第七十九話 決着
我が名は、ナイトメア・アーク。
何か戦場の様子がおかしい。
優勢だったはずが、徐々に盛り返されている。
どんなに悪夢をまき散らしても、あまり効果が無くなっている…。
徐々に我が同胞のドラゴンにも負傷が目立つようになってきた。
なぜだ。なぜ効かぬ…。
絶望、悪夢こそが絶対ではなかったか?なぜ立ち向かってくる?
息を吹き返すように士気が上がっている。
悪夢が効かない?なぜだ?
一度倒れた兵士が、「私たちには仲間がいる」と叫び再度立ち向かってくる。
仲間…。友情…。絆…。我には全くわからぬ…。
神の地力は、ドラゴンより優っている…。
悪夢が効かないとやはり少しずつ劣勢になるようだ。
このまま我が同胞が傷ついていくのを見ているのは少しつらい。
つらい…か。
向かってくる者を倒してきた。
そしてその勢いのまま周辺地域の支配を拡大してきた。
そこに特に理由はなかった。
あえていうなら、ただただ自分が強かった、それだけかもしれない。
同胞が傷つき、そして、それを見るのがつらいという感情。
今までこんなに劣勢になることが無かったから気づかなかった。
我はなぜ戦っているのだろうか…。
「グゴゴゴオォォォォォォッ!!」
我は咆哮を上げる。
一瞬、戦場は静まり戦いの手が止まる。
我はドラゴンの翼を広げ、飛び上がる。
「グゴゴゴオォォォォォォッ!!」
再び咆哮を上げると、我は元の星に戻ることにした。
絶望、悪夢は絶対ではなかった…。
仲間か…。
振り返ると多くの仲間がついてきていた。
自分はそれだけでよいのかもしれない。
一度多くの仲間とともに、一から考え直す時間が必要なのだろう。
一匹のドラゴンの肩に一つ、影があらわれる。
それは、人や機械にはもちろん、すべてを認知することのできる神でさえも見えていない。
「この絶望、悪夢はなかなかに強力かと思っていましたが、案外神もなかなかやるものですネェ…。
ホープにミカエル…。上層部の集会でも時折名前があがっていた気がしまスゥ。
これは魔王様にお伝えする必要がありますヨォ…。」
誰にも認知されることのない声で話すと、影はふと消えた。
ナイトメア・アークが去ったあと、戦場には静けさが戻っていた。
傷ついた者たちへの対応が優先的に行われていた。
「まさか、夢遊びが勝因になるとはな。」ストラテスはマルクスに話しかける。
「あぁ、あんなの子供の遊びだと思っていた、すっかり忘れていたよ。」
「そういえば、ストラテスの旦那、敵を追っかけなくていいのか?」
「逃げる者は敵ではない。私の殲滅の対象にはならない。それよりけが人の対応が優先だ。」
「なるほど。とにかく勝ってよかったぜ!」
「ああ、そうだな。」マルクスとストラテスは手を取り合った。
「ホープにミカエルか。コンテストの時も優れていると感じたが、なかなかやるじゃないか。
それに、我々はもっと自分自身を知る必要があるな。」
ストラテスは、敵だけでなく、自分たち神々の長所と弱点の研究、追及について思考を巡らせていく。
ドラゴンたちが立ち去ると、私たちは解放された。
まだ、戦場となった場所の回復や、けが人の対応が残っていたが、残りはヴァニッシュ部隊で引き受けてくれた。
さすが外敵駆除を仕事とする神々だ。とても手際よく戦後処理が進んでいく。
私たちは皆から感謝されて、帰途についた。
「戦争って、私たちには、ちょっと無茶だったかしら…。」
「少し無謀だったかもしれませんね…。でもお役に立てたんじゃないでしょうか…。」
「おなか減った…。日光浴したい…。」
「あぁ、私も充電が必要だ。」
引っ越しとか考える必要があったが、今は後にしたい…。皆でくっついて目を閉じる。
みんな無意識のうちに、それぞれのペンダントを手にしながら、眠りについた。
第八章 絶望という悪夢の災厄 完
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