8話 呪いの救済 2人目?
私はまだ、分からなかった。
何故、ションの顔がこんなにも辛そうなのか。
そして何故、涼子さんがあんなにも泣いていたのか。
ションに聞いても答えてくれないし、どうしようもない。黙ってついていこう。
『よし、着いたぞ』
ションの声で、現実に戻される。
周りを見渡すと、そこは朽ち果てたあの老夫婦の家だった。
『え?どうしてここに?もう調べ尽くしたんでしょ?』
『ここに来たのは調べるためじゃない。待っているんだ。彼女を』
彼女?私がきき返そうとしたとき、
『笠原くん、亜沙美ちゃん。おまたせ』
正面から手を振って香織さんが現れた。
『あ、香織さん。こんにちは。もしかしてションが呼んだのって』
『あぁ、もちろん香織さんだよ。そして、ここに呼んだのも訳がある。とりあえず、中に入りましょう』
そう言って、ションは扉を開け、入るように促す。
なんでこの場所に香織さんを?どうなってんの?もう。
疑問だらけの私を他所に、香織さんも中に入っていく。
私もついていくことにした。
前見た時と変わらず、中は朽ち果てていて、無残な血の跡も残っていた。この辛く重い感じは何度来ても慣れそうにない。
『早速本題に入るけど…』
急に香織さんが切り出した。
『笠原くん。夏実の居場所が分かったって本当?だとしたら早く助けないと』
『そうですね。でも、その前に香織さん。あなたに聞きたいことがあります』
『私に?今更私に何を聞くの?』
『もちろん、今回の事件のことです』
『いいけど。私何も知らないですよ?むしろ私が教えて欲しいくらい』
私は2人のやり取りを見ることしかできない。そして、ションの顔が怖い。
『金澤涼子さんと川島夏実さんを資料室で襲い、夏実さんが行方不明になったこの事件。その発端は、8年前の老夫婦殺害の事件にありました』
『え?この事件はやっぱり8年前の事件の呪いって言わないですよね?』
『そうですね。ある意味呪いです。ただ、当事者の呪いじゃない。その後に残された人達の呪いです』
そう言ってションは、和室の方を向いた。
『知ってますか?殺された2人には孫がいたそうです。今、普通に生きていたら高校3年生くらいの』
私の心臓がバクバクしてる。なに?この胸騒ぎ。まさかション、とんでもないこと言おうとしてる?空気が痛い。私は思わず息を呑む。
『あら?だったら私と同い年ですね。高校も同じなのかな』
『俺はその人の手掛かりをここで見つけました。それは…』
そう言ってションはおもちゃ箱のようなものから1つのおもちゃを出した。
『これ、知ってます?ベアートークっていって当時かなり人気だったおもちゃです。』
『あー、知ってます。私もよく遊んだなぁ』
『問題は、このおもちゃの裏側です。ほら、ここになんか書いてありますよね?掠れてよく見えないから、俺がここに初めて来た時、これを「11k4」って読んじゃったんです。』
『本当だ。確かにそう見えますね。それってどういう意味なんですか?』
『俺も最初は分かりませんでした。でも気づいたんです。子供の頃って、よく親に名前を書けって言われませんでした?失くさないようにって。だから、ここには、孫の名前が書かれているんじゃないかって思ったんです。そして…』
そう言うと彼は書かれていた文字を反対に見せた。
『名前として見ると、このおもちゃの文字は大きな意味、そして、とんでもない真実を突きつける』
さっきの文字を逆さまにして読むと、
『か、かおり…?』
『そう。あなたの名前です。横山香織さん』
え。ちょっと。どういうこと?香織さんが、老夫婦のお孫さん?そんな…。
『冗談やめてよ。私の名前が書いてあった?
かおりっていう名前なんていくらでもいますよ?そんなんで私が孫だったなんて…』
『確かにそうですね。でも、かおりという名前と通っている高校、それに顔までが一致しちゃえば、同一人物じゃない可能性の方が低くなりませんか?』
そう言って彼は、調査結果みたいな紙を取り出して、香織さんに見せた。
『…調べたの?どうやって?』
『ちょっと警察に知り合いがいて…。すぐに出てきましたよ、あなたが』
途端に静かになる。更に張り詰めた空気が続いた後、香織さんが口を開く。
『もう、誤魔化しきれないみたいね。そうよ。私が10年前に殺されたこの家の老夫婦の孫。でも、今回の事件とは関係ないわ』
『やっと認めましたね。じゃあ、ここから今回の事件の真相を話しましょう。もう、終わらせます』
やっぱり香織さんが?
そんな事思いたくないけど、聞かなきゃ。
逃げないで、聞かなきゃ。
そうして彼はゆっくりと話し始めた。




