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◆17◆

 自己紹介が終わり、何やら配り物を山ほどされて連絡事項が済むと、漸く放課となった。

「やっと終わったね〜」

 藍は座ったまま両手を高く上げて、気持ち良さそうに伸びをする。自己紹介の時目にした彼女が嘘だったかのように、その表情はすっかり元に戻っていた。

「あれ……そういえばさ」

 そんな彼女を横目に見た俺の肩の力は、一気に抜けていった。

 なんだか安心した。

「明日って何時からだっけ」

 藍の『笑わない理由』のことばかり考えていたものだから、そういえば思い返してみると連絡事項なんて何一つ頭に入っていなかった。

 そう尋ねる俺の間抜な顔を見て藍はくすりと笑った。

「明日ー? 明日はね、八時四十五分だよ」

「てことは、何時に出ればいいんだろ……。わかった、ありがと」

「もう!」

 と彼女は言って天井へに伸ばしていた両手を膝頭に置いて腕を突っ張った。

「ちゃんと聞いてないとダメでしょー? どうせ……」

 どうせ、と彼女は言い掛ける。すると、一旦口を閉じてしまった。

「……どうせ?」

 何が言いたいのかさっぱり分からず、尋ねると今度はその手を俺の耳に持ってきた。

「ほんとはね、あたし聞いっちゃったの」

 丁度内緒話をする形に。

「……? 何を?」

「あのね」

 近寄る藍の体温の温かさを本当にすぐそこに感じて、俺は少し赤くなっていた。

 だから、彼が近付いてきていたことにも気付かなかった。 



「なに、さっそく仲良い子できたの、お前」

 そんな俺を見下ろして、前の席に座っていたはずの親友が珍しい物を見るかのような目つきでそう言った。

 確かに、俺がこんなに女の子と近くで話すことなんて今までになかった。

「え……」

 俺達二人は同時に下向きだった頭を上げた。

 その途端に藍は、(かざ)していた頼りない手を膝の上に引っ込めた。



「ふうん……」

 そんな彼女を品定めした健太は俺を見て一度にやっとする。

 そして、こいつ、と右肩を叩いて続けた。

「こいつね、女の子の友達少ないから」

 俺は叩かれて少しビクッとした。

 健太は片耳に長い髪を掛ける彼女に向かって微笑んだ。例え彼が見せた笑みが愛想だったとしても、それは極めて珍しいことだった。奴が女に対して笑顔を見せるのは、たいてい教師と話す時くらいだった。

「ま、仲良くしてやってよ。瀬之崎、(アイ)? さん?」

 彼は語尾を少し疑問系にしていたものの、藍はまたもや自分の名を言い当てるその男を目にし、俄かに怪訝な顔つきをして見せた。 

「……あたしの名前知ってるの?」

 またあなたもですか、というように。

 確かに、自分の名前を知らない多くの人に知られていたら、気味が悪くなるのも無理はない。

「え? ここに書いてるけど?」

 若干繭を潜める藍に対して彼はそう言うと、彼女の机の上を人差し指でトントンと叩いた。健太は卓上の名前シールを見ていた。

 視線を落とした彼女は直ぐに表情を変えた。

「あっ……」

 その頬はみるみるうちに紅くなっていった。

「ご、ごめんなさい」

 どうやら早とちりだった。有名だった松崎藍の名も、さすがに女に興味のなさそうな健太にまでは知られていなかったようだ。

「ん? なんかよくわからないけど」

 ははっ、というような声を少し、珍しくも彼が出していた。

「俺、長岡健太。よろしく」

「よ、よろしく」

 藍は健太につられて余裕のなさそうな笑みで答えた。先程までは俺が藍のペースにはまっていたのに、今度はその彼女が健太のペースに乗らされている。

 それに、健太は無駄に爽やかな笑顔を振りまいていた。

 そんな繰り広げられる光景を目の前で見て、なんだか俺はおかしな気分だった。健太の行為が演技なのかそうでないのか、俺には分からなかった。


 ぼやけた二つの姿の先にある、花弁散る外を窓越しに一度見た。

 ただ、明日は傘がいりそうだなと思った。

 嘘つきですね。すいません……。かなり忙しくて掲載の目処が立たず、とりあえず書いているところを更新いたしました。

 ところで梅雨入りしました。ブルーです。髪型がきまりません!

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