4話 過去
さてと。
戻ったはいいが、一体今はいつだ?
時間的にはどのくらい戻った?
俺は近くにいた奴にそれとなく聞いてみると、丁度1年前に戻っていることが発覚した。菊池の話通りだったら、浅野が野球部辞める前。だけど、菊池があの最低なセリフを言ってしまった後。
ーとりあえず、浅野と話してみるかー
そう思い、目の前の野球部の集団から浅野を探してみた。するといきなり、
「ドンっ!」
と後ろから肩にすごい勢いで衝撃がきた。
『邪魔なんだけど』
それは、菊池だった。俺が会ったあいつとは別人かって思うくらい、冷たい目。態度。正直、ゾッとした。
人間ってのはこうも簡単に別人になっちまうのか?
『あ、悪りい。あんた、菊池くん、だよな?
ちょっと話したいことあるんだけど。』
『うぜぇな、消えろ』
そう言って、野球部の方へと行ってしまった。
駄目だ、話にならない。やっぱり浅野から聞くしかないか。
そして、もう一度浅野を探そうと………
ん?待てよ。俺、浅野の顔知らねぇじゃん!
やべぇ、写真もらうの忘れた。これじゃ探しようがないな。
と思いながら、さりげなくポケットに手を入れたら、何かが手に当たる。
それは、見覚えのないメモ用紙と写真だった。
ーこれ、浅野くんの写真だよ。これ頼りに探して!それじゃ頑張ってね、無理すんなよ!ー
亜沙美からだった。準備出来過ぎだ。
亜沙美は、マジで俺を助けてくれる。
ーもう、近寄らないで、顔も見たくないー
……。やべぇ、嫌な記憶を思い出しちまった。
浅野を探さないとな。
そして俺は、写真を頼りに浅野を探し始めた。
浅野は、教室にいた。1人残って、なんかやっている。
練習も出ないで、何やってんだ?
俺は廊下から窓越しに教室の中にいる浅野の手元を見た。
その瞬間、俺は目を疑った。
こいつ、マジかよ…
思わず見入っていると、浅野が不意にこっちを見てきた。
『なんだ?お前。誰?』
『へ?あ、いや、俺は…そう!お前のこと野球部の監督から探してこいって言われてさ。お前のこと探してたってわけ。』
苦し紛れにそう答えた。
『監督が?なんでお前に頼むんだよ。』
『あー、えっと。実はさ、監督は俺の親父の兄貴の嫁のお兄さんなんだよ。だから、なんとなく知り合いでな。こういうことよく頼まれるんだ。』
やばい、流石に怪しまれるか。
『へぇ、そうなんだ!かなり信頼されてるんだな。そっか。そろそろ練習行かないとな。』
こいつ、バカ、なのか?
まぁ、好都合だ。少し話を聞こうかな。
『なぁ。監督から聞いたんだけどさ…』
そこから浅野の話を20分くらい聞いた。
ーだからさ、辞めたいんだよ俺はー
最後は、浅野のこんな言葉で締めくくられた。
『そっか。ありがとう。話聞かせてくれて。』
『そりゃ、監督の親戚なら話さないわけにはいかないからな!でも、他の奴には言うなよ?じゃあ、練習行ってくるわ。』
そう言って、浅野はこれでもかという程の足音を響かせながら、練習場へ向かった。
そっか。そうだったんだ。
……でも、そうだとしたら、なんで?
そんな疑問が浮かんだ次の瞬間、浅野の足音が突然消えた。
なんだ?忘れ物でもしたのか?
気になった俺は、廊下に出てみると、
そこには携帯を耳に当てたまま、呆然と立ち尽くす浅野の姿があった。
『おい。浅野?どうした?』
『…さんが…』
あまりにもか細い声で聞こえない。
『なんだよ、どうしたんだ?』
『父さんが……』
『お前の父さんがどうしたんだよ?』
『死んだ』




