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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
本国動乱
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混迷する戦場

ランドール南部地域。

そこには集結した統合軍が、足並みを揃えて反乱軍を見据え、通信にて頻繁に情報のやり取りを行っている。

長閑な南部地域は、今やランドールの部隊同士が争う、不毛な土地になりつつある。砲弾で抉れた大地に、銃弾によって崩れた家屋、踏み荒らされた田畑…。


南部地域に住んでいた住民は、巻き添えを恐れて、付近の山に隠れ潜んでいるが、犠牲者はゼロではない。

国民を護る軍隊が、護るべき国民達を戦いに巻き込むという理不尽な状況だが、そんなことは関係ない。


セレスと戦い続けてきたランドール遠征兵達にとっては、戦いは生き甲斐であり、日常的なものだ。

先遣隊の部隊が、中央軍が惨敗した因縁の地である、南部方面軍司令部一帯に攻撃を開始したのはすぐてあった。


『我、ランドール南部二到達セリ、コレヨリ反乱軍鎮圧ヲ敢行セリ』


『各部隊突入セヨ!突入セヨ!』


『ランドールリーダーヨリ先遣隊各隊ヘ、臨機応変ニ対応シ、敵ノ動向ニ留意サレタシ!ランドールノ魂ヲミセヨ、公国ノ荒廃コノ一戦ニアリ!』


『102連隊了解』

『103ミギニオナジク…』

『104連隊、アイサー!』

『105、突貫ヲ開始スル!』


……

各部隊が陽気に応えて、敵陣に突入し、相手の出方を窺っている。

反乱軍の拠点である、南部方面軍司令部をぐるりと囲む塹壕陣地帯は、五芒星の様な形であり、内部に向かうほどに、蟻の巣の様に細分化され、隣り合わせの塹壕線が重なりあっている。

陣地を設営した者の、性格の陰険さが塹壕線に現れているようだ。


人為的に角度をつけ凸凹しているのは、一見すると攻めやすそうだが、緩やかな傾斜を利用した塹壕線を抜くのは、けして容易ではなさそうである。

反乱軍の射線を上手く隠蔽され、どこから撃ってくるかわからない。

土砂を厚く盛り、銃窓を幾つも設け、反乱軍は機関銃を巧みに操りながら、統合軍側の兵士達を蜂の巣にしている。


角度が折り重なっている攻めやすい箇所は、むしろ反乱軍側の狩場であり、中央軍の白骨死体がそれを物語る証拠となって、無惨に転がっている。


統合軍側の兵士達が攻め寄せようにも、反乱軍側は頑強に抵抗し、なかなか攻略が進まないが、談笑などしてむしろ楽しげな様子である統合軍兵士達。

顔に銃痕のある者や、火傷で顔の崩れた者、身体にある古傷をゆっくり摩る者達が談笑しあっている。セレス遠征兵の中でも、古参にあたる部類の者達。


「堅いな、だがそうじゃないと。ようやくセレス達のレベルに近づいてきたんじゃないか?忌まわしいベロニカの塹壕地帯に比べたら、可愛いもんだ…」


「褒め過ぎだろ、まぁ訓練兵達の浅知恵では無理だな。首謀者達の入れ知恵だろ、どうやって攻めるか?」

「そうだな、側面から多角的には?」


「あんまり時間かけると、ギフト持ちに美味いところもっていかれるぞ!」


銃弾の雨を駆け抜け、弾など当たらないと言わんばかりの行動力で前進する。

遮蔽物のある場所に潜み、息を整えてから、再び前進を繰り返してゆく。

反乱軍側の銃撃の間隙を、上手く縫い、肉薄攻撃で反乱軍側を圧倒する。


「おい、手榴弾を投げ入れろ!あの煩いトーチカを黙らせてやれ!」


「了解、了解ー!」


遠征の数々の戦闘経験で覚えた軽快な動きで距離を詰め、塹壕陣地帯の前方に設けられたトーチカ群を、順々に爆破する。


だが、制圧した筈の塹壕やトーチカからは、無数にある連絡線を活かして、反乱軍の補充要員が送り込まれ、敵の攻撃が止まない。


「だっー、しぶとい!」

「こいつら、諦めがないのかよ!お前ら気合い入れろ、舐めてると俺達がやられる」


身動きがとれないでいる統合軍。


しかしながら、やっとの思いで攻略した反乱軍の塹壕陣地のすぐ側で、轟々と爆炎を上げる火柱が見える。


その光景を見て舌打ちする統合軍。



「あーあ、やっぱり来たよ。お前らがノロノロしてっからだよ!俺達の役割は、残飯漁りに変更だな」


「いいじゃないか残飯漁り…」

「よくねーよ、脇役だ!」


ティル中隊以外の、ランドールのギフト持ちが戦場へと介入してゆく。

反乱軍掃討へ…






ティルは戦場を見回す。


反乱軍の籠る塹壕陣地帯各地からは、火の手が上がるが、それはあくまで外周部だけの話で、中央部はいまなお健在。

塹壕陣地帯を結ぶ連絡線から、反乱軍の兵士達がひっきりなしに行き交う。


いくら外周部を攻略しても、攻略した部分を反乱軍が包囲して、再び取り戻す。

そんな光景があちこちで見られる。


反乱軍の主力である訓練兵達は、度重なる実戦経験で、動きが洗練されている。

寡兵である反乱軍が、戦力を集中運用しているのが見てとれる。


曹長は双眼鏡で検分し、トアは先程から自身の保管庫で、効果的な武器はないかと、うんうんと唸っている様子だ。


「塹壕陣地帯の一角を陥落させたところで、他の塹壕から戦力を投入する反乱軍の戦略を崩さないと、自分達以外のギフト持ちと協力して事にあたるしかないか…」


「迷いは消えたかい?ティル君」


ギフトの異能で戦場を分析するティルに、ツェーレが問いかけるも、彼の瞳はどこまでも澄み切っているようだ。


「あぁツェーレ、今は随分と気持ちの整理ができて、落ち着いたよ。君の助言に救われた気がするんだ、ありがとう!」


「いいえ、ティル君」

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