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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
ブルトブルク攻勢
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保管庫の中へ

ティルは対物ライフルを手に、匍匐姿勢で対象に標準する。

スコープを外し、自身のギフトで底上げした視力で数キロ先の相手を見定め、弾丸を装填してゆくティル少尉。

瞳の色は黄色に光、仄かに発光しているかのようであった。


ガスマスク姿の兵士達と、同じ顔の兵士達の中心に、セレスのギフト持ちと思われる白衣の女性を捉える。

女性は静かに佇みながら、人の良さそうな表情をしているが、なにかその表情にティルは不安を覚える。


引き金の指を動かそうとしたその時、ティルの視界が霞み、身体が変調をきたしているのに気付く。


「ぐっ…、視界がぼやける…⁉︎」


ティルだけでなく、中隊の他の兵士達も四肢が痺れ、身体に異常がみられる。

地に倒れ伏し、それがもう1人のギフト持ちの攻撃であるのに気付くのに、そう時間はかからなかった。


機械人形達は、現状のティル達の様子を観察しながらに、応戦しながらも、パルス信号により通信を繰り返す。

今後どうするかという議題で。


【敵のギフト持ちと呼ばれる異能者より毒性攻撃を検知、大気中の広範囲に、即効性ではなく、遅効性の神経毒を撒布している模様。意図は不明だが、こちらのギフト持ちを、生け捕りにするのが目的の可能性有り。撤退を強く推奨する】


【個体名トア、抗戦は無意味か?我々だけでも困難ではないずだ。貴方の保管庫から、より広範囲領域殲滅兵器があったはずだ。それらを使えば容易のはずだ…。被害度外視で実行すれば、この困難な戦局はすぐに覆るはずだ】


【その意見は現実的ではない、個体名ツェーレ。我々のいる中隊にも不可避な犠牲がうまれる。それは望ましくない、個体名トアの提案がより現実的である。戦闘不能者多数の中、即時の戦線離脱に私も賛成である】


【ではどのような方法で?】

【私の保管庫に、中隊各員を纏めて送り込み、敵の攻撃を煙に巻く。ほとぼりが冷めるまで待機、それであの毒物精製のギフト持ちの対策を協議する…】


【概ね了解した、だが時間稼ぎが必要だ。人選はどうします?】


【私と個体名ツェーレが敵を引き付ける、個体名ロペスは中隊各員を一箇所に集めてほしい。集まり次第、私に短文通信を実施するように…】


【個体名ロペス、了解した】

【同じく個体名ツェーレ、右に同じ】


【個体名トアより各員、行動開始!】


短い時間に、激しい意見の応酬をする機械人形の三体、意思疎通がタイムラグ無しで実行できるのは、この人形達の強さの一つでもあった。

なにより毒物の効果が薄い三体がいたのは、中隊の命運を分けた。


ロペスはティル中隊の負傷者を、茂みへと移す作業にかかり、トアは機関銃で引き続き応射し、ツェーレは雲霞のごとく迫るハロルド中尉達に相対する。





ハロルド中尉は怪訝な顔を浮かべる。

敵の攻撃が止まない、抵抗は限りなく減ったが、この毒霧の中動けている敵がいるのはおかしい。

敵のギフト持ちと思しき人物を捕縛して、後は殲滅それで終わりのはずだったのに、敵はなんなのか?


「俺のようなギフト持ちなら動けるのは納得なのだが、敵は人か?」


「わからない…。クロエの毒は確かに効いてるはずだが、目の前の奴は?」


「生け捕りにすればいいさ!」

「それもそうだね、そうしよう!」


機関銃の嵐のような猛射の中、前へ前へと敵陣に迫るハロルド達。

そんなハロルド達と近接戦闘を繰り返す小柄な女性、息も切らさず大振りなククリで、既に何体ものハロルド達を屠り続けているランドールの兵士。


俊敏性が尋常ではなく、まるで飛び跳ねるかのように戦場を動き回っている。


「よくやるな、ランドールの兵士。一応名前を聞いておこう、勇者の名前を聞いておきたくてね。俺はセレス中央軍所属のハロルド中尉だ」


「…ツェーレ伍長よ怪人。何人倒せばあんた死ぬのよ?いい加減飽きたわ」


「つれないねぇ伍長、人生は面白おかしく生きないと。彩りに欠けてつまらないだろうよ。さぁ続きを、伍長!」


【一時後退だ、個体名ツェーレ。作業が完了した、マークした地点に後退し、こちらと合流せよ!】

【わかった、了解よ】


踵を返すツェーレ伍長。

不信に思ったハロルド中尉に、ツェーレが捨て台詞を吐く。


「ハロルド中尉といったかしら?縁があったらまた会いましょう、仲間の容態が心配なんでね。またね…」


瞬間脱兎の如く後退するツェーレ。

一足飛びにみるみる距離をあけ、ハロルド中尉が直ぐさま追うも、行方をくらまされてしまう。

そればかりか、機関銃の掃射も止み、辺りにいたはずの敵軍の気配がない。


「参ったな、これが噂のベロニカの亡霊か…。霞のように消えたよ、帰ったらクロエが怒鳴るだろうな…」


ハロルド達は、敵のいない陣地を見回した後、ゆっくりと後退する。

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