。だから、1人よがりのエースになっちまった。
でも、仲間のことを考えられていなかったのも事実だ。自分のことばっかで、いいピッチングすれば周りも信じてついてきてくれる。そう思っていた。
でも、何も知らなかった俺は、いつの間にか皆を傷つけていた。俺のせいであいつらは傷ついていた。
バカだった。俺は気付いたら「1」という数字に拘り(こだわり)すぎていたのかもしれない。
そして、菊池に言われちまった。『部をやめろ』って。あいつに言われちまったんだ。流石に苦しかった。
菊池には分かってもらえると思ってたけど、あいつにも辛い思いさせちまってた。俺は、本当にバカだ。
菊池、ごめん。もっと俺は仲間を、お前を信じてプレーすれば良かったんだな。エースなんかいらない。周りからの賞賛なんていらない。
ー菊池とバカやりながら競い合ってたあの時に戻りたいー
くそおおおぉおおおおお!まだ書き足りねえけど、うまく書けない!!!
とにかく、とにかくだ!!
昔に戻るなんて、そんなマンガみたいなことできねえし、これから野球部でお前と楽しくやってみせる!
・超重要!俺の仲間になる計画
あいつらの特徴
金沢
オタク →アニメを見て感想教える
あしはやい
山田
筋トレ好き →筋トレ本買う一緒に筋トレ
近藤
原田が好き→アシストしてあげる
…
…
…
…
菊池
ごめんごめんごめんごめんごめんごめん!!!!!!!!!!!!!!!!
今度、キャッチボールやりてぇな… ー
「ポタっ、ポタポタ」
菊池から涙が溢れる。
『菊池…。浅野さ、言ってたんだよ。「俺は辞めたいんだよ…独りよがりのプレーを」って。どうすればチームに溶け込めるか、ずっと悩んでたんだな。あいつ、バカだからさ。』
俺が横から伝えた。
『あいつ…マジでバカじゃねえの。どう考えても…俺が悪いだろ。お前が悪いところ無いだろ。俺の…せいだよ。浅野…。
ごめんごめん!!!!ごめん!!ごめん!!』
『俺も…また…お前とキャッチボール…やりてえよ。』
『…やろうぜ、菊池。キャッチボール。』
聞き覚えのある声がした。
『あ、浅野…?』
浅野がゆっくりと菊池に近づく。
俺が菊池の肩に手を置いて伝える。
『浅野さ、近くに居たんだよ。仕事してた。今日、グラウンドに来てもらうようお願いしといたんだ。』
浅野が菊池の目の前で頭を下げる。
『菊池。ごめんな。俺のせいで、お前が野球嫌いになっちまうところだったよな。ごめん』
『バカ!何言ってんだ。俺のせいだろ。お前のチカラに嫉妬してたんだ。だからあんな最低な言葉を浴びせちまった。本当ごめん。浅野、ごめん!』
菊池も頭を下げる。
『…おい。お前ら2人、バカなんだろ?』
『え?』
浅野と菊池は、揃ってこっちを向く。
『だったらよ、言葉じゃなくて、ボールで語り合えよ。夜になったらボール見えなくなるぜ?』
『おーーいーーーー!みんなぁ!!』
奏太が野球部を連れてこっちに来た。
『ほらほら!練習始め!!』
それと同時に浅野と菊池を野球部が巻き込んでキャッチボールをする。
いつもの練習。いつもの掛け声。
でもそこには、チームがあった。
お互いを信頼しているチームが。
『おい!浅野!』
『なんだ?』
『たまには来いよ。練習。』
『え?』
『気付いたんだよ。エースってのは1人じゃなくてもいいんだって。』
『俺とお前、2人でエース!そんな気がした!』
『なんだそりゃ。適当だな!でも…いいな。2人のエース!』
『おう!』
そんなバカみたいな会話をしながら、あいつらは、声が枯れるまで練習をした。
ー数日後ー
9月下旬。残暑。
まさに「暑さが残っている。」
9月でこの暑さはやばい。大丈夫か地球。
『ちょっと!何してんの?もう少しで授業始まるよ?』
亜沙美が相変わらずの声で近寄ってくる。
『ああ、わかってるよ。』
『そういえば、浅野くん。たまに野球部行ってるらしいよ?練習参加してるんだってさ!』
『へぇ、そうなんだ。』
そう。あいつらは完全に「チーム」になった。
そして、菊池も完全復活した。最近は絶好調なんだとさ。
『単純だよな、あいつらって』
『ちょっと!そんな言い方ないでしょ!』
『でも…さ。なんかいいな。チームって。』
『…そうだね。』
人は、ほとんどの人が1番に拘る。
でも、1人で1番にならなくてもいいのではないだろうか。
完璧な奴なんかいない。何処かに必ず弱い部分がある。だからこそ、それを埋め合う「仲間」がいる。その形も人それぞれなんだ。
俺は、そう思う。
1の意義 完




