機械化歩兵戦隊
ライナレス線でランドール遠征軍が必死の抵抗を見せる中、本国での戦況は悪化の一途を辿っていた。
セレス側の上陸部隊に対し、ランドールの本土防衛軍は、緩やかな後退を余儀なくされている。
北部地域一帯を、じわじわセレス側へと占領され、勢いが増すばかりだ。
ランドール側は、中央方面へ戦力を結集させつつあり、抵抗線の構築、周辺の村々の家屋を接収して防衛の拠点とし、国民達をより安全な後方へと避難誘導している。避難民の列が南へと伸び続けている。
遠征軍側と、戦力が分断されたとはいえ、本土防衛軍も必死だ。
通常戦力に加え、各地のギフト持ちも合流し、快進撃を続けたセレス側の進出を阻んでいた。
セレス上陸部隊と、ランドール本土防衛軍の攻防は長期化の様相を見せ、両軍共に状況を改善しようともがく程、大地に転がる屍だけが量産される。
遅れる事数日。
ランドール側の港に寄港した艦隊旗艦エルトダインより、アンリエッサとマネキン達が降り立つ。
トリアハン海峡海戦を経て、数隻の艦船をそのままランドール本国へと進出させ、新たな戦場を求める。
マネキン達は、海戦での姿とはまた別の姿となっている。
紅い軍服の上から、円筒形のヘルメットで頭部を覆い、胴体や下半身に鋼鉄板を装備し、駆動系を防護している。
また、一般兵と同じ様に小銃で武装し、一昔前の騎士の様な見た目だ。
「アンリエッサ、重い〜」
「視界が狭いよ、脱いでいい?」
「文句言わない、暫くそうしてなさい。これはナル様とイル様の希望なの、だから我慢して、貴方達の為よ」
不満を漏らすマネキン達に、有無を言わさずピシャリと言い放つアンリエッサ。機動力を大幅に落としてでも、防御力を上げる事を優先したのには訳がある。
海戦でランドール海軍を圧倒したとはいえ、未帰還の個体も多数いた。
単純に彼らの生存率を上げるのは、アンリエッサ個人の願いでもあった。
同時に小銃を装備させたのは、近距離のみしか攻撃手段が無いのは色々と不都合だろうと、彼女の独断である。
「こんにちは、私はセレス国防委員会より派遣されたアンリエッサだ。今回の大陸派兵への便宜を図ってくれる?」
「えぇ存じ上げておりますアンリエッサ卿。貴方の活躍の場を与えよと、上から矢の催促でして、貴方が加われば我が軍はより盤石な布陣となる。こちらからも重ねてお願いします」
「随分と素直ね、新参者は爪弾きにされるのが世の常だと思ったけど?」
「それは偏見ですよアンリエッサ卿、このセレスは平等を国是にしているのです。そんな輩はいないと断言しますね」
「貴方口が達者ね、一応礼は言うわ」
「そんな事はありませんよ。アンリエッサ卿のご武運を祈ります」
詰襟姿の麗人が、セレスの陣所を訪れ、上陸部隊に同行する許可を貰っている。先の海戦の立役者の彼女に、不満を述べる者は無く、労せず彼女の一団は行動の自由が認められた。海軍発令所より、手回しがあったのは明白であった。
なにより彼女の上司であり、主人である双子の機械人形の影が見え隠れする。
【ナル様、イル様の仕業ですか?】
【さあ、何の事かしらね貴方の人徳だと私は考えるけど、どうかしら?】
【機械人形に人徳も何も無いと思いますが、ご好意には私達が活躍する事で報いる次第です。吉報をお待ち下さい】
【うんアンリエッサ、待ってるよ!けど君のマネキンを武装させる考えは斬新だね、消耗品を長持ちさせるにはぴったりだよ!今から興奮が止まらない】
【恐縮ですイル様…】
『消耗品』か…。
通信を終えたアンリエッサは思考に耽る様に、大空を見上げている。
私も子供達も、オルミドールでさえも、双子の主人にとってはそんな認識か。
壊れたら修復するのではなく、使い潰す代替品をまた創造する。
その作業を繰り返し行い、何度でも過ちを繰り返すかの如く続ける。
じゃあ私は何者なんだろう?
闇雲に戦う態度が、双子の瞳にはどう見えているのかは知らない。
生前の記憶も曖昧だし、霞がかかっているみたいに朧気だ。
答えを探す旅を続けている。
そう自分に言い聞かせ、マネキン達が待つ場所へと舞い戻る。




