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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
本国動乱
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突入

トアがティル達の突破口を作る為、砲兵隊に一点集中で砲撃するように、檄を飛ばしている。

トア自身も保管庫より鈍重な野砲を持ち出し、盛んに砲撃に参加して彼女なりの援護をしている最中だ。


「反乱軍の塹壕陣地帯に穴を開けなきゃならないの、砲撃は散らさず的を絞って!部分的でいい、崩しなさい!」


「…わ、わかりました!しかしどれだけ砲撃を続ければよいのですか准尉?」


「決まってるわ!相手が後退するその時までよ、貴方達も戦功を立てたいでしょ?なら相応の働きをみせろ!」


「了解、…しました」

「あら?不満そうね、まさか君反乱軍に加担しているのかな?もしそうなら由々しき事態だわ、看過できない。愛国心のない軟弱者はいらない、態度を改めないと私が君を反乱軍として処分する」


腰のホルスターから拳銃を抜き放ち、撃鉄を上げ、兵士を恫喝する。


「へ、できるかな?」

「出来ないと思う?」


冗談ではなく、彼女の瞳は本気だ。

危険と判断した同僚が、不服そうな兵士を庇いながら、弁明する。


「すいません准尉、俺からもきつく言いますんで、勘弁してやって下さい。ほら、こっちだ!」


「…ふん、俺は別に悪いとっ…」

「で、では准尉!我々は持ち場に戻りますので、これにて!」


「なーんだ、つまんないな…」


高飛車にもみえるトアの態度だが、この場にトアより上の階級の者はいない。

結果としてトアを増長させる契機となっているのは言うまでもなく、トアは指揮官ごっこを満喫している。




激しい砲撃の中、ツェーレとロペスが反乱軍へと迫りゆく。

ツェーレ達のやや後ろから、狙撃銃を片手にティル達も続く。


僅かに顔を上げた反乱軍の兵士を的確に狙撃し、抵抗を排除するが、反乱軍の抵抗はなおも続く。

小銃に機関銃、榴弾、あらゆる火器で立ち向かう彼らの顔に諦めはない。


彼らはドミニク大佐とグレゴリウス中佐に賭けた決死隊だ。

明日を信じて戦う彼らの表情は、どこまでも必死であり、しくじれば彼らの身内にも責任を追及される危険がある。


そんな彼らを射殺するのに、僅かながら心を傷めるティル少尉。

唇を噛み締める少尉の顔は、悲壮感に溢れているようだ。


「だが、僕はこの道を行くと決めた!お前達の意思は、僕が引き継ぐ!だからもう降伏してくれ…頼むから」


パン…

また一人の反乱軍の兵士を撃ち抜き、塹壕陣地へと沈みこんでいく敵兵。

まだ学生といってもいい、歳若い少年兵を感慨深く眺めるティル。


気丈に振る舞っているが、髭面の曹長も随分と神経をすり減らしている。



そんな中、ツェーレ達が奮戦している。

機会人形としてのアドバンテージである、圧倒的な機動力を生かして、縦横に動き回り、敵兵を翻弄する。


ツェーレの黒いククリが、敵兵を惨殺し、ロペスも死角をカバーするように立ち回っている。塹壕陣地内へと突入する。



「確固たる意志を持つ者達は、どんな事情であれ高潔なの。そういった奴等は、大義という妄執に囚われ、個人ではなく全体で戦うのよ。だから手強い、故に侮り難い存在ね。素敵よねー」


「総じて諦めが悪い奴等が多いと俺は思うがね!まったく、手癖が悪い!」


クスクス嗤うツェーレに渋面のロペス。

ツェーレは反乱軍兵士にククリを突き入れ、動脈を切り裂き、脳をかち割り、身体を両断していく。


塹壕陣地内はグロテスクな光景が広がっている。兵士の四肢が散らばり、臓腑は飛び散り、この世の地獄が広がる。

塹壕陣地内の端へと追い詰められる反乱軍兵士達、隊伍を組むが、ツェーレ達の機動力に抗いきれず、銃弾が当たらない。


「くるんじゃない、来るな!」

「次弾装填、次弾装填!」

「着剣しろ!近接戦闘用意!」


ヒタヒタヒタ…。


人外達の足音が響き、ゆっくり近づく。

反乱軍兵士は恐慌状態でツェーレ達に白兵戦を仕掛けるも、個別に討ち取られていく。


「正義だの大義だの、私達とは別の行動理念!彼らの命題は何かしらね?とても興味深いわ、どうして抗うの?ねぇ?」


髑髏のエンブレムを掲げた、青い髪色を三つ編みにした小柄な女性。

そして相方の灰色の髪色をした大柄の男性が、距離を詰めてくる。


連絡線からの増援は大柄の男性に潰され、目の前の女性は淡々と我々を処分している。

悪い夢でも見ているみたいだ…。


きっとあの女性はギフト持ちかもしれない。反乱軍兵士が啖呵をきる。


「なんなんだよお前らは!どうして暗君クリフに従うんだ、恥を知れっ!」

「正義は我らにあり!」


「別にランドール公国の為ではない、我らの行動原理はナノローグ様に帰結する」


「そういう事よ、さよなら…」


手早く生き残りを片付け、塹壕陣地内で息のする者はいなくなった。

一部隊が文字通り全滅する。

ツェーレ達が突入してこれで3箇所目。



そんなツェーレとロペスに、人型の岩の塊が突撃していく。

イブリン達の戦線よりも、侵攻速度の速いこの部隊に狙いを定めたグレゴリウス。

グレゴリウスの背後からは、数々の戦線を渡り歩いた猛者が音も無く続く。


ティル中隊の兵士がグレゴリウス達に気づき、盛んに応戦するも、彼のギフトの前では豆鉄砲と同じである。

応戦してきた兵士達を討ち取り、この侵撃を行っている中心人物を探す。


そして見つけた。

黒いククリに血を滴らせながら、こちらを観察している青い髪色の兵士を…。

一見すると可憐な乙女だが、彼女の瞳はまるで空虚そのものであった。


彼女も好敵手を見つけたと、喜色の笑みを浮かべ、こちらに近づいてくる。

ククリの先にある反乱軍兵士の身体のパーツを投げ捨て、ゆっくりと。

もはや正常な精神状態ではないのだろう、彼女の身体は血塗れだ。


「貴方が反乱軍のギフト持ちかしら?私はティル中隊所属のツェーレ、貴方達の殲滅の任を受けてこの地に来たわ」


「ふん、あんたのような歳頃の女性が戦場に魅了されるとはな。憐れなことだ、私はグレゴリウスだ!引導を渡す、狂犬め!」


全身を岩の様に硬質化させ、大地を耕しながらにツェーレに迫るグレゴリウス。


ククリでは分が悪い。

そう判断したツェーレは、トアの保管庫より拝借した武器を手にとって構えている。


【ツェーレより各機へ、反乱軍のギフト持ちと遭遇、これより交戦を開始する】


【ロペス了解。カバーに入る。】


【トア了解。ツェーレ単体での対応が不可の場合、即時離脱し情報を流してほしい。現在そちらへ移動中】


機械人形と、反乱軍のギフト持ち。

異なる大義を持つ両者がぶつかりゆく。


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