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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
暗中模索
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再びのマリーベル線へ

論考褒賞の後、ランドール統合軍はその任務を終え、それぞれの任地へと戻るべく解散となり、各々が役割を果たすべく兵士達は戦場へと舞い戻る。


今回の叛乱鎮圧の際、ティル達と共同で反乱軍の制圧に参加していた、北方方面軍のイブリンとペンスが律儀に見送りにきていた。


「ティル中尉、お元気で!あんたとはまたどこか違う戦地でご一緒できると確信しているよ!困ったら連絡をくれると嬉しいな、えーと湿っぽい別れが苦手でな!…後はペンス爺さん頼む!」


別れを告げると一方的に立ち去るイブリン、ペンスは後ろ姿を目で追いつつ、ティルへと歩み寄り挨拶をしている。


「丸投げするなイブリン、すまんね中尉悪い奴ではないんだがな。達者でな、君達がいてくれて大分楽できたよ。またどこかで再会を祈っとるよ」


「ありがとう、イブリン中尉にペンス中尉。僕達もご一緒できて光栄でした、そちらもどうか気をつけて!」


「あぁ、あんたらもな…」

「もちろんです!」


朗らかに微笑むペンスとティル、がっしりと握手を交わし、違う方向の軍用列車に乗り込むと、最後にお互い敬礼をしてから解散となった。


随分と気持ちのよい青年だった。

裏表のない性格なのだろう、ギフトで彼を覗いても、澄み切った青空のように綺麗なティルの心に触れ、こちらの毒気が逆に抜かれたような気さえする。


それだけに心の覗けない例の2人に、髭面の士官を覗いた際に見たティル中尉の副官。以上の3名は要注意か…。

行動が予測できないのならば、こちらの意図せぬ行動をされると面倒だ。


「おーい、爺さん列車出るぞー?」


「今行くさイブリン…」


遠からず近い内にまた逢うかもな…。

そん時は宜しくな、中尉。





ティルは軍用列車に乗り込むと、マリーベル線が近づくにつれ言葉数も少なくなり、トアを含めた機械人形達や、髭面の准尉にしきりに心配されていた。


「中尉大丈夫ですか?顔色が悪いですよ、乗り物酔いですか?」


「ティル君、お菓子食べる?」

「中尉水を飲むといい、気分が落ち着き楽になると思うぞ」


「いや大丈夫さ、気持ちだけいただくよ。疲れが溜まっているのさ…」


ティルは気丈に振る舞い心配ないと繰り返すが、トアだけはそんなティルを覗き込み、まじまじと見つめてなにやら複雑そうな表情を浮かべている。


「…みんな落ち着いて、ティルの不調は身体ではないわ。もっと別の理由よ、私には理解できるわ」


「えっ…⁉︎」

ティルは意表を突かれて動揺したが…


「ティルは大仕事を終えて、燃え尽き症候群のようにやる気が削がれているのよ!まったく嘆かわしいわ…」


別の解答をするトアに、他のメンバーが納得顔なのがまたティルを気落ちさせ、得意気なトアがまた眩しい笑顔だ。


心配するのから、なにやら大雑把に励ます事へとシフトしたメンバー達。


「中尉、今は大事な時です!共に職務を遂行し、明日を勝ち取りましょう!」


「ティル君、君は孤独じゃないんだよ。周りには私達がいるから、あんまり思い詰めてはいけないからね!」


「ティル隊長、これからは遊撃隊として一層隊を盛り立てていこう!」


トアにより妙な雰囲気になった客室で、ティルはなんとか感謝の意を伝え、決意を新たにする士官の面々。


「あのー、うん宜しく頼むよ皆!」

「うんうん、そーよね!」


一行はランドール本国を離れ、海洋を越えて、懐かしのマリーベル線へ。

意気揚々と凱旋するティル遊撃隊と、補充要員として本国から動員された兵士達、それを留守役としてマリーベル線で待っていた兵士達が暖かく迎える。


プラットホームの端では、仁王立ちの少佐がみえる。その傍らには、軽薄そうな顔のジェイコブ大尉が手を振る。


「ティル中尉只今戻りました!」


「…まずはお帰りティル、昇進おめでとうと言いたいけど、私が考えてる事わかったりできるかな?」


静かな怒りがひしひしと伝わる。

状況を察知した髭面の准尉は、ジェイコブ大尉の側に避難し、トア達は不思議な顔をしながらに二人を観ている。


「…とりあえず私の部屋に来て、それから練兵場にふん縛っていくから。ふふ、軍学校時代の愉快な授業を思い出させてあげるからねティル」


痛い。

物理的に腹部が痛い。

先程からミラー少佐がギフトの力で、ティルの脇腹をずっとつねっており、次第に涙目になるティル中尉。


「わかりました!」


「態度がいいわね中尉。けど私がそれで赦すと思わない事ね…。立場が偉くなると、指揮官の責任もそれだけ増す。今日はそれを懇切丁寧に教えてあげるわ」


「はいっ!お願いします!」

「結構、ジェイコブ大尉!兵達の受け入れと割り振りの仕事頼むわね。私は、少々中尉と席を外すから…」


それから半日程ティル中尉の悲鳴が練兵場に響き渡り、ミラー少佐の本気の罵声が轟く修羅場となる。



「なんだその屁っ放り腰は!それでお前は何と戦うんだ?セレスはそんなに甘くはないぞ、貴様は何だ中尉っ!」


「自分は、…ランドール、陸軍、…所属の中尉で、あります、少佐殿…」


「腹から声を出せ中尉!」

「はいっ!」


新兵達は新任の士官が、着任早々なにかヘマをしたのかと勘繰り、それがまさか自分達が配属となる遊撃隊の隊長であるとは夢にも思わなかった。


「ジェイコブ大尉、ティル中尉生還しますかね?自分は心配ですよ…」


「まぁなるようになるさ、少佐なりの一種の愛情表情だよ」

「苛烈すぎませんかね?」


ジェイコブ大尉はタバコを吸いながら、髭面の准尉は衛生兵を呼ぶかどうか悩んでいる最中であった。

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