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湯気の中の攻防戦

 さて、今日も奴等を撃退しないとな。

 これが役目だから恨みは無いんだよ?

 でも、恨みは無くてもだな。


 小童共がぁ、俺のハライソを攻略するには修行も作戦もまだまだ甘ちゃんだぁ!


 視界を通さない蒸気の壁。

 そして匍匐前進を許さない水撒きトラップ。

 乗り越えてきた勇敢なモノに待ち受ける微妙な段差。

 生じる物音。

 そして始まるカーニバル!


 そう、いつもなら此処で俺が騒動に紛れて熱湯攻撃を浴びせる事が可能なんだが……


 熱湯攻撃は付喪神である俺が出来る事であって、呪に施されているモノではない。

 呪で施されているのは視界を塞ぐあの絶妙で微妙な湯気と謎の光の反射による防壁だけなんだ。このチミッコ事ミューが観察している今、俺は全力をもってして奴等を撃退できない。


 空気読めよロリッコ、使えねえな!


 お前だって覗かれてるんだから、じっと()を観察してないで加勢しろよ。あれかもしやボンッキュッボキュン! じゃないから大丈夫とか思ってないか?

 甘いぞ、小娘、そのプリティーにまとまった容姿は特定の男にとってボンなど爆破する勢いで望んで止まない至宝とされるんだぞ。そもそもだ、女子たるものが恥じらいも無くなれば魅力を無くすじゃないか。湯気の謎効果と光の謎効果があってもな。頭に描いてみろ。勿論『湯気とか謎の光効果』付与済みでだぞ。


 ちゃんと裸体を晒している事に同性相手であろうが恥ずかしがる姿。

 堂々と胸を張りながら、どうせ見てるの女性だけだしなと開き直っている姿。


 お前はどっちに萌えると思うんだよ。圧倒的に前者だろうがっ。

 そこを考慮しろって。顔は美少女なんだから残念すぎるぞ、そのロリボディと同じレベルで。


「ムム、なにやら邪な思念を感じる、覗きかっ!」

「ミュー、やっちゃって!」

「任せなさい、痴漢なんて成敗よ」


 えーと、多分俺だなうん、まあやる気になったならいいけどさ、おい、やりすぎるなよ。一昨日に爆破で吹っ飛ばしたのはやり過ぎだったぞ。


「エクスプロージョン!」


 ってまたかよぉぉぉ、『ウォーターシェル』!

 ダァァ危ねぇって。

 一昨日の『ファイヤーランス』でも死亡クラスだったのに、さらに上位の爆発するような魔術は詠唱するんじゃねえよ。しかも詠唱省略とか無駄にスペックが高い。あれかロリッコはスペックが高いとかそういう法則でもあるのか?


「チッ、また邪魔するような真似を……誰だか知らないけど痴漢如きが私の魔術を遮るなんて不届きよ!」


 お前は物騒すぎるんだよ!

 痴漢如きなら熱湯とか『ファイヤーボール』の最小の威力で十二分だっていうのに、本当に物騒すぎる。確実に殺しにきてるな。誰だこんな猛獣ロリを育てた奴は。


「た、退避! 退避ぃぃぃ!」

「これは撤退ではない、後退する戦略である」


 ま、まぁお前たちも死にたくないよな、正しい選択だと思うぞ。あと完全に撤退だから、俺が助けなかったらお前ら木っ端微塵だからな。修行してこい。せめて防御魔法は完璧になってから挑め。死人は流石にどうかとおもうからよ。


「ふん、やれやれね、全く男って馬鹿だわ。幾らこの素晴らしい体を拝みたいからって、フフフ」


 か、勘違いしてるけど此処は黙秘だ、突っ込みは入れないぞ!

 粉々には成りたくないからな。そうそう、そうやって大人しく湯船に浸かってさっさと上がりなさい。


「ふぅ……ふぁぁぁ」


 おい、欠伸なんてしてるってのは魔力使いすぎたんじゃないのか……

 寝るなよ、湯船は危険だぞ~、経験者は語るぞ。


「…………」


 ってオイ寝やがったよ、つかあれじゃね気絶だよな。ォィ、オイ!

 チッ。


「アッツゥ! 何! え、あれ?」って俺だよ、感謝しろよ熱湯だ、ハッハッハ!

 俺は此処の守り神だからな。まあ付喪神だけど。全く手間の掛かるお嬢ちゃんだぜ。

 そんな所で溺死なんてさせるかよ。転倒したりしても簡単な魔法で救助もするし、仕事振りは完璧だぞ。報酬はたんまり毎日もらってるからな。


 なんでこっちを睨んでやがるんだロリッコ、こっち見んな!

 上を見ろ。


 ピチョン


 ブッハッハッハ!

 偽装工作をしないと思ったか、そう、天井からの雫だ。それで起きたんだと思わせる、正に完璧。疑う事しか出来ないロリッコとは頭の出来が違うのだよ出来が、頭見えないだろうけどさ。


「……」


 ……


 こうして今日はなんとか乗り切った桶こと付喪神。

 何時か正体が露見するかもしれないと冷や冷やしながらもハライソを満喫する、湯気と謎の光の効果を逆に楽しむ事を覚えた唯の愚かな守護者であった。

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