3話 能力
菊池の話を聞いたあと、俺は寝る準備をしていた。え?ふざけるなって?
違う違う。これも俺の能力に必要なことなんだよね。
そう、俺の能力を使うために必要な準備。
『しょーーん!菊池くんから借りてきたよ、ボール』
亜沙美はそう言いながら、ボールを差し出してきた。
泥まみれのボール。白い部分なんか全くないし、縫い目もほつれていて、もはや原型をとどめていない。
『めちゃ汚ねぇな、なんじゃこりゃ。』
『それがね、浅野くんとの一番の思い出の品なんだってさ。なんでも、2人の友情の証なんだって。』
ー友情の証か…ー
あの後も少し話を聞いた。あいつらは親友だったらしい。中学は違かったが、試合をやった時に仲良くなり、毎日早朝にキャッチボールなり、ピッチングなり、バッティングなり色んなことをしたという。
そんな中、競い合いたいという思いが強くなり、同じ高校に進学したんだと。
浅野には、強豪校からのスカウトが10校以上来てたらしいけど、全部断ってウチに来たらしい。
そんなに仲が良かった2人が今、最悪の状況にいる。俺が「能力」を使おうと思った理由は、救ってやりたい訳じゃなかった。単純に気になった。浅野が何を考えていたのか、そして浅野は今どこにいるのか、知りたかったんだ。
『ねぇ、大丈夫?』
亜沙美に覗かれハッとする。
『あー、悪りい。ボーッとしてた。』
『もう、しっかりしてよね!はい、準備できたよ!』
学校の一室を開ける。するとそこには、ベッドがあった。完璧な寝る準備がそこにはあった。
『サンキュー。早速寝るか。』
もう一度言うけど、ふざけてる訳じゃない。これが必要なんだ。
『亜沙美、ボールを。』
『はい!いってらっしゃい!』
そう言いながら、亜沙美は俺の手にボールを置く。
受け取った俺は、ベッドに横になり目を閉じた。正直全然眠くない。普通だったら寝れないやつだろう。しかし、
『菊池と浅野、2人の真実を知りたい。』
そう考えると、一気に意識が遠のいて来た。
そう、まるで意識の底に沈むように。
…
…
…
「ーーーーッチコーイ」
「ーーバッチコーイ」
「バッチこおおおぉい!!」
男どものうるさい声で目が覚めた。
そこは、グラウンド。恐らくウチの高校のグラウンドだ。
ー無事、戻れたみたいだな。ー
俺はホッとする。それと同時に行動を開始した。
そう、もう察しがつくだろうが、俺の「能力」とは、『対象人物の「思い出の品」を枕元に置いて、知りたいことを念じると、その人物の過去に戻ることができる』というものだ。
過去に戻るってのは、悪い気分じゃないが、正直怖い時がある。
過去に戻るまで、眠るって感じではなく、意識を飛ばされるっていう感覚。だから正直怖い。
しかも、亜沙美に聞いたところによると、この
能力を使っている時、俺の身体は現実世界からなくなるらしい。跡形も。そして、意識を取り戻すと、身体ごと現実世界に戻ってくる。
つまり、俺は精神だけでなく、身体ごと過去に戻っているらしい。
もうごちゃごちゃしてきたから、まとめるが、
・『思い出の品』と共に対象人物の過去に戻れる
・過去に戻る際は、身体ごと過去に転送される
・とにかくめちゃ怖い
って感じだ。
まぁ、便利な力ではあるが、正直あんま使いたくない。あまりにも現実離れしていて、怖い。
そんな風に思っている。
ーさてと、行くか。ー
とりあえず、ここに来た目的を果たそう。まず、浅野と接触するか。
俺は、起き上がり、グラウンドに向かって歩みを進めた。




