3話 対面
土曜日。凄く天気が良い。暑さが和らいで、
かなり過ごしやすい気候になってきた。
爽やかで気持ちいい。
だからこそ…こんな日に…何故…?
『幽霊の調査なんだぁぁあ!!』
『ション!うるさい!ここ病院なんだよ?
中心で叫ばないで。』
『…はい。』
俺と亜沙美、そして横山香織さんは、幽霊に襲われたという金澤涼子さんの病室に向かっていた。
彼女は、不幸中の幸いと言うべきか分からないが、軽傷で済んだようだ。
これから彼女に、当日起きたことについて詳しく話を聞くところなのである。
『人が沢山。彼女の病室ってどこですか?』
『3階だったと思います。306ってところ。』
そんな話をしながら2人はどんどん先に行ってしまう。俺はかなり憂鬱だってのに。
そんな俺の気持ちをよそに、病室に着いた。
『ごめん、涼子?香織だけど。今って入っても大丈夫?』
『…どうぞ。』
返事を聞いて、俺たちは扉を開ける。
そこには、金澤涼子さんが力なくベッドに腰掛けていた。
『涼子…調子はどう?』
『うん、大丈夫だよ。食欲はまだないけど。』
『そう…。あ、紹介するね。この2人は、笠原くんと白石さん。今回の事件の相談に乗ってくれたの。今回の事件と…夏実の居場所を探してくれるって。』
そう言って、香織さんは俺らを前に誘導した。
『あの…こんにちは。白石亜沙美と言います。私たちもちょっと今回のことが気になって少しでも力になれればと思って調べているんです。もし良かったら、事件当日のこと聞かせてもらえませんか?』
すると、涼子さんの顔が曇り始めた。
『あの…あの時は、本当に怖かった…。
やめろって声がどこからか聞こえてきて…
あのおじいちゃんの声だった…。その後、夏実がいなくなっちゃって、後ろに強い衝撃が走ったの。気づいたら目の前が真っ暗になって、ここに運ばれてた…。』
『強い…衝撃?』
涼子さんが、こっちを見る。
やべ!口に出しちまった。
『あ、すいません。俺は、笠原詩音と言います。強い衝撃ってなんですか?殴られたってことですか?』
『え?う、うぅん。殴られたっていうか、痺れたっていうのかな?今まで感じたことのないような…』
痺れる…強い痛み…
『スタンガンか…』
『スタンガン!?』
亜沙美がこっちを振り返る。
『涼子さん。あなた、声を聞いただけで存在は確認してないんですね?』
『え、えぇ。確認はできてない…。声だけ聞いて、怖くなっちゃって…。』
間違いない。これは…
『これは幽霊の仕業なんかじゃない。生きている人物の仕業だ。』
俺の言葉を聞いて、香織さんが近寄ってきた。
『笠原くん。何か分かったの?』
『いや、さすがに分かってないですけど、この事件の入り口?みたいなものは分かってきましたよ。だから、涼子さん。聞きたいことがあります。』
『な、なんですか?』
『なぜあの日、資料室なんかにいたんですか?
しかも、あそこは長く使われてない。用事があるとは思えないんです。』
俺のその質問と同時に、涼子さんは俯いた。
『それは…言えません…。』
『え。言えないって…どういうことですか?』
『いや、その…頭が痛くなって…思い出せないから…。あの…もういいですか?あの時のことはあまり思い出したくないんです…』
彼女の様子が突然おかしくなった。何か…隠してる?でも、これ以上の情報は話してもらえなそうだ。
『分かりました。今日はこれで…。気が向いたら教えてください。あなたの…真実を』
そう言い残して、俺らは涼子さんの病室を後にした。
『話の展開が早すぎてついていけてないんですけど、どういうことですか?』
帰り道、香織さんが聞いてきた。
『簡単に言うと、これは幽霊の仕業なんかじゃないってことです。きっと何かが裏で動いている。そんな気がします。』
『誰かが計画したってことですか?』
『ま、まぁ、推測ですけどね。俺もまだまとめきれてないんで、また月曜にでも話しますよ』
『そうなの?じゃあ、月曜に必ず教えてくださいね?私ちょっと用事あるので、ここで失礼します。』
香織さんは、俺たちに別れを告げて駅に向かっていった。
俺は香織さんと別れた後、帰り道の途中で、亜沙美に気になっていることを伝えることにした。
『あの人…涼子さん。何か隠してるな。様子が明らかにおかしい。』
『え?涼子さんが?どうして?』
『当日の詳細をほとんど覚えてた人間が、当日の目的だけを忘れるなんて、不自然すぎないか?』
『うーん。まぁ、確かに…。』
『これはもう、幽霊騒ぎなんかじゃない。
立派な殺人未遂だ。』
『さ、殺人未遂!?じゃあ、老夫婦の強盗殺人は全く関係ないってこと?』
『いや、涼子さんがあの時言ってただろ?
「あのおじいちゃんの声」って。あれは、恐らく知り合いの人物を指してたんだろ。』
亜沙美が首を傾げていたが、俺は気にせず続けることにした。
『そして、あの資料室は老夫婦の思い出の場所だ。だから、涼子さんは老夫婦のことを言ってるんじゃないかなって思ったんだ。しかも、あの極限状態で、人の声を聞きわける事が出来るのは、かなり親しい関係なんじゃないか?』
『そっか…。確かにそうかもね…』
謎が多い…。これは、俺の"超常現象"を使うことになりそうだな…
『亜沙美。』
『戻るのね?過去に』
『あぁ。』
『じゃあ、香織さんから貰ってくるわ。事件当日の物。』
『いや。持ってくるのはそれじゃない。』
『へ?違うの?じゃあ何を…?』
『老夫婦の「思い出の品」だ。』
『え。老夫婦の?何で?』
『とりあえず、その老夫婦の家に行くぞ』
『え、いや?え?そんなの無理でしょ?鍵とか持ってないし…あっ、まさか…?』
『もちろん!その、まさかだ。』
俺はニヤリと笑って歩き始める。
この事件、どこに向かうのかは正直まだ分からない。ただ、鍵を握っているのは間違いなく殺された老夫婦だ。そして、涼子さんたちは恐らく深く関係している。
すでに俺の中に恐怖はなく、体いっぱいに探究心が広がっていた。




