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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
暗中模索
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渡り鳥

マリーベル線都市区画コロン近郊。


セレスの大軍勢を侵入させまいと死に物狂いのランドール側と、今回の棚ぼた的な大攻勢に活路を求めるセレス側。


今はまだ数的優位はどちらにもなく、兵力数は拮抗しているが、力押ししてくるセレス側が戦場を支配しつつある。

オルミドールとクロエ達の先陣を、強引にランドール側が抑え込むのも限界が近い、ランドール側のギフト持ちも死力を尽くしているが、敵の大軍が河川の濁流のように迫ってきている。


マリーベル線本部へと繋がる街道沿いの、幾つもある関所を改修し、即席の砦として活用するコーウェン混成師団。


とりわけブルトブルクの生き残りである、元アントン・ジョシュアの兵士達の活躍振りが凄まじい。

一人十殺、その想いを体現するように、弾丸に怨念でも込めるようにセレス兵を射殺、あるいは刺殺している。


「ちっ、銃がジャムった…」


「その辺のやつ勝手に使えっ!」


「ごめんよあんたの銃と弾薬は、俺達が有効活用するさ!」


弾が無くなればセレス兵の死骸から武器弾薬を剥ぎ取り、そのまま使う。

それでも不足するなら銃剣を、さらにその銃剣さえも損失した者は、塹壕掘り用のスコップを使い、敵を撲殺している。


塹壕線を歩兵が抜くには、手に武器を持ち、原始的な白兵戦を繰り返す必要がある。しかも、一つの塹壕線をそれで陥落させても、パイ生地の穴の目の様に、他の塹壕線が立ち塞がる。


「マリーベル線後方に建設中である予備線が建造途中の現在、我らが師団の存在はマリーベル線の明日に繋がる!ここで敵を釘付けにする1分1秒は、自分達が流す血の一滴にも等しい!」


各戦域に通信にて檄を飛ばすコーウェン少将。そこにはかつての心配性の彼の姿はなく、仇討ちに燃える鬼と化した男の姿しかなかった。




「あれは、なんだ?」


「…、何もないようだが」


「雲の中の切れ目、戦闘機にしては小型すぎるだろ!敵の新型かっ!おいっ警報鳴らせ、爆撃がくるぞ!」


ランドールの一人の防空監視員が、遥かな上空に流れ星の様な、光の軌跡を発見するも、その相方は発見出来ずに、眠たげに瞳をこすっている。



「もうすぐ交代だ、職務熱心もほどほどにしないとな。見間違いだろ…」


「あれはなんだったんだろ?」


黒い光沢のある小型の戦闘機。

望遠鏡の脇を掠めた国籍不明機、その正体がわからなぬままに、監視員は防空監視所に戻りながらに空を見つめる。



その国籍不明機は、マリーベル線のとあるランドール野営地を、凄まじい速度で目指していた。

黒い光沢のあるバックパックを装備し、身を覆う外骨格に包まれたその姿は、小型の戦闘機そのものだが、戦闘機に比べ旋回能力も航続距離、積載能力さえも段違いのカタログスペックを誇る、鉄の怪鳥そのものであった。


垂直離着陸が可能で、初速から最高速度に到達するイオンエンジン、積載能力は数千kgにも及ぶ、機械人形で唯一単独飛行が可能な個体。


「マリーベルー♪マリーベルー♫」


ちぐはぐな音程で、お世辞にも上手いとは言い難い歌を唄う機械人形。

エンジンの爆音が、それすらも搔き消しているが、本人はお気楽だ。


「さてさて、噂のマリーベル線とやらは健全かな?トアが気張っているなら大丈夫かしら。始まりの個体に封印されてた問題児か…、過度な期待は禁物?」


「逢えば判るか…」


ティル遊撃隊の野営地上空に達すると、機械人形レベッカは急ブレーキをかけ、姿勢制御させながらに、ふわりと優雅に軟着陸させる。


夕飯の糧食を作っている最中に、耳をつんざくような爆音が鳴り響き、セレスの新兵器かと慌てたティル遊撃隊。

だが、ティルは高速で飛行する飛翔体に、以前トア達が着用していた、黒い軍服にあった円環の紋様があるのをギフトで辛うじて確認できた。


だとするとあの飛翔体は、機械人形絡み、トア達の関係者と推測し、武器を下ろすように周囲の部下に命じる。



やがてその飛翔体は、ふわりと軟着陸すると、駆動系の中心である場所が縦に割れ、一体の機械人形がずるりと這い出してくる。長身な紫髪の女性。


つかつかと自分に歩み寄り。

その瞳に自分はどう写っているのか?


「貴方がこの隊の責任者?性別は女性?男性?綺麗な顔だね、もしかして君も私達のご同類さんだったりする?」


「いや、自分は生粋の人ですが」


単純な興味なのか、好奇心を抑えようとせずに、マシンガントークをする女性型の機械人形に、たじろぐティル。

そこにトアが割って入る。


「ねぇ挨拶も無し?レベッカ…」


「ふふ、久し振りねトア。謹慎が解けて暴れ回っているみたいね、機械人形も増えて万々歳かな?せっかく先輩が不出来な後輩の為に、一肌脱いであげるのに。もっと嬉しそうにしてよ?」


「始まりの個体のおせっかい?」


「それもあるわ、それ以上に始まりの個体の私怨と私情もある。暫くはここで厄介になるから〜!」


「ちょっ、ちょっとレベッカ!」


仲が良いのか悪いのか。

2体の機械人形が、揃って野営地の奥に消える中、もう2体の機械人形達はぼっーと成り行きを見守っていた。


「私達蚊帳の外ね、ロペス…」


「…トアさんよりも先輩なら、どう呼称するのが正解かなツェーレ?」


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