褌じゃあないそれは浴衣だ
やあ、お風呂でリラックスするのは気分がいいよね。でも気持ちいいからって眠りそうになったら駄目だぞ、あれは失神だからな、気を付けないと溺死しちゃうからね!
長時間お風呂に入るなら温度と体調管理はしっかりしないとね、経験者が語っちゃうぞ、エヘ。
おい、キモイとか言うな大事な事だから伝えたんだ。
どうも、そんな人生で桶になってる桶神九十九です、現在温泉でのんびり……
出来てません。ああ、あのオーガ達の襲撃ですが、やはり裏側が本命でした。正面から来たのはロリっ子達でも問題なく殲滅できたそうです、ハイ。
カッポーンと桶を置く音が温泉に響いている。撃退した事で汚れた体を洗いに女子生徒達が訪れたわけだ。
勿論規制は発動中だぞ。幸いにしてこちらの温泉側には被害の“ひ”の字もないさ。まあその分外は大惨事だけどな!
界面活性潤滑剤やヘルミストで倒した敵は証拠隠滅は完璧にしたけどさ。ヘルミストはやり過ぎたかなあ。周りの植木とかもやっちゃったもんな。
そうそう、ロリっ子への説明だっけ、あれはブッチだよ。当然だろう。考えてみてくれよ、あのまま浴衣を着流してる姿で合うとするじゃないか、完全にアウトへの流れだよね。
先ず一般人で通りかかったと説明したとしよう。学校の管理地付近に一般人は近寄らない、こんな山奥の訓練施設だからな。万が一にもそれが通用したとしても、格好が怪しすぎる。自分で言うのもなんだけど浴衣で出歩く奴なんて温泉街でちょっといるかどうかだよな。しかもだ、浴衣があるかどうかも怪しいだろう俺は見た事が無い、その下が褌一丁ってのもなあ。あと桶も持ってたしな、仮に説明するにも持ち歩く必要が出てくるし。ってことで無理。
最終的に総括してだ、あのロリっ子が納得する筈が無いと言う事だな。
つまり本当の事を説明する必要が出てくるだろ。そしたらハライソに居られなくなる可能性すら出てくるじゃないか。
大問題だよ!
まあそんな事はどうでも良いさ、今はハライソを守ってこの幸せな景色を眺めて一服だよ。嗜好品は無いけどな。そんな風にボーっと眺めていたんだよ、項とか色々な。勿論規制付きだけど。そうしたら奇妙な会話が耳に入ってきた。
「ねえねえ、聞いた」
「何々」
「ほら、温泉に現れたっていう全裸の生徒の話」
おいお嬢さん、今なんて言った、そんな変態が出没したというのかっ。
「ああ、全裸じゃないわ下着一丁でオーガを倒してたって人でしょ、なんだっけ」
まてぃ、それ俺じゃね?
いやさぁ、俺は確かに肌蹴ていたから褌も見えたかも知れない、いや見えただろうが、浴衣も着てたぞ。
「諸肌脱いでさらけ出しながら大規模魔法でオーガを殲滅したらしいわよ、顔はキリっとして男前だったらしいわ。でね、いきなり肩をこうガシって掴んで迫られたんですってよ」
「キャー」
なんだか事実と違いませんか?
誰ですかそんなアホな捏造しやがったロリは……
「それでそれで」
「此処は俺に任せろ、お前の事は守ってやるとか、俺が選んでやるとか言ったらしいのよ」
「イヤァァァン」
ロリィィィ!
テメェ捏造シテンジャネエヨ。思わず片言だよ。
「凄いわねその男子、だって言った相手ってあのミュリエルさんでしょ」
「そうそう、絶対見つけ出すって言ってたわ……」
「それってまさか」
「「恋?」」「ロリ」
ヌォォォ、ヤッフゥ恋だぜ!
っじゃねえよ、色々伝わり方も変だけど、あとロリって言った奴には冷たいピッチョンの刑な。それ以上にその恋って結論は変だからな。問い詰めようと探し回ってるだけだろうに。やべえ、なんか何処かで「責任取って貰うんだからね』的な未来が見えた。それも嫌だぞ。
「でもでも、そんな凄い子居たっけ?」
「どうなのかしら最上級生って可能性もあるし……もしくは流離の冒険者とか?」
「ルーちゃんの意見だと桶様のおかげだよって話だけどね」
「流石にねえ、幾らなんでも桶様はないわ」
「だよねー」
ルーちゃんとはもしや女神様の事か。フフフ、流石女神様は判って……
え、何で判ったの?
ちょっとー、もしや見えてるとか無いですよね、色々アウトになりますよー。アレだよね何時もの信頼から来る妄想だよね?
そんな風に考えている所に話題の二人が……
うむ、やはり素晴らしいなぁ“そう”女神様はな、ロリっ子はもう少し恥じらいを覚えろ。
先ずバスタオルや手ぬぐいを使ってだな、隠すという動作が良いんじゃないか。あれだ湯着でもいいぞロリっ子だし、まあ順位を付けるならば、手ぬぐいの部分隠し>タオルで前面のみ隠す>バスタオル巻き【越えられない壁】湯着ってなるけどな。
あ、水着?
ないわー、判ってないよ、確かにレジャー設備のある温泉とかだとあるよお風呂に水着ってね。でもな、それは違うんだよ、もうそれは風呂じゃない。露出部分が変わらなかったとしてもだ。ああ、水着なんて所詮言い方を変えただけの下着みたいな物だけどな。性欲だとぉ、美を求めるエロスと性欲を一緒にするんじゃねえ!
そうそう、お風呂に水着、ましてや温泉にとか、許されるのは小学生までな。
衛生云々ではなくてだな、まず風呂というのは開放感なんだ。温泉なんてその上位版だぞ?
そこに体にピッタリ張り付いている水着を着ていて何を開放するというのか。
体をサッパリと洗い、湯船に浸かってこその風呂だ。レジャー温泉は温泉に非ず、あれはレジャー温泉という施設だ。そこならば存分に水着で遊んでくれたまえ。
おっと熱くなりすぎた……
二人が何か言い合ってるな、温泉は仲良く入れよ。
「で、その人はきっと桶様だと思うのです」
「ハッ、あの勇者様が桶とかありえないし」
事態はなんだか意味不明な方向へと進んでいるようだ。
お、俺を巡って対立してるけど、よく判らない話じゃないか?
女神様が俺だと言い張っているのは信頼だからな、でもロリっ子が勇者様っていってるのは俺の作り出した意識体ですか?
まさか本当に惚れられた、いやそう見せかける罠かもしれん。
例えばだ、「やあ、黙っていて済まないね、俺がオーガを倒した桶神九十九。あの桶の付く喪神さ」「プッハッハッハ正体を現したわね、この変態、確保!」「え!? 何それキャー桶様ってただの痴漢だったの」
なんて事にもなりかねない。
いやきっとそうに違いないな、うぉぉ、危うく騙される寸前だったわ。
「それに、あの勇者様は見た事も無いような結界を張って敵を足止めしてたし、先生の話によればオーガロードを倒してるのよ? 一般生徒なんて話しは先ず在り得ないし、桶が力をつけてたというのは大婆様の話しでもあるけど、あの魔法は無理よ」
「でも、この温泉に居たんでしょ?」
「正確にはこの温泉の外側よ」
「桶様だと思うんだけどなあ、それにそんな場所に他の人が居たって事は覗きか何かかも」
「そ、それは覗きとかじゃなくて、そう退治、オーガを退治しに現れただけよ」
女神様からの信頼は一体何に基づいているのだろうかちょっと心配です。
あとロリが真剣に恋に落ちてないかもちょっと心配なんです。
でもこの二人ならバレてもなんとか話が出来そうだな……
そんな事を思ったのは、流石に丸一年喋る相手が居なかったからかもしれない。
題名を弄りました、あ、でも本格的に書くの? と思われたかも知れませんがそう言う訳ではなくて、なんとなくです。謎の光と湯気への賛歌を入れたかったという願望からですかねえ。
内容は何時も通り。気楽に行きますよ。プロット無しの出たとこ勝負ですから。
ご都合主義万歳!
ハッ! 大変な事を忘れてた……既に伏線があったのにも関わらず、なんてこと!
次回、もしかしたら登場です。