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眠らずの都の住人  作者: 同田貫
斜陽の国
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幕間 集う異形

セレス人民主義連邦直轄地、ランドール自治州。戦後に急速な復興支援がなされる訳もなく、セレス本国により搾取され続けている。

資源や物資、人すらも労働力として奪われ、枯れた国に変化しつつあるランドール。クリフ大公の治世より、景気が良くなると期待した国民達は絶望し、ランドール自治州からの亡命者が頻発している。人口の減少が止まらないし、攫われていった者達も戻りはしない。緩やかな滅びに瀕している。


強制的な人の徴収を行うセレスのトラックが大通りを行き交い、憲兵達が徒党を組んで地方都市を闊歩している。

そんな現状を打破しようと、義勇兵や元公国軍人がレジスタンスを組織し、我が物顔のセレス兵を日常的に襲撃するので、治安も悪いどん底な状態である。

戦争終結を一方的に謳ったセレスだが、ランドールの内政状態は、戦争状態となんら変わらない。死に満ちている。


初代ランドール大公が思い描いた、誰もが幸福を享受する国には程遠い、無秩序で混沌とした国の成れの果てが残る。

要職をセレス出身者が独占した事で、ランドール人と無用な軋轢を生み、その反発は日に日に強まっていた。

反発を武力で捩じ伏せ、不安を強引に抑え込むのも限界がある…。


だがセレスの代官達は方針を変えようとはせず、本国からはより強力に支配を推し進めよとの通知がでるのみだ。


【ならより明確な恐怖をランドール人に刷り込めばいいのよ、根源的な恐怖にヒトは弱いもの。逆らう者、疑わしき者を、惨たらしく処刑しなさい。反抗心を芽吹かせない様にね?私達が欲しいのは、盲目的で従順な配下なの。反逆者はいらない】


【過激だね〜ナル。アンリエッサいいかい?君には期待しているんだ、君の大事な人の為にも頑張るんだよ?そうじゃないと、僕達は君が嫌がる事をしなきゃいけない】


【はいナル様、イル様…】


セレス本国よりの通信を受信するアンリエッサ、彼女の主人達はランドールの占領事業が一段落すると、配下の者達に引き継ぎを行い、本国へと戻っていた。

ランドールから送られてくる国民達を、機械人形との完全なる同化研究の為、サナーテにある離宮の自室に引き篭もっている。



メイを巻き込みたくはない…。


近頃の私の変化を訝しみ、釘を刺しているのだろう。イル様やナル様は、変わらない忠誠を私に求めている。これは恫喝かなにかだ。

お目付役を2体派遣したのがいい証拠だ、長年双子の主人に仕える、私の同僚たる機械人形達。旧い同胞…。

自分は疑われているのかは分からないが、上手くやらなければ、これまで通りに。

それに自分はこの2体が嫌いだ。



「アンリエッサ、ご無沙汰だね。調子はどうだろうか?自分の強さを実証する君の姿は輝いていたが、今の君はらしくないと主人達から聞いたが?どうなんだい?」


「勘繰り過ぎだよヒルデガルト、私は私。今までと同じ、イル様とナル様の忠実な僕なんだから。貴方達と同じよ」


「そうなのかい?僕達がこの地に派遣されたのは、この領地を守護する為と聞き及んだよ。まぁ宜しく頼むよ」


礼儀正しいヒルデガルトと名乗る機械人形の足元には、無抵抗で殺されたランドール人が折り重なっている。

両手足が異様に長い、胴体がアンバランスな形をしている。生真面目そうな表情を浮かべているヒルデガルト。

その実態は残虐で、陰湿だ。


そんなヒルデガルトの態度を無視して、もう一体の機械人形の行方を聞く。


「アノニムは何処だい?」


「彼はその辺にいるよ、職務熱心なのが玉に瑕だけどね。その内来るさ」


「職務熱心ね…。人殺しに無我夢中なのは、熱心とは言わないだろう?」


離れた場所で、丸々と肥えた体型の機械人形が、嬉々とした様子で近隣の町を荒らし回っている。憲兵達と一緒になって。

善悪の区別ができず、ただ自分達の欲求のままに破壊を繰り返す特異体達。


私はこいつらが嫌いだ…。

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