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【都内のレストラン】
〈同窓会会場〉
「ああ、宴、久しぶり」
「うーん、何年ぶり?」
「雅の結婚式以来じゃない?」
皆んな結婚したのね…
結婚してないのは、私と美都ぐらいか。
美都は、バツイチだけど…
「宴はしないの?結婚」
「相手が居ないもん」
30までにしたかったんだけどな…
子供好きだし。
「宴先輩、美都先輩」
ここにも居た未婚の子。
「宴先輩、そのパワーストーン」
「あ、これ?うちのお店の近くで作ってもらったの」
「へー、良い事有った?」
「そこのオーナー、ちょっとステキだったわ」
「何てお店ですか?」
「lapis」
「え?もしかして、天空路?」
「そう。何で知ってるの?」
「私、付き合ってたんです」
「えー?」
「素子は、何で別れたのよ?」
「猫が懐かなくて…」
「猫飼ってるんだ…私好きだから大丈夫」
「手強いですよ」
「ねえ、その人いくつ?」
「30です」
「年下なのね」
「宴。どこがステキなのよ?」
「パワーストーンの説明がねー」
「ただの石オタクですよ」
「花オタクと石オタクか、お似合いかもよ」
私は、お花に夢中になってて、気がついたら32よね。
付き合った人は居たわよ。
プロポーズされた事も有ったけど、タイミングって有るじゃない。
あの時はまだ、お花の勉強がしたかったから…
彼…何の花が好きなのかしら?
この前は、スイートピーを買って行ってくれたけど…
また来てくれるかな?
「2人とも、たまには私の店に来なさいよね」
「行きます、行きます」
美都のお店…
ご馳走してもらうの悪くて、何と無く行かなくなっちゃったのよね。
【天空路家】
〈窓の外を見るlapis〉
お留守番嫌だな。
寂しいよ。
あ、ママだ。
〈隣の建物の窓に母猫と父猫が居る〉
あ、パパちゃん。
ママのお家に居る。
早く帰って来て。
〈しばらくすると…〉
あ、帰って来た!
〈玄関に走るlapis〉
早く早く!
〈扉の鍵が開く。ドアが開き遊が入って来る〉
「ニャーニャー」
〈遊の肩に乗るlapis〉
「良い子にちてまちたかー?」
「ンニャー(寂しかった)」
「お腹空いたか?」
「ニャー」
「あ、また食べてない。何でパパちゃんが居ないと食べられないんだよ?」
「ニャー、ニャー(早くご飯)」
カリカリ、時間が経つと美味しくないんだろうな。
ニコロなんて、開けた時しか喜ばないもんな。
缶詰めが欲しいんだろ。
ああ、そのうちこれも食べなくなって、パウチになるんだよな。
ワガママ猫ニコロの娘は、ワガママ姫か?
アクセのデザインしたいんだけど、lapisが寝てくれないと無理だよな。
ビーズみんな転がしちゃう。
ずっと抱っこしてぐずるし、起きてると何も出来ないよ。
可愛いけどね。
「可愛い可愛い赤ちゃん。大事な大事な大事なlapis」
チュッ、チュッ。
「パパちゃんの大事大事」
「ゴロゴロ(パパちゃん大好き)」
「lapisが1番大事だからね」
〈そして…遊の膝の上で眠るlapis〉
あー、やっと寝た。
イヤリングのデザインしよう。
〈lapisを抱いたまま棚に手を伸ばすと…〉
「ニヤッ(びっくりした)」
「あ、ごめんごめん。ねんねちて」
【ベッドルーム】
〈朝、遊の顔を舐めて起こすlapis〉
「おはようlapis」
チュッ。
「ニャー(早く起きて)」
【アクセサリーショップlapis】
「じゃあ、後お願いしますね」
「お疲れ様でした」
【駅前】
lapisが待ってるから、早く帰ろう。
あ、オヤツ買って帰るか。
【ドラッグストア】
クリスピーキッス。
ドリーミーズ。
ニコロこれ好きなんだよな。
うーん、lapisにはまだ早いな。
こんなの食べさせたら、普通のカリカリ食べなくなるもんな。
煮干しと鰹節は、今から食べさせておいた方が長生きするからな。
ゴロちゃんが長生きしたのは、煮干しが好きだったからだと思うんだ。
【フラワーショップ】
〈店の外に置いて有る重そうな鉢植えを中に運ぶ宴〉
「フー…後もう少し」
これが重いのよ。
〈しゃがんでその大きな鉢植えを持とうとした時、誰かの手が重なる。見上げると…〉
「大丈夫?」
「天空路さん」
「中に運べば良いの?」
「そうなのよ」
「了解」
【店の中】
入り口近くの方が良いかな?
また出す時大変だもんな。
「ここで良い?」
「うん。ありがとう」
「じゃあ」
「あっ」
「うん?」
「良かったらお茶、ううん、ご飯でも…手伝ってくれたお礼に」
「そんな、このぐらいで…」
「とっても助かりました」
「嬉しいんだけど、猫が待ってるから、帰ってご飯あげないと」
「あ、そうよね…じゃ、じゃあまた今度」
「それじゃあ」
帰っちゃった…
あーあ、チャンスだったのに。
うーん、もう、呑みに行こう。
【bar】
「いらっしゃいませ、ああ、宴いらっしゃい」
「あら、素子も来てたのね」
「宴先輩、何だか嬉しそう」
「そう?」
「何か良い事有ったな」
「天空路さんが通りかかってね、鉢植えしまうの手伝ってくれたのよ」
「ああ、そういう事はする人だわ」
「素子。あなた、天空路さんとどこまで行ったのよ?」
「どこまでって?」
「つまり、そういう事よ」
「美都、何聞くのよ」
「猫が待ってるからって、すぐ帰っちゃうし、家に行けば猫に威嚇されるし」
「家に行ったの?」
「何度か行ったんだけど、そんな雰囲気になんかなりませんよ」
「猫がね…」
「私は、仲良くなってみせるわ」
「宴、付き合うつもり?」
「そうなったら良いな」
「素子のお古よ」
「だって、何も無かったんでしょう?」
「キスぐらいしたでしょう」
「彼、猫にしてました」
「え?キスも無し?」
「はあい、無しです」
良かった。
お古じゃなくて。
【天空路家】
「こんにちはー」
「はい、お願いします」
「ニャー(嫌、来ないで)」
「lapisちゃーん、掃除機かけるからねー」
「ニャ(掃除機さん嫌い)」
「あ、逃げた」
本当掃除機嫌いだよな。
「滝本さんには、ウーって言わないよね」
「皆んな言われるのよね?」
「うん」
「私、掃除機持ってるから?」
「そうかも」
「はーい、こっち終わったから、今度そっちに行くよー」
「ニヤッ(また来た)」
「どこに居る?」
「向こうの部屋」
居た。
「抱っこ抱っこちて。よちよち」
週に1回掃除に来てもらっているんだけど、最近やっと少し慣れたみたいだね。
相変わらず掃除機は嫌いで逃げ回るけど、他は大丈夫だ。
「早く帰って、って言われなくなったわよね」
「そうだね」
最初の頃は、滝本さんの顔を見て「早く帰って」みたいに「ニャ」って言ってたよな。
今でも帰るまでリラックスして寝る事は出来ないけど、嫌な時の耳しなくなったもんな。
「終わりました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました。また伺いますね」
滝本さんと入れ違いに、春陽ちゃんが来た。
「お掃除の人頼まなくても、私がするのに」
春陽ちゃんはそう言ってくれるけど…
猫じゃらしで遊んでるな。
他の人だと、おもちゃでもダメだよな。
「お兄ちゃん、お店行くんでしょう?私お留守番してようか?」
「せっかくの休みに何言ってるんだよ」
「だって、lapis寂しいわよね?」
「ニャー」
lapisが小さい頃は、1人に出来なくて、お店は店長の石垣さんに任せて時々顔を出してたんだよな。
ついでに買い物に行ったりして、急いで用事を済ませて帰ってたんだ。
その間春陽ちゃんに頼んだりしてたから、春陽ちゃんだけには懐いてるんだよな。
でも猫って、家族でもしばらく会わなかったら、よそよそしくするんだ。
忘れているわけじゃないんだけどね。
親父がしばらく帰らなかった時は「ウー!」って言われてたな。
春陽ちゃんもしばらく来れない時が有って、lapisは少し警戒したりしたけど、今は懐いてる。
他の人だと、僕とその人の間に入って、睨んでる感じだよな。
すぐ「ウー、シャー!」って言うし。
「ほら、鍵。帰る時は、母に渡しといてくれれば良いから」
「行ってらっしゃい」
lapis寝ちゃったのね。
いつもお留守番の時は、どうしてるのかしら?
【駅前】
「こんばんは」
「こんばんは」
「今帰りですか?」
「はい」
「今日は、早いんですね」
やっぱり、猫ちゃんが居るから、まっすぐ帰るんだ。
どうやって誘おうかしら?
お昼?
【天空路家】
〈遊が玄関の鍵を開けて中に入ると〉
「ニャニャニャー(パパちゃんパパちゃん)」
「良い子にちてまちたか?」
「ニャー、ニャー(抱っこ)」
〈遊はlapisを抱っこして、いつものように肩に乗せる〉
あれ?
良い匂いがするぞ。
「お帰りなさい」
「春陽ちゃん、ずっと居たの?」
「ご飯作ってたの」
それは有り難いけど…
「うわ〜美味しそうだ」
「食べよう」
時々こうやって食事を作ってくれるんだよな。
いや、最近はしょっちゅう。
助かるんだけど…
でも、いつまでもこんな事させてて良いのかな?
「どうしたの?美味しくない?」
「凄く美味しい」
「冷めちゃうよ」
本当に美味しい。
始めの頃は、練習台にさせられて、かなり面白い味のも有ったよな。
焦げ焦げなのに、結構美味しかったり…
初めて料理を作ってくれたのは、春陽ちゃんが中学生の頃だもんね。
腕も上がったし、練習台は卒業かな?
「そろそろ恋人の為に作ってあげたら?」
「そんなの居ないもん」
「ボーイフレンドたくさん居るんだろ?」
「居るわよ」
「その中に良さそうな人居ないのか?」
「皆んなお友達だもん」
お友達止まりですか。
「lapisは、ご飯の時は、テーブルに上がらなくて良い子ね」
「ニャー」
人間の物は食べさせないから、自分の食べる物じゃないと思ってるんだよな。