墓標
オルミドールとトア、機械人形同士の視線が絡みゆく。
お互いの武器の有効射程に入ると、武器を構えたままに、一定の距離で静止しているかのようだ。
トアは腰のホルスターから、二丁の拳銃を取り出し、オルミドールは身体の節々が割れて、それぞれの武器の銃口をトアに向けている。
「双子の実験体か、可哀想ねあんた」
「その表現は適切じゃないな、始まりの個体の御用伺い…」
「違うわね、これは私の意志よ。あんたらみたいな存在は、本来いてはいけないの。死人を無理矢理揺り起こすのは、道理に反するわ!だから…」
トアはオルミドールの頭部に銃口をあわせ、引き金に指をかける。
「粉々に破壊してやるわ!」
「そう簡単にはやらせないさ、私は私の主人たる、双子の機械人形に忠誠を誓う身だ。それにイトメとツリメの無念、先ずは君を壊して清算する」
そこからはお互い無言であった。
攻撃はそのまま激しい銃撃戦へ変わり、銃弾飛び交う死闘になってゆく。
トアは二丁の拳銃を撃ち尽くすと、保管庫より続々と武器を取り出しては、撃ち尽くし、また取り出すことを繰り返し行っているようだ。弾丸を装填する手間も惜しい。
拳銃に機関銃、滑空砲に戦車砲など、口径も種類もバラバラだが、あらん限りの猛攻をオルミドールに叩きつける。
オルミドールも、自身の身体に内包している武器をトアへと集中させ、彼女の攻撃を回避しながらに対応している。
移動しながら撃ち合う両者、破壊の爪痕がどこまでも続いていく。
「運動性も、俊敏性も高いか、なら周辺一帯を真っさらにしようか」
痺れを切らしたオルミドールは、身体の胴体部を開き、幾つもの飛翔体をトアへ乱れ撃ちにして放つ。
凄まじい速度の弾頭を、機関銃で端から順々に撃ち落とすトア。
「芸がないわね、お粗末な武器を使うなんて!それで誰を打倒するのかしら?気持ちを込めろ、死人め!」
彼らの戦いに割って入ると宣言したティルだが、あまりの戦闘の凄まじさに介入できずにいる。
せめてトアの戦い振りを最後まで見届けようと、彼女の無事を祈りながらに、離れた位置で狙撃銃を構えている。
爆煙で辺りが煙に包まれる中、トアは通常兵器では限界があると判断し、保管庫より更に強力な武装を取り出す。
電磁砲と呼ばれる試作機段階の兵器。
その長大な砲身が、驚異的な速度で撃ち出す弾丸の衝撃に耐えらず、数発の発射で自壊するという弱点もあるが、意欲的なものであると認識するトア。
あまりにも高価な使い捨て品だが、この際出し惜しみはなしだ。
「実験体、冥土の土産にいいものをくれてやるわ!星になりなさいっ!」
「…⁉︎」
先程より、更に巨大な飛翔体を身体より撃ち出した直後のオルミドールは、トアより強烈な熱源が迫るのを察知し、咄嗟に身を捩るが、弾丸が速すぎて完全には回避できずにいた。
撃ち出した飛翔体と、オルミドールの右半身のボディが大破し、弾丸は勢いそのままに戦場を横断してゆく。
そしてトアもまた、電磁砲を操作していた両手を、撃ち出した衝撃で駆動系や腕の接合部を損傷し、動作不良を起こして煙が噴き出している。
「くぅ…、保管庫の奥の兵器が、開かずの間に置いてあるのが理解できたわ。これを扱うのは危険すぎるわね…」
「…これも、一つの結果か」
オルミドールが、ボロボロの身体で力なく呻くのに、肩を庇いながらにトアが近づく。
「何か言い残すことはある?」
「…そうだな、君の言う通り確かに私達は死人さ。それは否定しない、ただ主人を失ったお前達機械人形もまた、一種の死人だろう?死人同士、不毛な戦いを行うなんて、悲劇だな…」
「詩的な台詞ね。私は嫌いではないわ、人だった時の貴方にも会ってみたかったわオルミドール…」
「それは、残念だったな…」
パンパン…
露出した脳や駆動系の中枢に、数発の弾丸を撃ち込むトア。
オルミドールの感情はわからない、彼の何も無い顔からは何もわからない。
満身創痍なのはトアも同様で、その場で崩れ落ちるのをティルが抱き締める。
全力を出し切った。
精根尽き果て、脱力したかのように。
「トア!トア大丈夫かい?」
「…ティル、ありがとう腰が抜けてさ、私は頑張れてたかな?」
「無茶し過ぎだ!勝負を急いでいたようにも感じたよ、あの機械人形は余程手強かったようだね…」
「えぇ、多少はねティル」
強がっているトアだが、ティルはそんなトアの虚栄心を見破っていた。
腕に包帯を巻く事が、効果があるかわからないが、トアに巻くティル。
「いつかの、私の真似かな?」
「…いいから、休んでいてくれ!」
甲斐甲斐しく世話を焼くティルに、トアはにやけながらに、瞳を閉じて暫くティルにされるがままになっていた。




