表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠らずの都の住人  作者: 同田貫
掲げし旗
150/160

裁きの光

レベッカは機体をホバリングさせながら、アンリエッサの鉄巨人へと標準を合わせる。衛星砲と自分自身をリンクさせる為、膨大な情報量の海に溺れかけるレベッカ。キャパオーバーで全身が熱を帯び、オーバーヒート状態ではあるが、発射シークエンスを強引に省略してどうにか耐えている状態だ。


【緊急照射の為、通常の発射シークエンスa101〜j505まで簡略化。当該地域における目標の設定、個体名アンリエッサのアイアン・ヒュージ。熱量と光量を下方修正、仰角のピント合わせ…】


ジジ、…ザザザ、ジジジジ…


【警告、個体名レベッカにエラーを検知。当作業の続行後には、致命的な障害が残る可能性あり。警告、警告!】


衛星砲からの事務的なアナウンスが、レベッカの頭中に響く。

当然だ、本来なら始まるの個体が使う様な代物だ。私が無理矢理揺り起こして、使用しているに過ぎないんだ。

どんなエラーが出るかは、神のみぞ知るところだろう。いや、創造主のみぞ知ると訂正するべきだね…。


【衛星砲充電続行、チャージ80パーセントでの発射を承認。最終ロック解除、衛星砲内の圧力よし、炉心融解なし。続けて制動操作、トリガーを個体名レベッカに同期。発射カウントダウン…】


【警告!警告!個体名レベッカに重大なエラーを検知。警告!警告!個体名レベッカに重大なエラーを検知!当作業の中断を強く推奨!推奨!推奨!】


『3』

煩いな、細かい奴は嫌われるのよ?

私はトアに啖呵切ったんだから、無茶を通して道理も通すの。私の凄さを再認識させてやるんだから…。


『2』

なんだか身体が熱いな…。

衛星砲を一人で制御したから、当然といえば当然か。けど怖いとか怯えはない、なんだかすっきりした気分。


『1』

頭が酷くクリアだわ…。なんで?


そこでレベッカの意識は途切れた。

自身が操縦する黒い流線形の戦闘機からは、もうもうと煙が上がり、小規模な爆発を繰り返しながら地上へと墜落する。


衛星砲から極大の光が降り注ぐ、光の奔流はその照射された場所に、逃れようのない破壊を生み出していく。

鎧姿のマネキン達は融解し、パーツは光に触れた瞬間から炭となってゆく。

アンリエッサもまた、自分の操る鉄巨人のパーツが焦げてゆく、ボロボロとその身を擦り減らしている。光から逃れようと手を掲げても、その腕ごと光は貫通してゆき、遂には身体を構成していた鉄の瓦礫は残らず削げ落ち、アンリエッサの身体も頭と胴体を残して溶けた。


国門の前にどす黒い大穴を開け、その中心に力無くアンリエッサが横たわる。

敵の弩級兵器か何かだろうと推測し、アンリエッサは静かに目を瞑る。

自分を破壊する敵の機械人形が迫る中、せめて彼女の、メイの幸福を祈ろう。


ガチャリと拳銃の音がする。

止めを刺すべく、自分の頭に狙いを定めているのだろうと…。

終わりは唐突にやってくるのねと、どこか自嘲的に笑うアンリエッサ。

だが敵の、ランドールの機械人形からは意外な一言が投げかけられる。


【勝負ありねアンリエッサ。けどそのメイって子は、貴方にとってどんな存在?興味本位だけど教えてよ?】


【…絶好の好機を逃す気かしら?慈悲なんていらない、私を壊したいならさっさと壊せ!憐れみなんていらない!】


【…教えて、大事な人なの?】


【……】

【そうね、私を必要としてくれる大事なパートナー。あの子の家族は私だけ、天涯孤独になるのは避けたいわね】


【そう、なら貴方はその子の為にも生きなさい。但しもうヒト殺しも、私達の邪魔をしないのが条件よ?どう?】


【……私はこんな身体だ】


【腕のいい機械人形技師がいるの!それで問題は解決よ、どうかな?貴方は五体満足で、あの子の元へ返すわ。もしも罪の意識があって自分を許せないのなら、その意識が薄れるまで私達の国の復興事業に付き合って!】


【変な機械人形ね、…本当、変。けど嬉しいよ、ありがとう恩にきる。約束は必ず果たすと誓うわ…。生き残りのマネキン達にも、寛大な対応を求めるわ。あの子達は私の家族であり、同胞でもあり私の部下だから…】


アンリエッサの鉄巨人が崩れ落ち、残っていたマネキン達も、アンリエッサが助命されたと聞き、自らの意思で武装を解除してゆく。国門攻防の趨勢は決し、セレス側が抗う力はなくなった。

それからフランクリン国門内部に侵入したランドール解放軍が、国門を奪還するまで、さほど時間はかからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ