第六話 神の挑戦
何度目かの挑戦。
だけど、今回の星では、ホープ様は特に何もしていないようだった。
人に啓示を与えているような様子もなく、ただ時折、神のアルバイト情報誌を眺めては、片手間でできるバイトを探してお金を稼いでた。
アロマやブレスレット等が経費になることはなく(そもそも神様に経費なんて概念は存在しない)、
お金を使いすぎたことに、少し自分を見失っていたと後悔している様子だった。
今日は、私と一緒に星の様子をモニターでずっと観察している。
地中深く、静寂に包まれた広大な空洞。
ところどころ、マグマが赤く光り、闇をそっと照らしている。
空洞の中央付近に、ぽつんと置かれた卵。直径はおよそ50センチ。
卵からは根のようなものが伸び、地面にしっかりと絡みついている。
「今回は、特に人に啓示を与えることもなく何もしなかったんですか?」
ホープ様は、少し笑って言った。
「まぁ、見てて。対策はすでに2000年前に終わっているんだから。」
やがて、卵の表面に細かなひびが入り、殻が静かに割れはじめる。
中から現れたのは、小さなドラゴン。
その幼い姿にはどこか愛らしさがあり、目はまだ閉じられている。
体を伸ばしたり、ねじったり、ぎこちなく動かしている。
やがて動きが落ち着き、そっと目を開く。紅い瞳が、微かに光る。
目に映るものには興味がない様子で、かわいらしく欠伸をひとつ。
「ここまでは同じ……。あっ。」
子ドラゴンは姿勢を正し背筋を伸ばそうとするも、だるそうにまた丸まって寝始める。
ホープ様は静かに語り始めた。
「この前、星が壊れた時、もう一度、落ち着いて考えてみたの。
まだまだ知らないことがたくさんあったことに気付いた。
メルトドラゴンの生態。例えば、一つの成体がどれくらい卵産むか、
雌雄はあるのか、あった場合どこで出会っているか、天敵はいるのか……。
地球文明の生物学がとっても役に立ったわ。
メルトドラゴンについて自分で調べてみたの。
一つの成体を神の力を使って追ってみた。
かなり多くの卵を産むみたい。
最初のうちは一つの星に一つ卵を産んでいたけど、最後は移動に疲れたのか一つの星にまとめて産んでいた。
産まれた卵もどうなるか見ていたんだけど、ほとんどの星では何事もなかった。
卵が孵化しなかったり、孵化しても今回のようにすぐに動きを止めたり。
特に一つの星にまとめて産んだ卵を見ていて気付いたの。
もう少し続きをみてみて。」
私は、ホープ様に促されるまま、眠っているように見えるメルトドラゴンの幼体をじっと見つめた。
しばらくすると、背中の皮が左右に割れ、中から一匹の虫がでてくる。
大きさは15cmほどで、姿はハチに似ている。
羽を伸ばし、羽が乾くのを待つと、どこかへと飛んで行った。
「メルトドラゴンにも天敵がいたのね。
たくさん卵産んで、凶悪な能力を持つのに、思ったより被害が少ないのはこの天敵のおかげね。
寄生生物に寄生する寄生虫がいたのね。
私は、神の能力があったからわりと簡単に調べられたけど、
神の能力のない人たちが、いろんな生物の生態を調べていると思うと……やっぱり人の力はすごいわ。」
「人への敬意」――神の力に慣れ親しんでいた私には、まったく無かった視点だった。
ただ、何気なく見ていた人々の行動は、確かに確実に進化し、神とほぼ同等の力まで持っているようにも思えた。
「それに気がつくホープ様もすごいです。」
私は、そっと独り言をつぶやいていた。
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