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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
狭まりゆく包囲網
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雨のち曇り

何の前触れもなく、戦場全域に大粒の雨が降り出し始める。


両軍共に銃火器が湿気るのを嫌い、戦闘を一時的に中断し、雨露を凌ぐ事に翻弄する。ティル遊撃隊とジェイコブ隊も、トアの保管庫へ繋がる勝手口より離脱し、今後の方策を思案する。


セレス側の物量の前に、少しずつ後退しているのは確かであり、戦死者の数が全体の四分の一を超える勢いだ。

まともに正面衝突していたら、この程度ではすまなかっただろう。


セレス側も天幕を張ったり、雨具を着用するなどして、厄介な通り雨が過ぎるのを、天を仰ぐ様に見つめている。

その間にも自軍の犠牲者達を回収し、野晒しにならない様配慮されている。



ティル達は離脱しながらも、セレスの軍勢を観察している。

油断なくギフトを発現し、黄色く灯る瞳が、爛々と発光している。


「あちらに打撃を与えましたが、こちらも相応の犠牲者が出ています。より一層慎重にしなければ。ジェイコブ大尉、なにか妙案はないでしょうか?」


「そうぽんぽんと策が思いつけば苦労しないさティル中尉、ミラー少佐が体調不良なのが悔やまれるな。正攻法が効かない相手なら、より邪道な戦術が求められるんだが…、どうしたもんか」


腕を組み向かい合いながら、ティルとジェイコブが悩みに悩む。

そんな2人に触発されたのか、機械人形達も、活発な議論を通信で行っている。


【戦力差が決定的ね、あちらは増えて、こちらは減る一方なんて不公平よ!セレスを一網打尽にできる兵器でも使いましょう、我慢は身体に悪いと思うわ!】


【個体名トア、随分と魅力的な提案だけどさ、この辺一帯を焦土にするつもり?私は賛成できないわ。なにより、味方を巻き込みかねない兵器を使用するなんて論外よ、却下だわ却下】


【弱腰じゃない個体名レベッカ、臆病風に吹かれるなんて。貴方らしくないわ、必要な犠牲と割り切ればいいじゃない。戦争なんだから仕方ない事よ】


【トア…、本気でそういう思考回路なら、私はお前を拘束してでも止めるぞ!何故始まりの個体が、お前を封印したのかもう忘れたのか?】


【さぁね、どうだったかしら】


【お灸を据えてもいいんだぞ?私がここに来た本来の目的は、貴方の行動の監視なんだから。暴走は許さない…】


みるみる険悪な雰囲気になり、決闘でも始めそうな2体の機械人形の間に、割って入るツェーレにロペス。

ツェーレはトア側に、ロペスはレベッカの側で諭す様に説得する。


【ちょっとトア⁉︎身内で争っている場合?私達が仲違いする暇なんてないわよ、敵はレベッカじゃない、セレスよ!】


【まぁそうね、そうよね…】


【レベッカも落ち着いてくれ、俺達の存在意義は戦う事だが、仲間同士での戦闘は明言されていないはずだ!】


【個体名ロペス、私は至って正常よ。どこかの思考に重大な欠陥があり、短絡的な個体とは違うつもりよ】


【へぇー、言うわねレベッカ】


【誰とは言ってないわ、誰とはね…】


不機嫌に唇を尖らせるトアと、真剣な眼差しのまま睨むレベッカ。

両者共に無言だが表情は険しいまま、普段の態度に比べどこかとげとげしい。


納得した訳ではないが、一先ずの危機を回避した事に満足気な2体。

ツェーレとロペスは秘匿回線で内緒話をしている。この先どうなるのか。


【前途多難ね…】


【そうだな】



木造建築と鉄筋建築が並ぶチグハグな街並みの保管庫の中で、通り雨が過ぎるのを、両部隊の兵士達が暇を持て余しながらに、束の間の休息を楽しんでいるようだ。


銃火器の点検や清掃をする者。

居眠りをして惰眠をむさぼる者。

酒ビン片手にほろ酔い気分な者。


ジェイコブとティルも、話し合いを一先ず区切り、食事休憩などしている。



機械人形であるトア達も、無為に時間が過ぎるのをだらだらしていた。


レベッカは時間潰しに、セレスの通信を傍受していた時、重大な案件を傍受する。


『…こちらセレス海軍、聞こえるかライナレス方面軍?我が艦隊はトリアハン海峡方面に接近せり、道程に問題がなければ3日程の航海の後、敵主力と会敵する』


『感度良好、ライナレス方面軍了解!艦隊の武運を祈る、幸運を!』


セレス海軍の主力艦隊が、ランドール占領下の湾岸地域へと接近中であるという悲報。

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