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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
掲げし旗
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禁忌の光の話

国門内に侵入を果たそうとするランドール解放軍、現状では国門の分厚い壁を突破するには火力が足らない。

そんな兵士達の歩みを止め、国門の外で釘付けにするセレス占領軍。


撃てども撃てども、敵が減らない。

けれども眼前には敵が溢れている、壁の内側にはどれだけの兵力が潜んでいるかは判らないが、短期決戦に賭けるランドールは進むしかない。

長期戦になれば、増強されたセレスが息を吹き返す可能性さえある。


そんな苛立ちを代弁するかの如く、ランドールのギフト持ちが果敢に攻めたてる。ジェイコブ大尉は神出鬼没に敵を翻弄し、ミラー少佐は防御線を強引に食い破り、遠征初期から参加している古参兵達と最前線を押し上げている。


「塹壕を奪え、奴らの連絡線を遮断しろ!敵も無尽蔵じゃない、必ず勝機は転がっている!押し潰せっ!」


「勇ましいですな少佐!凛々しいお姿に、我々も役立たねば!野砲を持ち込め、セレスの奴らのでもいい!何でも使え、味方を誘導しろ!」


「機関銃班弾幕張り続けろ!」


「小銃斉射3連!目標右外壁!」


前線に現れたミラー少佐とジェイコブ大尉達、その彼女達の名前はセレス側にも当然認知されており、憎むべきランドールの走狗として、懸賞金までかけられている存在であった。

攻撃の密度が少佐達に集中する中で、ロペスにツェーレもその後に続き、支援攻撃をしている最中であった。


エンデ型の機械人形達を引き連れ、髑髏のエンブレムを掲げた者達が、戦場を疾走している。弾丸や砲弾に怯まず、セレスの赤旗目掛けて突撃を繰り返す。

最初は自分達の命題探しの、あくまで通過点として身を寄せた国であったが、加勢している内に、情の様なものがいつしか湧いたのだろう。


「何だか不思議ねロペス、創造主様達の考えに似るのかな?昔は眠らずの都だけが私達の国だった、けど今はランドールが私の眠らずの都なの…。流れ者の私達に親身にしてくれた恩もある、ここで逃げたら女が廃るわ!」


「遊撃隊のメンバーとして同意だなツェーレ、俺達は恩返しの途中だ!まだ全て返しきれていないんだ、利子を数倍にして贈ってやらなきゃだな!」


「…えぇそうねロペス」


「エンデ型突撃用意っ!あの塹壕に突っ込む!目障りな赤旗を奴らの血で染めろ、俺達の流儀を教えてやれ!」


塹壕内で血飛沫が上がりセレスの兵士達がのたうち周る、空気と血のあぶくを吐き出しながら懸命に生きようとするも、ツェーレ達がそれを終わらせる。

突撃力が尋常ではなく、てらてらとした赤黒い血液が散乱している。


「糞っ!糞っ!ランドールの新手のギフト持ちか?応援はどこだ!」


「衛生兵ーっ!衛生兵ーっ!」


「弾掻き集めろ!蜂の巣にしてやれ!各自自由に撃て!殺しちまえ畜生!」


阿鼻叫喚の地獄。

叫んでも泣いても、首切り包丁の様な大振りなククリから逃げられない。

ツェーレの片手には、凄惨な末路を遂げた同僚の首が握られている。

ゆっくり近づくツェーレに、銃弾が殺到するも、実像がぼやけて当たらない。

足音だけが近づく。


「ひっ、ひぃぃ!寄るな化物!」


「私はランドールが好きなの、だからお前達を追い出すと決めたの…。あんまり五月蝿くしないで?諦めも肝心よ」


やがて彼女の周りの声は消え、異様な静けさだけを残して次なる獲物を探す。兎狩りの様なワンサイドゲームを…。


一方のトアとティル、髭面の准尉は、離れた場所より砲撃支援をしており、高射砲を水平射撃して直接国門を狙う。

本来なら戦闘機を射抜くそれを、通常の砲撃に使用する。

大きな弾痕を壁に残すも、壁を貫通するには威力が足りない。


「やっぱり堅いねティル。元々はランドールの持ち物だったのに、それを利用されてるのも癪ねっ!もう少し近付くか、戦略兵器でも使わないとダメだわ…」


「トア、その戦略兵器って?」


「地形を変動させ、人を消し去る危険を孕んだ大いなる光。その光を使用させない名目で、抑止力として量産され、結局は禁忌を犯した者達によって私達のいた時代は一度終わったの。その不浄な光は生物の住む環境を壊し、大地の実りを壊し、全てを無にする。そんなモノよ」


「…それでは両軍に被害が!」


「トア、それは絶対使っちゃ駄目だ!聞いた僕が悪かった、お願いだ!それはもう戦争ですらない、ただの虐殺だ…」


髭面の准尉があまりの内容に絶句し、ティルはトアの無茶を制止するのに必死な様子だ。会話を傍受していたレベッカも、秘密裏にトアへ狙撃の照準を高高度より合わせて、刻を待つ。

再び暴走するなら容赦するな。


始まりの個体の言葉が頭に浮かぶ。

『敵』殲滅の際に、過去に過ちを犯したトアはそれで封印された経歴がある。


丁度その時、国門前面に巨大な鉄人形が現れた。トアの顔は無表情なまま…。

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