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首吊り人形  作者: 白羽セレン
2/7

白波千波

千波はテーブルの上のリモコンを手にし電源を入れた。テレビにはバラエティ番組が映しだされた。

この世界に基本的にニュースはなく過半数の番組がバラエティ、他はスポーツや趣味講座等で成り立っている。

千波はいつもの様に白のソファーに座り、テレビを観始めた。

いつもの様に、というのは学校制度は睡眠学習の発明により廃止され、学校に通うことがない。だからいつもの様に、なのだ。生まれたときから学校というものを知らない。だから通いたいとは思わないし、通うべきだとも思うことはない。

画面の中で大きな歓声が沸いた。

皆笑っている。だけど千奈美には何か囲いの中で笑いあっているように見えた。

そして自分もその狭い囲いの中にいる気がした。

ピンポーン、とベルの鳴る音が聞こえる。

千波は億劫に立ち上がり、玄関のドアを開けた。

自分と同じくらいの背丈の女性が寒そうに何かものを抱くような格好で手で二の腕をさすりながらドアの前に立っている。

母だ。

「……母さん、お帰り」

「ただいま。いよいよ明日ね」

「……うん」

いよいよ明日、それはテストの事だ。国語、数学、理科、社会、英語……。それだけじゃない。

身体能力、感覚神経、感性までも調べる。筋力、柔軟性、視力、芸術センス……。このテストは高校を決める為のものなどではない。

これは一生を決める為のものだ。

専門分野が細分化され複雑になった現代。

能力の無い者がその分野において努力したところで得られるものは少ない。

だから能力のある程度決まった15歳の時期にテストを行う。

2052年に可決された能力適応法である。

この結果により、働く場は決められ、給料や地位はよほどの事が無いかぎり一生変わらない。

しかしこのテストを真剣に受けるものがいるのか千奈美には疑問だった。

だってそうなのである。

金はそんなに必要ではないし、だから良い仕事に就く必要もない(仕事を趣味にしているなら別だけれど)。

金がなくて遊べない、と嘆く者がいても金がなくて餓死した、なんて話は聞いたことがない。

昔の制度をなぜ続けているのか千波には判らなかった。

しかし受けない訳にはいかないし、手を抜くのも気分が良くない。

やはり順位がつけられる訳だから負けたくない、というのが正直な気持ちだ。

千波はつけていたテレビを消し、自分の部屋に戻った。

淡い茶色の木製の机に腰掛ける。

そして明日のテストの説明用紙に目を通す。

明日は午前の6時から夜の10時半までテスト、筆記試験が6時から12時までの6時間、健康診断が昼食を挟んで午後1時から1時間、そして面接1時間、身体能力測定が3時から3時間の午後6時まで、技術測定が午後8時までで最後が……特別測定?

よくわからない。

ものまねが得意とか、犬種が全て言えるとか?それともユーモアセンスがあるとか。

いや、そんな趣味のようなもの調べてもなあ……。

まあ明日の事は明日になればわかるか。

外を見るともう太陽は沈み無数の小さな光が街を覆っている。特に明日に向けてやることもない。今日はもう寝よう。千波は明日を不安に思いながらもゆったりと眠りについた。



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