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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
掲げし旗
134/160

セレスの機械人形

「まさか敗退するなんてね、この結果は予想出来なかったねナル?ランドール遠征軍は僕等の国に殴り込みをかけるかな?それともアンリエッサ達が占領している、自分達の故郷に戻るかな?」


「どちらでも構わないわ…、けど私としては眠らずの都の者達だと嬉しい。あの引き篭もり共が、私達を打倒する為に、此処まで来るのを考えると胸が踊るわ。あの時の続きを、私は夢想してるの」


セレスの首都サナーテ。

首都に聳え立つレレイナ離宮の一室で、双子の機械人形が話し合う。

ランドール遠征軍が来襲するにしろ、眠らずの都の勢力か、はたまた別の勢力の介入があるかもしれない。

彼らにとってセレス国軍の敗北の一報は、そこまで重要ではない。自分達が如何に面白おかしく、日々を過ごす事が出来るかに重点がおかれ、その他の事象はそのついでの様なもの。


雑事や政事、厄介事はリッケルト達革命政府のメンバーに押し付け、自分達は悠々自適な暮らしを謳歌している。


「相変わらずだねナル、始まりの個体が絡むと、君はとても生き生きするね。それとサナーテの戦力は万全だったかな?僕らのいる離宮の人形達も入れたら、かなりの戦力になると思うけど?」


「当然よイル、取り逃がした獲物はとても大きいのよ。あのお澄まし顔を、屑鉄にするのが私の野望…。首都防衛にセレス第1軍が脇を固めているわ、それに私達のお人形さん達が助っ人よ。国境線沿いに第2・第3軍が壁となっている。第4軍から第7軍までは遊軍集団として、各地に点在しているわ。ランドール以外の勢力が介入しても、充分に対応可能よ」


「それは素敵だねナル!まだまだ楽しめるなんて、最悪僕等が出張ればそれで事足りるだろうね〜」


ケラケラした様子のイルを、ナルは少々嗜める。物事に絶対はあり得ない、予期せぬ事態に陥るのが世の常だ。

どう軌道修正するかが肝であり、その手腕は為政者の腕次第だろう。

ぶーたれた様子のイルを横目に、ナルはランドール自治州にいるアンリエッサから、近況報告を聞いている…。





「はい、ナル様。ランドール自治州は平穏そのものです、退屈な毎日を送っております。波乱が巻き起これば、暇潰しにもなるのですが…」


「……、……?」


「はい、それは滞りなく。今週中には予定数を出荷予定です。また御入用の際は、一報頂きたく存じます」


「………、………。」


「かしこまりました、ではまた次の定時報告で。はいナル様、イル様にも宜しくお伝え下さいませ。それでは…」


慇懃な態度で通信を終了するアンリエッサ、今の彼女の立場は、セレス占領軍の軍事顧問という肩書きだ。

しかし、アンリエッサの同僚たる、ヒルデガルトとアノニムの自由奔放な振る舞いに、頭を悩ます毎日を送っている。


ランドール自治州で、ランドール側の抵抗が微弱になると、勝手に一軍を率いて隣国を蹂躙し、戦争三昧な日々に勤しんでいる。粗暴な振る舞いを占領軍に推奨し、他国から奪った戦利品の一切の自由を保障する。それが人でも物でも…。


週に一度の定時連絡の際に、嫌でも彼らと顔を突き合わすのは虫酸が走る…。


「おやおやアンリエッサ、ご機嫌麗しゅう。どうだい、偶には私達と戦争に明け暮れないかい?アノニムと君とで、何人殺せるか競争しようじゃないか?」


「私は気分が乗らないわ、アノニムと2人でしてちょーだい。それに今は内政に力を入れる時期よ、わかるでしょ?抑圧だけではなく、恩情をランドール人にみせなきゃならないのよ」


「つれないなアンリエッサ、じゃあアノニム、一緒にいこうか?」


「心得た、尋常に勝負と参ろうかヒルデガルトよ。アンリエッサ、気分転換がしたい時は付き合うぞ?ではな」


ズカズカと歩く2体の機械人形を、アンリエッサは黙って見送る。こんな日々は長くは続かない…。

遠からず、我々は罰を受ける。

不確かな思いが彼女を包みゆく…。

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