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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
暗中模索
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訓練日和

マリーベル線にてミラー少佐の手荒い歓迎を受けたティル中尉は、全身筋肉痛となり、三日三晩自室で呻き声を上げながらも徐々に快復しつつあった。

その重たい腰を上げながらに、遊撃隊の壮行式を行ったのがつい先日。


だが、その壮行式で一悶着あった。

遊撃隊の新規加入者達の多くは、傭兵崩れにゴロツキなど、犯罪者予備軍といっていい程に荒っぽい連中であり、元々いた中隊の兵士達との折り合いが悪く、協調路線をとるのは厳しかった。


決定的だったのは壮行式の途中で、ティルが演説中にも関わらず、そのティルと部下達を侮辱した事だった。


「指揮官は、男女の軟弱野郎」

「温室育ちの部隊」

「みなしごの部隊」


などなど数々の侮辱を述べる新兵達に、トアとツェーレが激昂し、その腐った性根を矯正するべく、一人一人に鉄拳制裁を下していた。

しこたまに殴りつけると恫喝しながらに新兵達を睨み、自分の考えを述べ二度と言うなと警告する。


「よく動く舌だな?その薄汚い舌、私が引き抜いてやろうか?」


「ティル中尉は私が尊敬する人なんだ、そんな人物を故意に蔑める言動は慎めよ、わかったか?」

「「返事は…?」」


「「よく、理解しました!」」


簡単にゴロツキ達を攻略した2人は、顔を腫らしたゴロツキ達から恐怖され、その態度は従順な仔犬の様になった。


意外に武闘派だからなあの二人は。

僕はもっと慎しみ深い方がいいなと、思いつつトアとツェーレを見やる。


悪は成敗したとドヤ顔のトアと、屑は処断すると真顔のツェーレ。


似た者同士だよなーと、思いつつ遊撃隊の壮行式は荒っぽい感じのままに、静かに幕を閉じた。




今や2個中隊規模となり、400名もの隊員を指揮する立場となったティル。

名称も遊撃隊となり、ますますその活躍を期待される中、遊撃隊としての新人事を発表していくこととなる。


各小隊を80名体制の分隊に纏め、それを5つに編成し、分隊長を指名する。

隊長のティルを筆頭に、副隊長トアの体制はそのままに、直下の隊員を増強し、互いに連携する枠組みを構築する。


番外分隊、隊長ティル。

第一分隊、分隊長トア。

第二分隊、分隊長髭面の准尉。

第三分隊、分隊長ツェーレ。

第四分隊、分隊長ロペス。


第一と第二分隊は、今まで一緒に戦ってきた馴染み深い部下達が多いのだが、第三と第四は、大多数が新参者達で構成されている新造部隊である。


また番外分隊には、元狙撃小隊の隊員を集中的に配置し、狙撃分隊としての役割を確立させる狙いがあった。

だが、自分の分隊だけ番外なのは変じゃないかと、疑問を口にするティルに、髭面の准尉とトアが揃って反論する。


「第一分隊ではダメなのかい?」


「ティル中尉の分隊は、特別な呼称にすると前々から決めていましたので、まぁ直ぐに慣れると思いますよ!」


「一応他にも髑髏分隊とか、血塗れ分隊とか色々候補はあったんだよ?それに番外ってなんだが精鋭みたいな響きだから、満場一致で決めたんだ!」


髭面の准尉とトアの熱弁に、ティルは渋々ながらに頷く。


それと他に気になる点がある、ツェーレとロペスの分隊だ。


訓練模様が不明だが、トア曰く順調らしい。隊員が増えた中、各分隊長に兵士達の訓練を委任する形をとる遊撃隊。


ティルと髭面の准尉は、教本に従ったマニュアル的な軍事教練。


トアは独自の考えからの、独創的な軍事教練を兵士達に施している。


そんな中で、兵士達の指導経験のない機械人形達は、同じく機械人形であるトアの経験を参考にしている節がある。

かつて見たトアの鬼教官振りを、ツェーレが体現しているように指揮棒が力任せに振られ、危険な眼差しで兵を統率しているようであると、又聞きした。



「お前達の背後には何が見える?そう、集団墓地だ!ここじゃあ毎日人が死ぬ。死が溢れているの!貴方達も直ぐに向こうにある、墓標の一つとなるわ」


「「そんなことはありません!」」


「ならば生きる努力をしろ、実績を示せ!お前達はまだまだ産まれたての子鹿と同じだ、私が半人前くらいにはしてやる。ゴロツキ共、いいな?」


「「はいっ!」」



危険な訓練模様を盗み見るティル。

ツェーレにしろトアにしろ、無論ミラー少佐もだが、優しさの裏に苛烈な別人格があるのではないか?


そんな事を考えていると、練兵場に居合わせていたジト目なミラー少佐の視線を感じ、慌てて兵士達の指導に没頭するティル中尉がそこにはいた。

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