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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
窮鼠猫を噛む
124/160

兵士の行進、愚者の行進

ランドール側は沈黙を守り続けている。


あんな挑発じみた降伏勧告、受理される訳がない。奇跡でもおきなければ…。

案の定役軍使役である役人達は戻らず、役人の一人は敵のギフト持ちに惨殺されている。貧乏クジとはいえ、彼らも不憫だなと感じるヘンリー司令。


だが、ランドール遠征軍は戦い続けるだろう。本国が亡国となり、彼らの居場所はライナレス線だけとなったのだ。

壊れた機械の歯車だけが回り続ける。

彼らはそんな存在だ。


この結果にほくそ笑む者達がいるとするなら、眼前にいる我らがセレスのギフト持ちと、革命政府中枢くらいだろう。

戦う相手を求め、打倒するべき相手を欲っし、国土を拡張する。

それは以前忌み嫌っていた、クリフ大公のやり口と同じだ。彼の怨念が、指導者連中に取り憑いたのではと勘繰る。


「司令、私達の出番はいつ頃かしら?討ち損じた遠征軍に、引導をくれてやるのが私達の仕事でしょう?」


「…クロエ軍医、君達は後詰めだ。磨き上げた剣を相手に突き入れるタイミングを、見誤ってはならない。通常戦力で相手を疲弊させ、包囲殲滅戦に移行した後に、必殺の君達を投入する」


「国門でやった事を、ライナレス線で再現するなんて私達にとっては容易いのに、我慢しろなんて酷いわ…」


「正攻法に正攻法で付き合う義理はないと、ヘンリー司令はお考えなのですね?

しかし潜入した土竜も、遠征軍内にいた良き隣人達も失敗した今、力攻め以外に選択肢はないと考えますが?」


「…ふむ」


「ランドールの公女が居ようが居まいが関係ないんです、僕達の仕事は単純明解。敵を倒す、敵の屍で大地を覆う。僕らの国に楯突く奴等は叩いて潰す」


「私達に敵を、私達に戦う意味を与えて。あの時の続きをさせて…、司令?」


懇願にも似た感情。

自分達に仕事を寄越せ。

そう言わんばかりのギフト持ち達を、どう宥めて、説得させるべきか思案するヘンリー司令。彼らは今にも単独で出撃しそうだが、ギリギリで思い止まっている状況に頭を悩ます。


思考の海へと漕ぎ出しそうなヘンリー司令を、現実に呼び戻したのは、伝令の金切声の様な報告であった。


「ヘンリー司令!敵の新兵器です、長距離砲撃に我が方の先鋒が崩れかかっております。ご指示を!」


意味深な報告に首を傾げるヘンリー。

砲撃程度で崩れる様な陣容ではない筈だ、こちらはランドールの数倍の数で攻めているのに。


「砲撃?唯の砲撃にどうして慌てる?兵力を固めず、分散運用せよ。それで充分だろう、何故崩れる?」


「言葉より実際にご覧になった方が早いかと、こちらをお使い下さい」


「……ん、これはまた、凄まじいな」


双眼鏡越しに覗く景色は悲惨そのものだ、歩兵の戦列が砲弾の直撃で消し飛び、大地に大穴を開けている。

いつ来るかわからない敵の砲弾に怯え、兵の勢いがなくなっている。

そこをランドールのギフト持ち達や、前衛部隊が暴れ回り、先鋒の部隊の戦列は散り散りの半壊状態だ。


「追い詰められて尚、新兵器を製造する余力があるとわな、畏れ入るよ。敵の新兵器可能なら鹵獲しろ、本国に送り検分する。無理なら是が非でも破壊しろ、ランドールには過ぎた玩具だ!」


「はっ!了解しました司令」


セレスの波状攻撃が始まり、さざ波の様にライナレス線へと寄せる。

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