第七十五話 ミカエルの悩み
ホープ様もメモリナもルミエルも皆必死に頑張っている。
私も頑張らなくちゃ…。
最近、自分一人経験不足を感じる。
ホープ様はすでに星を持ち、星を旅し、いくつもの問題を解決している。
メモリナはすでに何千年と旅している。
ルミエルはまだ幼く見えて、精霊の子供としての役割を持っている感じがある。
その点、私はどうだろう。
この戦場での働きも少し劣っている気がする。動きが遅いのかな…。
皆同じ敵と戦っているはずなのに、倒れた兵士たちのつぶやきを聞くとそれぞれ全く違う。
敵の前線は私にはすべてドラゴンに見える。
にもかかわらず、倒れた兵士たちは、「ゴーレムが強すぎる」「おばけ、幽霊が怖い」、
しまいには、「学校の先生が恐ろしい」なんてつぶやく人もいた。
私は、時々戦場全体を見渡して、敵の攻撃を見ている…。
「ミカエル。」不意に自分の名前を呼ばれ、自分の役割を思い出す。
あっ、兵士が倒れてる、後方へ運ばなきゃ、また、私一人、対応が遅れている気がする…。
この兵士もおびえているみたい。いや、この兵士は孤独に泣いている?「寂しい…。孤独だ…。」
敵の中に時折ブレスをはくドラゴンがいることに気付く。
ブレス受けた兵士を見ると、物理的なダメージは無いようだが、その兵士は徐々に士気が落ちている気がする…。
「あっ、危ない。」
兵士が今にも倒れそうになっているのに気づき、私は思わず走り出す。
「ミカエル!」また、不意に自分の名前を呼ばれた。
ドラゴンのブレスが迫っていた。しかし、すでに、手遅れだった。
私は、そのブレスを浴びてしまった…。
意識が沈んでいく。
まるで深い水の底に引きずり込まれるような感覚。
周囲の音が遠ざかり、代わりに自分の声が響き始める。
「どうして、こんなに遅いの?」「どうして、何もできないの?」
それは、誰かの声ではなく、私自身の記憶。
「私がいなくても、誰も困らない。」「私なんていない方が、うまくいく。」
そんな思いが、胸の奥からじわじわと広がっていく。
私がなぜここにいるのか、なぜ生きているのか、わからなくなった。
ひたすら暗い水の底に沈んでいくような感覚だけは、確かだった。
私はもう、起き上がることができなかった。
「ミカエル!」という声が、遠くに聞こえるが、私の意識はすで無くなりかけていた。
首にかかった月のペンダントだけが、ホープ様やメモリナ、ルミエルとの楽しい記憶を、
静かに、確かに、覚えているようだった。
よかったら、何か足跡、お願いします。




