第七十六話 それぞれの悪夢
私は無我夢中に自分の役割を果たしていた。すべての嫌な感覚が思考をそぎ落としていく。
ただ、たんたんと倒れた兵士を後方へ運んでいた。
不意に、様子のおかしいミカエルに気付く。倒れかけている兵士に夢中で、ドラゴンのブレスに気付いていない。
「ミカエル!」
ミカエルの不測の事態に、私は緊張の糸が途切れ、ミカエルのもとに向かう。
その様子を見て、メモリナもルミエルも駆け寄ってくる。
今まではブレスの届かない位置にいた私たちが、届く範囲に入った上に、相手の攻撃を見ていなかった。
ドラゴンの執拗なブレスに気付くこともなく、無我夢中で倒れているミカエルをだきかかえる。
みんなドラゴンのブレスを浴びた。そして、みんなその場に倒れこんでしまう…。
意識が遠ざかっていく感じがする。
古い記憶に足を引っ張られ引きずり込まれる感覚。
「何やってもうまくいかない…。」「また失敗した…。」
何もうまくいかなかった頃、まだ神になりたてだった頃の記憶。
嫌な記憶に、繰り返し、繰り返し、引きずり込まれていく感覚…。
――メモリナは、ジェネシスの古い記憶を鮮明に思い出していた。
親しかった人々がどんどん無表情になっていく。
そしてその解決方法が全く見当たらない。
日に日に悪化していくジェネシスの人々…。
一旦、プリドゥナへ退避し、ジェネシスを忘れるため、自分を封印するも、一向にジェネシスから人がやってくる様子がない。
もしかしたら、ジェネシスはもうだめかもしれない…。
プリドゥナもジェネシスへ向かわないように忌み嫌うようにしている。
私の封印を解く鍵はジェネシスにあるが、そのジェネシスへ向かうことはプリドゥナでは忌み嫌われているというパラドクス…。
もう、起き上がることは二度とできないかもしれない…。もしかしたら、永遠に続くかもしれない、虚無の時間…。
――ルミエルも、ルミナスの古い記憶を呼び起こされていた。
毒ガスの悲惨な状況なんて見たくない…。
人々も倒れ、森も枯れている…。
人も森も泣いている…。
泣き声はもう聞きたくない…。
でももっと許せない声があった。どこからともなく聞こえてくる笑い声。
なぜ、笑えるの?なぜ、笑っていられるの?どこを見たら笑えるの?
もう嫌、もう嫌だ。見たくない…。聞きたくもない…。
「いいのよ。ルミエル。目を閉じ、耳をふさぎ、眠りなさい…。おやすみ、ルミナス。」
母ミリスの声を聞き、目を閉じ耳をふさぎ、二度と起き上がらないよう深い眠りについていく…。
強烈な悪夢が、4つの心をえぐり、より深い絶望の深淵へと落としていく。
よかったら、何か足跡、お願いします。




