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力
「へぇ、便利だね」
「そう?」
「便利だと思うよ、食べられるんなら今日は食べて」
「はーい」
このお弁当はタカシが作った物だ。
中身は肉と卵と飯米だった。
ヨウコは嬉しそうに食べる。
「これお兄さんが作ったんだよね?」
「そうだよ」
言いながらタカシは小さな蜂に追われ始めた。
「うわっ、あっちいけ」
手で払う。
少女はその様子を楽しそうに眺めている。
「お兄さんって虫、怖いんだ」
「笑ってないで助けてよ」
「しょうがないなぁ」
そう言うとヨウコは一度右手を握り込み、それを離しながら蜂へと掌を向けた。
すると蜂は羽音を立てた後、タカシとは反対方向へ飛んでいってしまった。
「それって妖怪の力なの?」
タカシはヨウコへと聞く。
「まぁ、ね、こんなの要らなかったんだ」
「え?」
ヨウコはタカシの表情を窺う。
「で、でも今は、お兄さんの、た、ため、に…あって、よかった、よ……」
言葉切れ切れに頬を紅潮させ俯く。
タカシはその様子をみて自分も恥ずかしくなってしまった。




