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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
暗中模索
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試金石

翌朝、オルミドールは弾丸飛び交うランドールとの最前線へと赴く。

部下として、外套を被った2体の機械人形がしずしずと付き従う。


「オルミドール、私は何をする役目?」

「オルミドール、何をやる?」


フードの奥からややつり目気味な女性型の機械人形と、糸目の男性型の機械人形が無機質に問いかける。

どちらも色素の薄い金髪である。


オルミドールは彼等をツリメとイトメと名付け、ナル様は使い潰して構わないといったが、そんなことできそうにない。自分には彼等に愛着があり親しみもある。

自分の名前を呼びとことこと後を追いかける姿は、まるで軽鴨のようだ。


「まずはランドールの戦闘能力がみたいな、私と一緒にきてくれるかい?君達の実力もみてみたいからさ」


「了解した、戦闘だな!」

「理解、速やかに実行しよう」



そこへ現在進行形で、ランドール軍と戦闘中のセレスの部隊が、オルミドール達に待ったをかけていた。

特命を受けたとはいえ、ここからの突撃は、そのまま特攻になる可能性がある。


いくら勢いが衰えたとはいえ、ランドール軍は列強の中でも精強な軍隊を持つ大国だ。オルミドール達だけでどうにかなるほど甘くはないはずだ。

ベロニカ平原地域では、今日もまた平原を取り戻さんと、ランドールとの部隊との激しい銃撃戦が展開している。


「あんたら自殺なら他所でやってくれ、ここはご覧の有様だ。悪いことは言わん、この塹壕からは飛び出ない方がいい。今は我々が優勢だが、今日のランドールの奴らは気合いが違う」


前線の部隊長が、毛色の違うオルミドール達に遠回しに逃げろと促す。

他人を巻き込みたくないという、部隊長の親切心なのだろう。


オルミドールは黒い仮面の奥から、部隊長の顔を見ている。

これが彼等なりの優しさだと…


そんな中、塹壕潜望鏡で前線の様子を観察していた兵士が金切声を上げる。


「隊長っ!発砲光多数視認!」

「全員その場に伏せろー!ほらっ、あんたらもだ!腰から上がなくなるぞ!」


けたたましいまでのランドール側の砲撃に、セレス側の塹壕地帯は砲火に包まれ、幾つもの塹壕が崩落している。

不幸な兵士は直撃を受け、身体が爆散して血の滲みを大地に残している。


「被害状況知らせっ!生きてるか?」


「へーい部隊長、なんとか」

「土煙がすげーですよ」

「すっかり男前ですよ、部隊長…」


口々にぼやきながらも、接近中のランドールの部隊へ応射を始める兵士達。

これが前線の日常、その様子をまじまじと見たオルミドールは、砲煙の中へと姿をくらましてゆく。


「おい待て、あんたら戻れ!」


「駄目ですな部隊長、英雄願望の死にたがりは止まらないですよ」


ゆっくりと、確かな足取りで戦場へ向かうオルミドール達。それをただ、部隊長は遠くから見ることしかできないでいた。





オルミドール達は進む。

イトメとツリメを従え、ランドールの部隊へと接敵してゆく。


「オルミドール、先に行く…」

「またねオルミドール!」


イトメとツリメは外套の隙間から腕を出し、掌からは銃口を、腰の辺りからは様々な火器が飛び出している。


「おい、セレスの豚が突っ込んでくるぞ!養豚場に送ってやれ!」


「あいよ!」


ランドール側からの機関銃と小銃の銃弾が殺到するも、イトメとツリメは大きく跳躍することで回避し、回避しながらに距離をつめていく。


「なっ…、跳んだ⁉︎」


両腕を突き出し、掌からは榴弾を、身体からは擲弾をばら撒いていく。


辺りに血の匂いが濃くなる。

兵士達だった者が、辺りに散乱する。

内臓を零す者、四肢のもげた者、血溜まりに浮かぶ者など、死屍累々。


「かわした…!ぎゃあ」

「いたい痛い、痛い…」

「セレスのギフト持ちだ!ギフト…」


そんな兵士達が横たわる側を、イトメとツリメは歩いている。


「だらしない、だらしない…」

「お前達はその程度?抗いなさい、抵抗なさい。私達を満足させなさい」


「な、何を言っている?」


生き残りのランドールの兵士を見つけては、意味深な台詞を呟き、喜色を浮かべて処断していく機械人形。


人の生活の役立つ為に設計された機械人形が、今はその人に牙を剥く。

おかしな話だとオルミドールは考える。


自分達を創造した双子の機械人形であるイル様ナル様も、完璧な機械人形を創造すべく、庇護すべき人々をその歪んだ思想に巻き込み、今もその理想を追い求め続けている。

自分達はその試金石。


人の脳と機械人形のパーツを掛け合わせた存在、だからなのか時々、人であった時の思考が機械人形であるオルミドールの思考を妨げる時がある。


「自分達は完璧な機械人形ではないのかもしれない、イトメとツリメ、もちろん私もただの半端者さ」


それはオルミドールの考えなのか、人であった時の考えなのか、小さな呟やきはオルミドールの中で反芻される。

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