1話 日常
人には秘密が必ずある。
そこには、悲しみ憎しみ痛み喜び怒りが入り混じって、詰まっている。
無理に聞き出せば、破裂し、2度と立ち直れなくなるかもしれない。
そんな時、人生に『潜る』ことができれば、秘密を溶かすことができるのだろうか。
『あ、あ、あぢいいい』
俺は、天を仰ぎ、今年の最高気温を記録した暑さを嘆いていた。
俺、笠原詩音は高校2年生。成績もそこそこ。運動神経もそこそこ。顔も…まぁそこそこ?
そんな平凡な俺には平凡じゃないところが1つある。それは、夢をみ…
『何独りでブツブツ言ってんの?ついに暑さでやられたか。』
…こいつはマジで平気でつっこんでくる。今は俺のターンだってのに。
こいつは、白石亜沙美。俺の幼なじみ。小学校から高校まで同じ学校。いや、本当は高校は違かったんだけど、俺が第一志望に落ちたから同じになった。基本、付きまとってくる。
『ねぇ、最近さ、『潜って』ないの?』
何気なく聞かれる。
『あぁ、ないな最近は。潜る必要もないしさ。』
『そっか。』
そう。こいつは知ってる。俺の『能力』を。
『ションってさ、超平凡なのにさ、そこだけヤバイよね。マジで漫画みたいな。』
『まぁなぁ、、』
こいつは、小学生の頃、俺の名前が上手く言えずに「ション」って呼んでた。それが何故か今も続いてる。
「バシッ!!!!」
背中にアホみたいな衝撃が走った。
『痛っ!』
『おはっすぅ!!』
『お前、力のメーターぶっ壊れてんのか、マジで。』
こいつは、滝田奏太。多分男友達で一番仲がいい。ただ、ひたすらうるさい。ハイテンション=奏太といっても過言ではない。
『今日もあちぃなぁ。夜なんかさ、汗が出すぎてさ、朝起きたらさ、溺れそうになってもんな、自分の汗で。』
『そっか。確かにそれはヤバイな、今度から気をつけろよ。』
『おい!!つっこめよ!ヤバイやつになっちゃうだろ。』
『大丈夫だよ、もうヤバイやつだから。』
『おいぃ、見捨てないでくれよぉ〜』
とまぁ、こんな感じで普通の高校生活を送ってる。割と楽しいし。
そんな時、奏太が切り出した。
『そういやさ、野球部の菊池知ってる?今のエース。』
『あ、菊池くん?知ってる!イケメンだよねぇ。』
急に亜沙美が割り込んでくる。
『そうそう。あいつがさ、なんか詩音に相談があるって言ってたぜ?』
『俺に?話したことないけどな。』
『ねぇ?』
亜沙美が小声で話しかけてくる。
『まさか、ションの能力知ってるんじゃない?あの時。』
『マジで?…まぁ、隠してるわけでもないんだけどな。』
『そっか。まぁ、そうだよね。』
『…おーい、聞いてる?』
奏太が覗き込んできた。
『あ、あぁ。ちょっと話を聞いてみるか』
俺は軽い気持ちで応えた。
でも、この選択が、俺の平凡な日常を非日常に変えるなんて思いも寄らなかった。




