6話 悪夢
『はぁ、まだ若いのにねぇ…事故なんて可哀想に…』
『いや、それがね、ただの事故じゃないらしいのよ』
『え、どういうこと?』
『あの子の友達が自殺しようとしてたところを、たまたまあの子が見つけてね。助けようとして、代わりに車に…自殺しようとしてた友達は無事だったらしいんだけど』
『え?じゃあ、その友達の代わりに亡くなったって訳?酷い話ねぇ。で、そのお友達は今日来てるの?』
『いや。その日以来家に閉じこもってるらしくてね…。ショックで喋る事もできないって。
名前は…確か…珍しい名前だったと思うんだけど…えー…と。
あっ、そう!思い出した』
『カサハラ シオンって子よ』
……
……
……
……
『はっ…』
急に現実に戻されるように目を覚ます。
周りを見渡す。
ここは…そうだ。ホテルでションの帰りを待ってるんだ。
『いつのまにか寝ちゃってたんだ…。
なんで今更こんな夢を…』
私の最悪の思い出。まだ、ションが大嫌いだった時…。思い出すだけで苦しくなる…あの事故…
『あー、やめやめ!忘れよ忘れよ。今何時かな…。』
そんな独り言を呟きながら、時計を見る。
19時16分…あれからもう5時間以上は経ってる。今までで1番長いんじゃないかな。
窓の外を見ると、辺りは暗くなっていて、帰宅するのであろう人々の群れができていた。
ションは、何か見つけられたのだろうか…
何か、トラブルに巻き込まれてないだろうか…
そんな不安が押し寄せてくる。
ガチャ
ドアが開く音がした。
『ション!?』
慌てて、ドアの方に駆け寄ると、そこにいたのはタッキー、滝田奏太君だった。
『おいーっす!あさみんー。元気?』
『え、ちょ、なんで?』
『いや、頼まれたんだよ、詩音に。どうせまたあいつはいらねえ心配するからよ、俺が戻ってくるまであいつの近くにいてくれって』
ションのやつぅ、そんなことを…。
でも私はそんな彼の優しさに触れることができて、だいぶ気持ちが和らいだ。
『そ、そうなんだ、ありがとタッキー。でもさ、ちょっと遅くない?』
『いや、あのー、えーっとね。ごめん!完全に寝坊です!許して…』
『おいおい…ま、いっか。来てくれたし…。』
『いや、あの!それでね?…』
そう言いながら、タッキーが進路を譲ると、奥からションが出てきた。
『もう帰ってきちゃったよ、こいつ』
『帰ってきちゃったじゃねえよ。お前にオファーした意味がないじゃねえか!どんだけ寝てんだよ、夜行性動物か!』
「す、すいません…』
そんなやり取りを見て、心の底からホッとした。
『ション、遅かったね。何かあったの?』
私が切り出すと、彼はとても深刻そうな顔に変わった。
『あぁ。悪いな。ちょっと色々あってさ。でも、全部わかったよ。過去でやれることは全部やって来た。あとは…ここでやることがまだ少し残ってる。だから、亜沙美、奏太また少しだけ手を貸してくれ』
『うん、分かった!』
『りょーかいー』
いつもなら、ここで彼は真実を話し始めるが、今回は何も話してくれなかった。ただ、一言だけ彼は呟いた。
『1番考えたくない結末になるかもしれない…
心の準備だけはしておいてくれ』
考えたくない結末…どういうことかその時の私は意味がわからなかった。
でも、後日私は思い知ることになる。ションの言葉の真意を。そして、その言葉に隠された悲しみを…




